二人の違い
タクシー乗り場につき、タクシーの順が次に回ってきたとき。
「実希ちゃん、今日付き合ってくれてありがとう」
泰生が、真剣な顔で言った。
「うん。こちらこそ。カラオケも居酒屋も出してもらっちゃって。ありがとう、ご馳走様でした」
実希がお礼を言うが、泰生の表情が少し曇る。
「……うん」とだけ返す泰生。
何か言おうか迷ったが、そこにちょうどタクシーが到着した。
「ほら、タクシー来たよ」
「そうだね、じゃあ私行くね」
「……うん。じゃあ」
「……うん」
タクシーに乗り込んで走り出すまで、泰生はずっとその場にいた。
実希は、帰りのタクシーの中や、家に着いてからもずっと泰生のことを考えていた。
これからも友達として会うのか、それとも今日で会わないのか。
自分がどうしたいのか、分からなかった。
だけど、泰生に答えを告げなければいけない。
実希が出した結論を送ろうとしたとき、泰生からメールが届いた。
『俺が今日言ったこと、覚えてる?』
『これからも会いたいってやつ? それの返事なら決まったよ』
『違う。付き合ってって言ったでしょ』
軽いノリにしか思っていなかったから、ここで蒸し返してくるとは思わなかった。
『うん。言ってたね。ノリかと思ったけど』
それまですぐに返ってきていた返事が、ここで止まった。
掴みどころのないやつ。
もしかして本気だった……?
そう思いながらしばらく待ったが、返信は来ない。
実希も今日結論を送るのは諦め、眠りについた。
翌朝、目が覚めても返事は来ていなかった。
ノリが図星なのだろうか。
なら、こちらも考える理由はない。
いつも通りに過ごしていた。
そのまま数日経ち、実希の頭からも離れかけた頃。
泰生からメールが届いた。
『話したいことがあるから、電話したい』
結局ここまで、電話番号を教えていなかった実希。
どうしようか迷ったが、教えることにした。
電話番号を送ると、すぐに掛かってきた。
「もしもし、俺だけど」
「うん。話って何?」
「俺、実希ちゃんに言いたいことがあって」
「うん」
電話の向こうで、真剣な声の泰生。
実希も黙って、泰生の言葉を待った。
「あのさ、一ヶ月……でいいから、付き合って欲しい」
「一ヶ月?」
「そう。一ヶ月で俺のこと好きにならなければ、別れていいから……ダメかな?」
正直、嫌な気はしなかった。
掴みどころのない泰生を、もう少し知らないと判断は出せないと思ったのも事実。
だけど、付き合うのも違う気がする。
そう思った実希は、ある結論を出した。
「お試しで付き合うのは違うかな。一ヶ月後に、恋愛感情に変わる保証もないし」
「うん……そうだよな」
落ち込んでいる様子の泰生を無視して、話を続けた。
「だから、友達として一ヶ月様子見たい」
実希が今の時点で出せる、正直な気持ちだった。




