4(平行線ブーム)
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今年も残りわずかになった。給食のデザートが豪華だった。もうすぐ二学期終業式。
この頃あたしはずっと眼鏡にしてる。マフラーに顔を埋めると自分の息でレンズが曇る。面倒だ、とは思うけれども、それだけのことだった。
部活を終えて校舎を出ると、カッチカチの風が身を切った。空一面を鈍色で重たく湿った雲が覆っている。陽が沈んだらもっとカッチカチになる予感がする。
夜にかけて雪の予報で、今朝のニュースは早めの帰宅を促していたが、殿中ならいざ知らず、冬将軍のご乱心にどう立ち向かえと言うのか。手袋をしてマフラーをして、コートの前をきっちり留めて、肩をすぼめて背中を丸める。これが小娘なりの対処法。荷物を鏡見のチャリのカゴに突っ込み、あたしたちは帰宅する。
「平行線ブーム、終わらないんだな」ふと鏡見が言う。カラカラと、自転車が間抜けな音を立てている。カラカラ。
「終わらないねぇ」
あたしの返事に鏡見が笑った。「お前の書く線って、きちんと人間が描いてるってのが分かるのが可笑しいよな。平行線なのに、ジッと見てるとクラッとくる」
あたしは視線を鏡見に向けた。前を向いたまま鏡見は続ける。「引いた人間の性格が滲み出てると言うか」
「けなされてる?」
「そう思うなら、そうだろうな」
「ハッキリせぇ」あたしは憤慨した。ふーと息を吐くと眼鏡が曇った。手袋をしているのをいいことに、それでレンズを拭いた。鏡見が見ているのが分かった。
「最近ずっと眼鏡だな」
「まぁね」曇った世界が元に戻った。「でもこれ、片方、レンズ入ってないんだ」
「入ってるだろ?」
「いや、うん。違った」
「どっちなんだ」鏡見が笑った。あたしも笑った。「度が入ってないんだ。ガチャ目で良い方の半分も見えてない。お蔭で視力検査は毎回二回やらされる。真面目にやれって」
「再検査も仕方なしか」
「眼鏡かけても左右ぴったりにならないんだ。立体視とか3D映画とかよく分からんのよ」
「不便だな」
そうでもない、と言いかけて、あたしは口を噤んだ。
「どうした?」鏡見が訊ねる。少し迷って、あたしは口を開く。「鏡見も不便だって思う?」
「自分のことだろ?」
「違う。鏡見のこと」
ややあって、「分かんね」と、鏡見は言った。




