駆け引き
実希が出した答えに、泰生はしばらく沈黙する。
「ん……? 泰生?」
「あぁ、ごめん。でも友達として会ってくれるってことだよな?」
「そうだね」
「じゃあ、俺の勝ちってことでいい?」
「は?」
「だって会うつもりなかったのに、俺が挽回出来たから」
やっぱりいつもの泰生だ。
振り回すためなら、友達も撤回してやろうか。実希はそう思った。
「そのために演技してたわけ? それなら撤回するけど」
「そうじゃないよ。あーー、何で俺ってこうなんだろうな」
「私に言われても……あんたが分からないなら誰も分からないでしょ」
「ごめん……でも演技じゃない。実希ちゃんを楽しませたいから、頑張ってはいた。でもそれ以上に……」
「何?」
「会ったらその続き言う」
「じゃあ会わなくていいから聞かないでおく」
変な駆け引きをしようとする泰生に、少し苛つく実希。
「ごめんなさい、嘘です。ちゃんと言います」
駆け引きが通用しないと理解し、謝る泰生。
「それ以上に、本気だよって伝えたかった。俺にとって、実希ちゃんが好きな女の子だって伝わるようにって思ってた」
こう言われてしまうと、実希は黙るしかない。
今まで会ったことのないタイプだが、真っ直ぐに気持ちをぶつけられるのは嫌いじゃないのだ。
「……わかった」
「で、早速なんだけど友達として会いたい。ちゃんと話さないといけないことがある」
これ以上何を話すのだろう、と思ったが真剣な泰生の勢いに押され、次の日に会うことになった。
――待ち合わせの時間より三十分も早く着いた実希。
直前まで友達と遊び、その足で来たのだ。だがその場には既に、泰生が来ていた。
「早くない?」
「実希ちゃんも早いじゃん」
「私は友達と遊んでてそのまま来たから」
「俺は実希ちゃんより早く来たくて待ってた」
「いつからいるの?」
「待ち合わせの一時間前かな」
思った以上に早かったことに驚く。
「じゃあ三十分くらい待ってたんじゃん」
「そうだよ」
「早過ぎない? 待たせて申し訳ないじゃん」
「俺が実希ちゃんを待ちたかった」
サラッと嬉しいことを言う泰生。
あぁ、調子が狂う。
内心ドギマギしていたが、悟られないように平然を装う。
「予約してあるから、店行こうか」
「え? もう予約してあるの?」
「うん。この前会ったとき、実希ちゃんが好きって言ってた食べ物がある店」
そう言われると、楽しみになってしまう。
「何だろう。ラーメン?」
「ラーメンで予約はしねぇよ」
「そっか」
「着いてからのお楽しみ」
「えー教えてよ」
「ダメ」
そう言って戯れ合いながら、店に向かった。




