実希の気持ち
「一ヶ月前、私混乱してたんだよ」
そう切り出した実希に、泰生は「混乱?」と不思議そうなリアクションを返す。
「最初は印象悪かったのにさ、急に距離縮めてきたり……そのせいで、少しずつ喋るようになってからは、“嫌なやつ”じゃなくて、“ちょっと話す同僚”って思ってたの」
「うん」
「だけどね、最後って言うからカラオケとか飲み行ったら、思ってたよりもずっと楽しくて」
実希がゆっくり話すのを、泰生も相槌を打ちながら黙って聞いていた。
「正直あんたが、私を好きだなんて言うと思わなかったの。それでもさ、ストレートに表現されて“嫌だ”とは思わなかったんだよね」
「おぉ、うん」
少し嬉しそうな声を出す泰生を無視して、実希は話を続けた。
「だけど、それですぐに『私も好き』とかなるわけないのよ。定期的にムカつかせてくるしね」
今度はしゅんとした声で「うん……」と返事をする泰生。
「だから、いきなり恋愛対象としては見れなかったの」
泰生は完全に黙りこくってしまった。
だが実希にはまだ言いたいことがある。
「そんな状態の時にさ、元カノにプロポーズした話とか聞かされたら余計に戸惑う……だけどあの日、私にとって嬉しかった言葉もある」
「え?」
「多分私の中で、どっちに転ぶか分からないけど気持ちがゆっくり育っていたんだよ。あの時は」
実希は一呼吸置いて、さらに続けた。
「でもさ、そんな時に結論迫られても、困るって……」
実希が話し終えると、泰生が言った。
「俺への気持ちは変わらない?」




