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春の灯―ハルノヒ―  作者: 絲瀬


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痛みの理由

気持ちが変わらないか、と訊かれても返答に困る実希。


「うーん……連絡が取れなくなって、泰生が出した答えが……距離を置くことなら、それでいいって思った」


迷いながらも正直に打ち明ける。

でも、同時に感じた胸の奥の痛みは、あまり思い出したくなかった。


実希がその後の言葉に困っていると、今度は泰生が話しだした。


「俺ね、山に行って実希ちゃんを諦めようと思った」


どこまでも自分勝手な男だ。

そう言いたくなったが、泰生の話を黙って聞く実希。


「でもさ、やっぱり無理なんだよ。めちゃくちゃ勝手言ってるって分かってる。だけど、俺はやっぱり実希ちゃんが好き」


泰生の真っ直ぐな気持ちを聞いた実希は、涙が伝っていることに気付く。


(あれ、何で……何で私、泣いてるの?)


「一ヶ月、付き合ってくれないかな。それでもし、一ヶ月経っても何も変わらなければ、その時はキッパリ諦める」



実希の胸の奥には、時間が経って確かになくなったはずの痛みが戻っていた。



実希の感情の中では、まだ、『好き』ではないのだと思う。

しかし、『寂しい』に近い感情を一ヶ月前も、そして今も抱いているのは確かだ。

今は、告白してきといて散々自分勝手に振り回すという、マイナスな印象まで付いている。

それなのに、胸の奥が痛む。



一ヶ月付き合えば、この胸の痛みの理由が分かるかもしれない。


ただ寂しいだけか、違う感情になっているのか。


それを確かめなければいけないと思った。



「分かった。一ヶ月、付き合ってみる。でもその時に好きじゃなかったら、私はちゃんと別れるよ」


「うん、俺もそのつもり。だけど、絶対好きにさせてみせる」



少女漫画のような歯が浮くセリフに、恥ずかしいと思いつつも、やっぱり真っ直ぐな感情は嫌じゃない。



そうして、実希と泰生は付き合うことになった。

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