決意の告白
実希は一呼吸置いて、話を切り出した。
「あのね、言わなきゃいけないことなんだけど」
「うん。あ、その前に」
実希が決意したところで、泰生が話を止める。
「……うん?」
「どんな内容か知らないけど、俺、何聞いても大丈夫だから」
何かを見透かしたような言葉をくれる泰生。
ただ、実希の中では、そんなに簡単な話でもない。
「分かんないよ?」
「んー、でも実希ちゃん。そんな深刻そうな顔しなくても、大丈夫だよ。安心して話してみ」
表情や雰囲気で、いい話ではないことを読み取ってくれたのだろう。
その気遣いに救われながらも、話の内容は実希にとっては重いもの。
期間がついているとは言え、彼氏になった人に聞かせたくない内容でもあった。
ただ、実希はそこまで誠実に気持ちを向けてくれた泰生に、ちゃんと伝えたいと思い、その優しさに甘えず話しだした。
「実はね、私……元彼にストーカーされてて」
泰生と出会う前に別れた元彼が、いまだに実希の周りをうろついていた。
毎日ではないが、実希の家まで来たり、帰宅時間に合わせて駅で張っていることがあるのだ。
泰生は黙って話を聞く。
「その元彼、あんまりまともではないんだよね」
「俺以上に?」
実希の重苦しい雰囲気を、泰生は和ませるように茶化した。
実希もクスッと笑って、続きを話す。
「うーん、別ベクトルかもしれない」
「例えば? 言いたくなかったら無理して言わなくていいから」
実希は、その元彼にDVを受けていた。
警察沙汰になったことも、殺されかけたこともある。
思い出すと普段は気持ち悪くなるが、今日は違った。
「んー、DV野郎なんだよね。そいつ」
実希がそう言うと、泰生の表情が険しくなった。
「は? 実希ちゃんされてたの?」
「……うん」
「怪我は!? 今も暴力振るわれてる?」
必死に実希の見える部分に、傷跡がないか探し出す泰生。
「大丈夫、見える所には傷はないの。それに今は着いてきてしばらく家を見ているだけ」
ただ、実希には泰生に言わなきゃいけない本当の理由があった。
「それだけならさ、警察にパトロールお願いしたりするだけなんだけど……そいつキレると何しでかすか分かんないの」
「例えば?」
「同級生の頭をボールペンで刺したり、母親やバイト先の人にも手を挙げたことがあるみたいでさ……だから泰生の存在が知られたら、何かされてしまうかも……」
実希は、異常性のある元彼から三年かけてようやく逃げ出した過去がある。
何度別れ話をしても、命の危機に晒される。
警察に通報しても、命の危機に晒される。
不謹慎ではあるが、かつてあった震災を理由に距離を取って、ようやく向こうから『会えないのが辛いから』と別れを切り出されたのだった。
まして、警察や対外的に取り繕うのは非常に上手い相手だ。
泰生が巻き込まれるのは嫌だった。




