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破滅する悪役王子に転生した武士、生後三秒で腹を切ろうとして妖精に泣いて止められる  作者: めるしー


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第24話「断罪の舞台」

王城の、奥深く。

宰相の執務室は。重い、沈黙に、満ちていた。


「——して。刺客は、しくじった、と」


底冷えの、する声で。

宰相——セドリックの、父が、言った。


メルツ家。

代々、宰相を、輩出してきた。王国、随一の、権門である。


そして——かつて。

ヴァレンシュタイン家に、謀反の濡れ衣を、着せ。一夜にして、焼き滅ぼした。

その、張本人。


ロザリンドが、復讐を、誓う、相手。

——それが、この男、だった。


「は。申し訳、ございません」


セドリックは、頭を、垂れる。


「アルフォンス王子。……あの男は、尋常では、ありません。心理戦も、武力も。ことごとく——通用、しませんでした」


宰相は。

細く、目を、眇めた。


「忌々しい、呪い児よ。——本来であれば。蔑まれ、孤立し。いずれ国を呪う、"災いの種"。捨て置いても、勝手に、潰れるはずで、あった」


「それが、今や。騎士の子も、貴族の子弟も。次々と、あの男に、心酔し。あまつさえ——あの、ヴァレンシュタインの、生き残りまで、囲っている」


声に、初めて——苛立ちが、滲んだ。


「あれを、放置すれば。いずれ、メルツ家の、足元を、脅かそう。……それに。あの娘が、我らの過去を、嗅ぎ回るのも。——目障りだ」





「——もはや、小細工は、無用」


宰相は、立ち上がり。窓の外の、王都を、見下ろした。


「両名とも。衆人環視の、(おおやけ)の場で。正式に——"断罪"する」


「公の、場……」


「ひと月後。建国祭の、大夜会だ。——王侯貴族、ことごとくが、列席する、晴れの舞台」


その双眸が。冷たく、光る。


「あの場で。確たる証拠と、しかるべき証言を、揃え。叩きつける。——呪い児の王子は、危険分子として。ヴァレンシュタインの娘は、謀反人の血として」


「一度。公に、断じて、しまえば。——もはや、誰にも、覆せない。たとえ、生徒会長の権限とて。あの場では、何の役にも、立ちはしない」


(……そうだ。ユリウス王子が、いかに、弟を庇おうと。王と、貴族の、見守る正式な断罪を。覆す(すべ)は、ない)


セドリックの、頭の中で。

盤上の、王手が——静かに、組み上がって、いく。





「証言は。例の——聖女候補の、娘を、使え」


「は。……ですが、父上」


セドリックの、眉が。わずかに、曇った。


「あの娘。近頃……少し、様子が。妙、なのです」


ここ、数日。

あれほど、こちらの思惑どおりに、傾いていた、アンジェの心が。

——どこか、ほどけて、いくような。手応えの、薄さ。


(……あの、騎士団長の、息子か。よけいな、ことを)


セドリックは、冷たく、思考する。


(……構わない。もう一度。あの娘の傷を、抉ればいい。——"皆を救う正義"という、甘い毒を。たっぷりと、注ぎ直すまで)


策士の、(くら)い算段は。

一片の、ためらいも、なく。——次の、一手を、組み上げていた。





——その、夜。


「……ひかり殿。風が。変わったな」


『……うん。なんか、やな感じ。学園の外——お城の、ほうから。すごく、冷たい、気配がする』


ひかりは、ぶるっと、身を、震わせた。


『……武士さん。たぶん、来るよ。原作の、いちばん大きな、山場が。——"断罪イベント"』


「断罪、か」


『そう。本当なら、ここで。武士さんも、ロザリンドも、まとめて、断罪されて。武士さんは、それを逆恨みして、ラスボスに……っていう。物語の、大本命の、ルート』


アルフォンスの、紅の瞳が。静かに、夜の闇を、見据える。


「——あい分かった」


『……出た。人生、最大の、ピンチを前に。その、落ち着き』


「逃げも、隠れも、せぬ。——正面から、受け。斬るべき"影"を。叩き斬る、までよ」


ひと月後。

建国祭の、大夜会。


すべての、糸が。

その、一夜へと——手繰り寄せられて、いく。


——カウントダウンは。

すでに、静かに。始まって、いた。


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