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聖女『じゃない方』なのに、溺愛されるのは何故ですか!?  作者: あらいサラ


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3.そちらが私を利用するなら

よく分からないうちに、住む場所は提供してもらっていたらしい。


(公爵家で住み込みで働くってこと…、だよね?迷惑掛けないよう、がんばろ…)


王子と透子さんの話し合いが終わり、透子さんは城に残り、私はアシュフォード家へ行くことになった。


「いい?何かあったらすぐに言うのよ!聖女に言いつけるってアピールしなさい!!」


両側から頬を手のひらでムギュッと押されながら、心配そうな透子さんから念を押される。


「わ、わかりまひた…」


「やっぱり城に一緒に滞在させた方が良かったのかしら…」


「…あの、透子さんはなんでそんなに、私の事を気にかけてくれるんですか?」


この世界で重要なのは聖女である透子さんだけだ。

モブの私なんてなんの価値もないのに、彼女は頑なに私を守ろうとしてくれる。


そう質問すると、透子さんは少し遠い目をして、愛おしそうに私の頭を撫でた。


「……妹がね、あなたと同じ年頃なのよ。

 私はもう家出てるし、しばらく会ってなかったけど、やっぱこのくらいの子を見ると妹を思い出して、気になっちゃうのよ」


――もう、二度と会えないけど。

そんな呟きが切ない吐息とともにこぼれた気がした。


「透子さ…」


「…そんなわけで年長者の庇護は有り難く受け取っておきなさい。

 帰れないなら帰れないなりに、この世界で絶対に幸せにならなくちゃ!!」


そう言って、寂しさを誤魔化すように私の頭をぐちゃぐちゃに撫でる。


思わず「ひゃい!」と変な声が出たところで、側にいたユリウスさんが柔らかく止めてくれた。


「聖女様、そのあたりで。リコが困ってしまいます」


そう言いながら、私の髪を優しく直してくれるユリウスさんに、透子さんは鋭い視線を向けた。


「……私はこの世界の人間を信用してないわ。

 でも、そちらが私を利用するというなら、私だって利用してやるわよ」


睨む美人はなんとも迫力があるが、ユリウスさんは何も言わず、にこりと笑って返すだけ。

その態度が気に入らなかったのか、透子さんは盛大にため息を吐いた。


「…やっぱりあんた気に入らないわ。

 莉子を預けるにしても、別の家はなかったの?」


「アシュフォード家は建国以来続く名家だ。当主も人格者で領地経営も安定しているし、ユリウス自身も信頼がおける。

 預けるにはうってつけだと思うが…」


「そういう事じゃないの!もう、鈍いわね!!」


何が気に入らないのかは分からないけど、王子にこれだけはっきりと物申せるなら、透子さんは問題ないだろう。


別れを渋る透子さんと、また3日後に会う約束をして、私はユリウスさんと一緒に馬車でアシュフォード家へ向かった。



お城のような豪華なアシュフォード家では、立派な白ヒゲを生やした執事長が出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、坊ちゃま。そちらのお嬢様がリコ様でございますね」


「あぁ。丁重にもてなすよう、聖女様からの厳命だ」


そう冗談っぽく言って、2歩ほど後ろにいた私の肩を抱き寄せて、前に連れ出す。


「り、莉子です。お世話になりますっ!!」


「執事長のセバスでございます。ユリウス様が生まれる前からアシュフォード家で仕えております。

 小さい頃のユリウス様は、それはもう愛らしいお方で…」


「じいや、その話は良いよ…。リコが疲れてるから休ませてあげて」


その言葉に、近くにいたシックなドレスの女性がすっと近づいてくる。エプロンも着けておらずメイドっぽくはないので、侍女だろうか。


「リコ様、お部屋をご用意しております。どうぞこちらへ」


「リコ、それじゃまた後で」


「は、はい!」


案内してくれる侍女に続いて階段を登っていくと、1階の扉に入っていく二人の姿が見えた。

執事長は目尻をハンカチで押さえているようにも見える。


「どことなくティナ様に似てらっしゃる…」


(…ティナ?)


扉が閉まる直前に聞こえた、執事長のしみじみとした呟きが気になりつつも、迷子にならないよう侍女のあとを追いかけた。


「えと……ここが私の部屋ですか…?」


「はい。そのように聞いております」


パウダーブルーの差し色が可愛らしい、広くて上品な部屋。

繊細なレースカーテンが揺れる広い窓からは、温かな光が入り込んでいる。


なんと言うか…とても豪華である。


「私は、使用人部屋に行くべきでは…?」


「えっ」


「えっ、ごめんなさい。なんでもないです」


なんだか本気で引かれたので、言葉を引っ込めた。


(ユリウスさんに支援を頼んでるって言ってたから、アシュフォード家で働けるって事、だと、思ったんだけど…?)


使用人たちにまで話が行っていないのだろうか。

きっと何かの間違いなので、このまま部屋に入らず本来の部屋に行ったほうが良い気がする。せっかくピカピカなのに、私が入ったら汚してしまいそうだ。


「あ、あの、ユリウスさんに話があるんですが、会えますか?」


そう尋ねると、侍女はすぐに確認をしに行ってくれて、


「2時間後に中庭のガゼボにて少し遅めの昼食をしましょう、との事でした」


…なぜか2人の女性を伴って戻ってきた。

 

侍女Aは仲間を呼んだ!

侍女Bと侍女Cが現れた!!

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