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オマケ召喚されたモブですが、公爵令息に外堀埋められてました  作者: あらいサラ


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32.トウコ②

さらに冷たく、極寒と化したユリウスの声が刺さるように告げる。


「…僕は、彼女を預かる事が迷惑だと思った事は一度たりともありませんし、発言した覚えもありません。

それに、このような罪を犯した時点で、公爵家の者が貴女の身内になる事は一生無いでしょう」


「…っで、でもぉ!使用人の件は謝りますが、たかが平民を害しただけで…!!」


「…リコ殿は聖女召喚の儀で共に召喚された方だ。平民ではない。それに聖属性を有している。

 この意味がわかるか?グリムワルド侯爵令嬢」


聖女のように明確に【準王族】と謳われておらず、少し複雑な立ち位置だけど、国からの保護対象であることは間違いない。


テオがその事を暗に告げるが、女はキョトンとするばかり。


「えぇ…?それが、何か?貴族ではないのでしょう??

 尊き血が流れていないのなら、ただの平民ではありませんか」


そんな娘の発言に、宰相の目が信じられない者を見るように見開かれる。


「平民をちょっと森に捨てただけで、みなさん大袈裟ですわ。平民なんて、どこにでもいるでしょう?それを少し処分しただけですわ」


あまりに堂々と、まるで常識を諭すかのような女の態度に、テオもユリウスも、ハゲ狸…国王でさえも唖然とする。


「……ふふ、アハハハ!」


「せ、聖女殿…?」


突如高らかに笑い出した私に、威厳を保っていた国王が思わずといった風に声を掛けてきた。


「ふふふ、面白い事言うのね。貴女」


「まぁ、聖女様…!わかってくださいますのね。やはりこの状況はおかし…」


「なら、尊き血とやらが流れてない、この私も平民という事かしら?」


「えっ…?」


扱いとしては王族に準ずる者。ただし、この身に貴族の血なんて一滴も流れてはいない。

女の言葉を借りるならば、どこにでもいる、捨てても構わない平民の一人なのだろう。


胸元に手を当てて問う私に、女は眉を寄せながら訝しむ。


「…そ、れは…」


「だとしたら私もいつか森に捨てられるって事かしら。あらやだ、怖い」


そう言ってわざとらしく体を抱きしめると、豪華な金色の腕輪が水晶の飾りとぶつかりカシャンと甲高い音を響かせた。


「……ねぇ、王様。気づいてる?これは契約違反よ」


私が笑いながら冷ややかな視線で顔を見上げると、国王は黙ってこちらを見返してくる。

契約内容を思い出したのか、もはや土下座でもするように項垂れている宰相の肩が、視界の端でビクリと動いていた。


「私は聖女として働く前に条件を出したはずよ。『莉子の生活と安全の保障を』と」


私はこの国をまだ信用していない。そんな条件無かったと言われないために、きちんと神官(第三者)の元で書面を作成し、契約書にまでサインさせたのだ。


「それを信じて浄化の修行をしてきたというのに、蓋を開けてみれば、莉子は見ず知らずの人間に頭を殴られ、袋に詰められ、魔物の森に放置された、ですって?

 これがこの国の『生活と安全の保障』?ふざけてるのかしら??」


よく友人に「怒ると迫力がある」と言われていたこの顔を、存分に使わせてもらおう。

国王に話しかけながらも、状況をやっと理解してきたらしく小さく震える女を見下す視線をやめない。


(こんな顔、莉子には見せれないわね…)


「せっかく浄化のスキルが使えるようになったけど…、どうやらこの国で出番はなさそうね?」


昨日使えるようになったばかりだ。さすがに知らなかったのだろう、宰相が僅かに明るくなった顔をあげ、直後に状況を思い出して再び絶望的な表情になった。


(…宰相は…白ね。事前調査でも後ろ暗いところはなかったし、今回の件には関わっていない…。それに今の反応を見る限り、ハゲ狸の言うように愛国心もありそう。

 なら、落としどころは予定通り…―――)


手から少しだけ威圧的な浄化の光を放ちながらそう考えていると、威厳を取り戻した国王が重々しく口を開いた。


「聖女殿。これは我がヴィーネ国の本意ではない。契約を反故する意思はこちらには無かった」


「それじゃ、この女が国の方針に逆らって勝手にしたって事かしら?あら、反逆罪ってやつじゃない?」


「反逆…!?…ちが…わたくしは……ただ……」


「そうだ」


狼狽し、掠れたような声で否定する女の声に、重厚感のある国王の声が被る。

それを聞いて、私はわざとらしい笑顔を消し、真剣な表情で国王に向き直った。


「では、この者に厳正な処分を求めます」

 

あれ…?ヒーローは…トウコだったか…??

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