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オマケ召喚されたモブですが、公爵令息に外堀埋められてました  作者: あらいサラ


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24.ユリウス⑤

確かにヴェロニカ嬢は、派閥的にもパワーバランス的にも問題はない相手ではある。しかし、


「――おや、それはそれは…残念ながら僕ではお力になれないようですね。

 今は大切に預かっている方がいるのですよ。それが解決するまでは誰とも縁を繋ぐ気はなくて…」


今までの求婚者にも伝えた定型文を申し訳なさそうに告げると、例の噂の信憑性の高さを感じたのか侯爵の口が僅かに引きつる。


リコがここに、僕の側に居てくれる限りは、他の令嬢と婚約する気はこれっぽっちもない。


その言葉に、侯爵は警戒を表す濃いオレンジ色が浮かばせた。


と、斜め前から明るく「あらぁ」という声が割り込んできた。


「それでしたら、わたくしが解決いたしましたわ。ご安心くださいませ」


まるで褒められたかのような、とても嬉しそうな声と花が咲いたような笑顔のヴェロニカ嬢。


「……解決、というのは…?」


僅かに不審感をにじませる僕の声に、ヴェロニカ嬢はコロコロと鈴を転がすような声で笑い、歌うように続ける。


「ユリウス様のその博愛精神はとても素晴らしい事だと思っておりますのよ?

 小さい頃にも、汚らしい猫を拾っていらしてたでしょう?わたくし、思っておりましたのよ。どうせ飼うなら、どうして綺麗な物を選ばないのだろうって」


汚らしい猫…、かつて飼っていた黒猫のティナの事だろうか。確かに元は野良猫で、目つきが悪いと言われがちではあったが、それを『汚らしい』と表現する感覚が気に入らない。


かつての飼い猫を侮辱する発言をしだした娘に、侯爵は「ヴェ、ヴェロニカ!?何を…」と驚き止めようとしているようだった。


「きっとユリウス様はお優しいから、どんなに汚らしい物でも、一度拾った物を捨てる事ができませんのね?」


「……君は何が言いたいんだい?」


「ま、待ちなさいヴェロニカ!ユリウス殿、娘はこたびの茶会に少々舞い上がっているようでして…」


そんな父親の静止を気にも止めず、ヴェロニカ嬢は胸の前で手を組み、おっとりと夢を見るように告げる。


「哀れなものに手を貸したくなる、それはとても高潔な考え方ですけど、美しいユリウス様には似合わないって、ずっと思っていたのですわ。

 …それなのに、ユリウス様はまた()()()()()を拾い上げてしまって…」


ヒクリと自身の口端が動いたのがわかった。

単独の暴走なのか、この女が指す『汚らしい者』が誰なのか気づいた侯爵が、引きつった表情で固まってしまった。


(何が汚らしい者だ…)


今すぐにでもソファから叩き落として、熱々の紅茶でも頭からかけてやりたい衝動に駆られたが、それを行動に移す前に、廊下がにわかに騒がしくなった事に気づいた。


「――ですからわたくし、今回はお手伝いしてさしあげましたの」


激しいノックの後に、青ざめた顔の執事長が駆け込んでくる。その後ろには痛々しく頭に包帯を巻いた侍女、アグネスが騎士に支えられ立っていて…――


「セバス…!?」


(待て、リコと共に出ていったアグネスが、何故そんな怪我をしてここにいる?っリコは!?)


執事長が膝をついて非礼を詫び、震える声で事態を告げた。


「リコ様が、何者かに攫われました…!!!」


僕の思考が一瞬で真っ白になり、呼吸が詰まる。

青ざめた顔の侯爵の口が驚きで僅かに開く。


そんな中、この女だけが場違いに優雅に紅茶を飲んでいた。


「ユリウス様の手を煩わせる者は、わたくしが代わりに捨てておきましたわ。これで心置きなくわたくしと結婚出来ますわね」


カチャリ、と優雅にソーサーへ戻されたカップの音が、静まり返った応接室に異様なほど甲高く響き渡った。

 

寝耳に水すぎる侯爵パパ

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