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聖女『じゃない方』なのに、溺愛されるのは何故ですか!?  作者: あらいサラ


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20/26

19.この女は身の程知らず

9月からは1日1投稿(18:10)になります。

登録&評価頂けると嬉しいです!

無事?にティールームに着いたものの、ドロセアさんは立ったまま不機嫌そうな顔で子供椅子を睨んでいる。


子供用といっても、白に塗装された上品な椅子だ。足置きもついていて座りやすそうだけど、何が嫌なのだろうか。


「……お兄様、お膝に乗せてはくださらないのですか?」


ポツリと呟きが聞こえた。


「それは小さい子や、大切なレディにだけするんだよ。

 ドロセアはもう一人前のお嬢様だろう?」


その場合、私はどっち枠に振られたうえで、事あるごとに膝抱っこされているのか…。少し遠い目になる。


(ちなみに、今日はしっかりと1人で座っています!)


当たり前の事に小さく胸を張っていると、眉を寄せながらもドロセアさんは渋々と椅子に腰掛けた。


テーブルには数種類のミニケーキが置かれ、使用人がサーブしてくれる。私はフルーツケーキとチョコタルトを取ってもらった。


ユリウスさんはチーズケーキ、ドロセアさんはフルーツタルトとチーズケーキを選び、そのままお茶会は和やかに進み……


「…まぁ、なんて汚らしい食べ方なのかしら!公爵家のお茶会にふさわしくありませんわ!!」


「うっ」


進まなかった…!

ドロセアさんの冷たい視線に、自身の皿と彼女の皿を見比べる。


タルトってぽろぽろ崩れる物だと思っていたけど、ドロセアさんのお皿はなんか綺麗だ…!!

あとフォークの持ち方にも品がある!食器もカチャカチャ鳴ってない!


「リコはまだ練習中なんだよ」


「しょ…精進します…」


侍女のアグネスさんに少しずつ貴族のマナーを教えてもらってはいるけど、それとは別に講師のレッスンをお願いした方がいいのかもしれない…。


「ふん!このような方を公爵家に置いておくだなんて、アシュフォード家のヒンカクがさがりますことよ!!

 ショミンはショミンらしく身の程をわきまえて、部屋にでも閉じこもって…」


「ドロセア」


ユリウスさんの冷たい声に、ドロセアさんの小さな肩がビクリと動く。


「それ以上は許さないよ」


「…でも、この女はミノホドシラズって、お母様が…!!」


ドロセアさんのお母様、7歳相手に何言っちゃってるの。筒抜けですよ!


なおも言い募ろうとするドロセアさんに、ユリウスさんが深い溜息を吐いた。


「…お茶会は楽しむ事が目的だと思うのだけど、君にはまだ早すぎたようだね」


(ひぃぃぃ!!目が、目がこわいです、ユリウスさんっ!!!)


温かい筈のはちみつ色の瞳が、絶対零度だ。暖色なのに冷たい。逆にこわい!!!


「……おにい、……ッ〜〜〜〜」


大きな瞳に急激に涙が溜まったかと思えば、ガタリと大きな音を立てて席を立ち、ドロセアさんがドアの向こうへ走り去っていく。


落とされたフォークが床に当たり、高い音を出していた。


「ど、ドロセアさん!?」


慌てて追おうとしたけど、踏みとどまった。

私の脚力じゃ追いつける気もしないし、逆に迷子になる予感がある。


それに、不愉快な存在である私が行ったところで、何の慰めにもならないだろう…。


「…嫌な思いさせてごめんね、リコ。まさかドロセアがあんな事言うなんて…。

 親戚のよしみで、と約束もなく飛び込んできたけど、次回からは対応を考え直すよ」


「いいえ…。ですが、ユリウスさんが何だかいつもより雰囲気が硬いというか……ドロセアさんをわざと突き放してるように見えたんですが…」


「あぁ…うん。対象外なんだって、伯爵家に僕の事を綺麗さっぱり諦めさせるためかな」


そう言って疲れたように肩を伸ばすユリウスさん。


「ドロセアを僕に嫁がせたいのは伯爵夫妻の意思だ。

 あの子の気持ちがないのに、いつまでも優しくして留めておくのは可哀想だろう」


「ですが、ユリウスさんを慕っているようにも見えました…」


エスコートして欲しかったり、膝に乗せて欲しかったり、甘えたそうな表情のドロセアさんを思い出す。


それはまだ、優しいお兄さんに向けるような可愛らしい感情かもしれないけれど…。


「あぁ、……それは別の人を思い出してたんだと思う。

 遊びにきたドロセアをいつもエスコートして、膝に乗せていたのは、僕じゃなくてニコラス……僕の弟だったからね」


「えっ、弟さん?」


そう言えば回廊にもう一人、黒髪の男の子の絵が飾られていた気もする。


あの時は、キスだのペット枠だの、いろんな感情が入り混じって、執事長の説明を真面目に聞けてなくて、流してしまっていたかもしれない…。


「…きっとドロセアは僕じゃなくて、ニコラスの事が好きなんだと思う。弟は12歳で年回りも良いしね」


弟の方が好きなのに、兄の方に嫁ぐのだと両親から期待されて、ドロセアさんはどんな気持ちだったのだろう…。


涙を溢れさすドロセアさんを思い出して、胸がきゅっとなる。


「…私、ドロセアさんを探しにいきます」


そう言うと、ユリウスさんは優しく微笑んだ。


「ガゼボの近くにある、大きな木の洞に隠れていると思うよ。昔よくニコラスとそこで遊んでいたから」


「わかりました」


「それから…」


早速行こうとした私の手をユリウスさんが握り止める。

どうしたのかと見上げると、少しバツが悪そうな表情のユリウスさんが、恥ずかしそうに告げた。


「……大人げない事してしまって反省してるって、伝えてくれる?

 リコの事を悪く言われて、頭にきてしまったんだ…」


「この表情はレア…」


「え?」


「な、何でもありません!わかりました!」


慌てて返事をして、庭のガゼボを目指すべく、私は侍女と共に部屋を飛び出した。

道案内(じじょ)がいないと迷子になっちゃうからね!!

 

本当はケーキ全種類食べたかったドロセアちゃん。レディなので我慢した。

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