掴めない男
実希は、今日のデートプランをまだ決めていないことに気付く。
「今日、どこ行くの?」
そう問いかける実希に対して、泰生はニヤリと笑う。
「何で笑ってんの」
「デートっぽいなぁこの会話」
「まぁ……ていうかもしかしてノープランってこと?」
実希が質問を重ねると、泰生はまたフフッと笑った。
「ううん。違う。実希ちゃんにはつくまでのお楽しみです」
サプライズは嬉しいが、今日だけは困る実希。
デートの雰囲気を壊しかねないと思った実希は、目的地に着く前に言おうと決意する。
「あの、さ……デート行く前に話しておかなきゃいけないことがあってね」
深刻な表情を浮かべる実希を、横目で見る泰生。
「んー、じゃあまだ時間も早いしカフェ入る?」
「ありがとう、そうしてもらえると助かる」
「いいよ。俺が突っ走って決めたことだし、昨日のうちに話しておけば良かったね」
付き合うとなってから突然優しさの塊のようになる泰生に、戸惑う実希。
だけど、予定が崩れることに怒りもせず、話を聞く体勢を作ってくれることに嬉しさを感じていた。
「店内よりドライブスルーの方がいいでしょ?」
「うん、もし可能ならその方がいいかも」
「じゃあドライブスルーで買って、公園とかでいい?」
あんなに自分中心で振り回していた男が、別人のような振る舞いをしている。
(ギャップってやつ……? それとも恋人になったから?)
実希の中で、今までとは違うタイプの“掴めない男”になっていた。




