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春の灯―ハルノヒ―  作者: 絲瀬


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消えた足跡

翌日、夜――


実希は、昨夜マスターに言われたことについて考えていた。


『今の気持ちをまっすぐ伝えてみてはどうか』


確かに、伝えなければ何も始まらない。

伝えた上で、泰生と噛み合わなければ離れればいい。

とにかく、今の気持ちを素直に伝えよう。


そう決意し、泰生へメールを送る。


『今、電話しても平気?』


いつもなら、一時間以内には返信が来る。

しかし、この日は違う。三時間経っても泰生からのメールはなかった。


珍しいなと思いつつ、そんなこともあるか。明日になれば来るだろう、と考え、いつの間にか眠りに就いた。


だが、翌日も泰生からの返信は一切ない。そのまま時間が過ぎ、三、四日過ぎたあたりで、実希の気持ちも変わっていた。


振り回された感もあるけれど、“距離を取ること”が泰生の出した結論なら、それでいい。深追いすることもない。


ただ、一方で、胸の奥がチクッと痛む。

その理由を考えても、実希の中で答えはハッキリとしなかった。

好意を猛烈に寄せてきた相手が、パッと離れたことによって、なんとなく“寂しい”に近い感情を抱いているのだろう。


そう思うことにして、この日以降、泰生のことを考えることは少なくなっていった。

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