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聖女『じゃない方』なのに、溺愛されるのは何故ですか!?  作者: あらいサラ


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1.よく見るテンプレ展開?

眩しい光と浮遊感が一瞬にして消えて、僅かな衝撃の後、手のひらと膝に冷たいタイルの感触がした。


急に戻ってきた重力にびっくりして目を開けると、不思議なローブを着た怪しげな人たちに囲まれていた。

足元の魔法陣のような線が、徐々に光を失っていく。


(何、ここ…コンビニじゃ…ない…!?)


突然変わった景色にこちらが悲鳴を上げる前に、周囲の人たちが騒ぎ出した。


「聖女様だ!召喚は成功した!!」

「待て、二人いらっしゃるぞ」

「どちらが聖女様だ?」


(セイジョ…ショウカン…二人…?)


魔法使いのような格好をした人たちの、興奮したような言葉に隣を見れば、私と同じようにタイルに座り込む女性がいた。


私がコンビニで昼用のお弁当を選んでいた時に、隣でサンドイッチを見ていた人だ。

その時に女性が鍵を落として、私がそれを拾って渡した瞬間に、二人とも謎の光に包まれたんだった…。


「な、何よ!あんた達!?」


私よりも少し年上に見える女性は、社会人なのだろう。

おしゃれなオフィスカジュアルコーデにうるツヤな栗色の髪、目の色素も薄めの茶色で、まつ毛がパッチリとした気が強そうな美人だった。


(セイジョって…聖女?聖女召喚ってこと!?

 え、待って。これ…よく見るテンプレ展開!?)


対する私は、ラフなパーカーに短パン、サンダルの、垢抜けてない大学生。

髪だってしばらく美容院に行ってないから、黒いセミロングの毛先はパサついてるし、三白眼なので目つきは悪く見えがちで、しかも痩せっぽちだ。


魔法使いたちから、どっちが聖女様だ、何とか様を呼べ、とか聞こえてくるけど…


(これ、どっからどう見ても美人さんの方が聖女……!!

 絶対、私巻き込まれただけのモブだよ…!!!)


今期アニメや、更新を追ってるお気に入りの小説を思い浮かべて、体を小さく震わせていると、魔法使いたちの後ろから出てきた凛々しい顔つきの男性が手を差し出して、女性と私の二人とも立ち上がらせてくれた。


こちらは怪しげなローブは着ておらず、いかにも貴族…いや、王子様っぽい格好をしている。


(分かりやすいかぼちゃパンツではないけど、多分、王子ポジだよね…。

 どう見てもモブな私にまで手を貸してくれるなんて、優しそうで良か………はっ、でもモブっぽい方が聖女って展開も有り得る…!?

 え、その場合どうなるの!?)


人気小説を想像しながらヒヤヒヤしてるうちに、呼ばれた何とか様とやらが来て、鑑定スキルでしっかりチェックされた。


その結果、女性は聖属性、浄化のスキルを有した紛れもない聖女で、自分も一応お情け程度に聖属性らしいが、スキル無しのただの巻き込まれた人間だった。


(……ダヨネェ…)


改めて聖女とモブだと判明し、先ほどの凛々しい王子から、儀式を行った場から他の部屋に移動を促される。


長い廊下を、他の人よりも精密な刺繍がされたローブをまとう数人の魔法使いと、王子、あと騎士っぽい人たちと歩いてる最中、なぜか女性はしっかりと私の手を握っていた。


「あの…?」


「…大丈夫、きっと大丈夫だから…」


「…はい」


女性の手は僅かに震えている。気丈に振る舞ってはいても、やはり怖いのだろう。


(…少なくとも、この美人さんはいい人っぽいな…)



移動した先の部屋で、私と女性と王子、それから貴族っぽい男性が増えて、4人でテーブルに腰を下ろす。


座る時に貴族男性が椅子を引いてくれたけど、そんなの初めての事なので、座るタイミングがわからずカチコチになってしまった。


いい香りのする紅茶が注がれ、テーブルには手に取りやすいクッキー等が置かれていたが、とても食べる気分にはならなかった。


「…まずは自己紹介を。

 私はヴィーネ王国の第一王子、テオドールだ。今回の聖女召喚の責任者だ」


「僕はアシュフォード公爵家のユリウスです。初めまして、お二方」


王子に続いて、貴族男性から甘く柔らかい笑顔で挨拶をされ、女性と二人、顔を見合わせる。


「…川澄透子。トウコよ」


「リコ…です。三宅、莉子…」


本名を名乗ると無理やり契約させられる系の物語もあったなぁ、そういうのじゃなければ良いなぁ、なんて思いながらも名前を名乗る。


王子は二人の名前を呟いたあと、姿勢を正して本題にはいった。


「…それで、此度の聖女召喚についてだが……」


「聖女とかどうでも良いのよ。私とこの子をさっさと帰して!!」


透子さんの言葉に、王子の端正な顔が歪む。同様にユリウスさんも表情を曇らせた。


「それは…出来ない…」


「はぁっ!?」


「召喚は強い聖属性に反応して、数ある無差別な世界から聖女を引き上げる魔法だ。

 ここ以外の世界にランダムで送り出すことは出来るかもしれないが、【元いた世界】に確実に戻すことは不可能なんだ…」


「そんな、勝手な…!」


透子さんの華奢な拳がテーブルを叩く。カップの紅茶が少しだけ波打った。


「…謝罪しても済まない事だと思っている」


「急に聖女とか、異世界とか言われても困るわよ…ッ!!」


「そちらの怒りや戸惑いはもっともだ。

 …まずは話を聞いてもらえないだろうか」

 

この流れで、かぼちゃパンツ王子出てきたら嫌過ぎる。

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