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3(言われなければ分からない)

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 その夜、あたしは居間の家族パソコンで色盲を検索した。ブラウザに表示された小さなサムネイルをクリック。出てきた画像に驚いた。鏡見にどれほど失礼なことを言ったかを知り、恥ずかしく思った。

 他人と違うことは個性である。

 嘘だ。御為ごかしのきれいごとだ。

 鏡見の見ている世界は、あたしには衝撃だった。どうしたらこんな世界に住める? 

 色彩を欠いた世界は文字通り、足りない。

 あたしは自分が普通だと思っていた。当たり前だと思っていた。羽川も一年たちも同じだろう。なのに鏡見は違う。それを知って、どうしようもないことだと受け入れて、普通のように振る舞って。

 それでも作品を作り続ける。

 かわいそうだと思った次の瞬間、あたしはひどく自分が矮小に思えた。でも、どう接するのが正解なの?

「何を見てるんだ?」

 ふいに声をかけられて、慌ててブラウザを閉じようとしたけれども、マウスを掴み損ねて、デスクの上から落した。

「色盲か」お父さんはチラリと画面を見て、定期購読の科学雑誌を片手にソファに座った。「ヨシもそうだったぞ」

「オイちゃんが?」あたしは首吊りマウスを引き上げ、ブラウザを閉じた。「ホントに?」

「言われなければ分からないからな」

「オイちゃん、色が分からなくて困ったことってあった?」

 お父さんは少し首を傾け、「いや、」と言った。「ないな。いや、あった」

「どっち?」

「パイロットになれない」

 あたしはびっくりした。「オイちゃん、パイロットになりたかったの?」

「冗談だよ」お父さんは笑った。「一緒に免許を取ったけど、その時、初めて教えられた。車の運転はできるけど飛行機は操縦できないって。確かに一部の職業に制限はあるらしい。でもアイツの仕事、知ってるだろ?」

「デザイナー?」

「たぶん、もし困ったり問題になるのなら、最初から近づきようもないんじゃないか」

 けれども、そうと知らずにパイロットになりたかったら、どうなんだろう?

 あたしは鏡見を戦闘機に乗せてみた。

 似合わねぇええ! 想像できねぇええ!

 不意に別のイメージが覆い被さった。それは檻によく似ていて。色のない、小さな部屋。

 部屋の真ん中に、小さな鏡見が立っていた。

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