気まずい空気
泰生の話が終わったあと、実希は黙ったままでいた。
「実希ちゃん?」
泰生が気まずそうな表情を浮かべながら、顔を覗き込む。
「ん?」
「何で黙ってんの? 俺また余計なこと言った?」
「いや、そうじゃないよ」
「じゃあ何で」
“ちょっと嬉しかった”と素直に伝えようか迷った実希だが、今までの仕返しを込めて言わないことにした。
「内緒」
悪戯っぽく笑う実希。
しかし、嬉しかったからと言って、付き合おうとはならない。
期待を持たせることはしたくなかった。
「んー、話してくれてありがとう。でも、今すぐ付き合うっていうことはないかな。もう少し、友達でいさせて」
「じゃあ時間が経てば付き合ってくれるの?」
「それは分からないけど」
「まぁ……わかった」
期待していた言葉ではなかったのだろう。
泰生の顔がしょんぼりしていた。
その日は気まずいまま、早めに解散をすることにした。
「今日は何で帰る?」
「まだバスがあるから、それに乗るよ」
「じゃあ、バス乗り場まで……」
泰生が送ってくれようとしていたが、実希は気持ちを整理するためにも、一人になりたかった。
「ごめん。このあと少し寄りたい所があって。だから駅で大丈夫」
「そっか……分かった」
駅に着くまで、二人は言葉を交わさなかった。
改札に着いて、別れ際に泰生が口を開いた。
「実希ちゃん、また……会える?」
「誘ってくれたら」
「……分かった。またね」
「うん、また」
そうして、二人は別れた。




