泰生の本音
注文したお酒や食事が運ばれてきた。
それを実希が取り分けて渡す。
「実希ちゃん、女の子らしいところちゃんとあるじゃん。そういうのやんないと思ってた」
いつもの泰生節に戻る。なぜこの男は、自分で上げてすぐに落とすのだろう。
「勿体無いことするよね、本当」
実希は、ため息混じりでこう答えた。
すると、泰生の様子が一気に変わる。
「なぁ、本当に俺ってバカだと思わない?」
急な質問に、いつもなら即答で「そうだね」と答えるのに、どう返せばいいか分からなくなっていた。
「んー。実希ちゃん、俺、実希ちゃんのことが気になってからも、ずっとこんなだったじゃん?」
そう話し出す泰生だが、実希にとってはいつから自分のことを気になっていたのかもよく分からない。
だが、真剣に話し出しているから、横槍を入れることなく、実希も真剣に耳を傾けた。
「多分だけど、俺のトラウマみたいなもので。
俺、昔十年付き合った人がいて、同棲もしてて。プロポーズしたら振られたんだよ。遅いって」
「その時別れたんだけど、俺そこから好きな人とかいないまま、実希ちゃんに出会って。だけど、最初はお互い印象悪かったでしょ。だから、自分の気持ちを素直に出すのが、怖いのもあるし、恥ずかしいのもあったんだよね」
泰生の告白は、実希の心に深く響いていた。
それまで腹が立っていた行動が、不器用な男の愛情の裏返しだと分かったからだ。
「だからさ、好きになってるのも、仕事辞めてからも実希ちゃんにだけは会いたかったのも、本当は付き合って欲しいことも、全部本音。今日は実希ちゃんに、それを話したかった」
自分が思っていた以上に、泰生は前から自分のことを想っていたと知り、複雑な気持ちになる。
ただ、この男にとっては、あれが精一杯だったのだと知ると、実希も捉え方が大きく変わる。
「そっか……てっきりただのウザくてチャラいやつだって最初は思ってた」
「俺も実希ちゃん、顔は可愛いのに性格悪いキツい子って思ってた」
「じゃあ何でなの?」
実希は笑いながら、何故その印象から好きになったのかを聞いた。
泰生が本気なのかも、と認識してからずっと気になっていたのだ。
泰生は頭を掻きながら、観念したかのように話し出す。
「仕事で、真面目にきっちりやってるのを見てさ。それに同期の主婦さんとは、仲良くやってたでしょ。笑ってる姿見て、俺も見たいなって思った。結果めちゃくちゃ怒らせてたんだけど……」
一つ聞くと、何倍にもなって言葉が返ってくることに、実希は照れていた。
嫌じゃなかったのだ。
愛情の裏返しと知ってから、急にそれまでの会話が愛おしくなっていた。




