マスターの助言
全て話を聞き終えたあとで、マスターは口を開いた。
「その男性って……実希さんより少し上くらい?」
「九歳上なんです。三十歳」
「あっ……なるほど」
マスターが何を言いたいのか、実希にはなんとなく分かった。
「多分、ムカつく言動がなければ、居心地は悪くないんです。でも、過るんですよね。九歳上にしては、少し幼いんじゃないかって。きっと、それもネックなんです」
「そうですね……少し感性はお若いなとは思います」
マスターは苦笑いをしたあと、話を続けた。
「焦る必要はないと思います。相手がそれだけ気持ちをぶつけてきて、答えを出さなきゃって思っちゃうんじゃないですか?」
マスターの言う通りだった。
きっと、詰めてこなければ、もう少し落ち着いて考えられるのだろう。
「でも、嫌な感情だけじゃないなら、ゆっくりゆっくり育てていくのがいいと、僕は思います。それに……」
「それに?」
「実希さん、今の気持ちをまっすぐ伝えてみてはどうですか? 彼は、自分の恋心を実希さんにまっすぐに伝えた。ならば、今実希さんに出来ることは、混乱して望まない関係を無理矢理作り上げるよりも、今の気持ちをまっすぐに伝えることだと思うんです」
マスターの言葉に、目から鱗が落ちた。
実希自身、泰生へのネガティブな印象もあり、真正面からぶつかることもなければ、抱いている感情もよく分かっていなかった。
「そうですね……伝えてみようかな。ありがとうございます」
「いいえ。ただ、実希さん。もし、実希さんが気持ちをぶつけた上で、相手が理解を示さないのであれば、そこまでの相手と見切るのも自分の為ですよ」
マスターの言葉に勇気をもらった実希は、一度、全てを泰生にぶつけようと決めた。




