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転生してホモスパイラルから逃げられたと思ったら前世で俺の処女を奪ったクソ野郎とエンカウントしちまった件  作者: KP
第二章

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轟け!世紀の大発明ッ!?1


私はギルバート・フォン・フュリューリンゲン。

サウザンド王国の宮廷官吏にして、第一王位継承者であらせられるウィリアム様の補佐を務めている。

本日は、報告がある。

重要にして重大な報告だ。

ただなぁ……




報告したくないなぁーーー!!!




…こほんっ。

つい本音をぶちまけてしまった。

どういうことか、順を追って話そう。




しばらく前のことだ。

国を出奔して冒険の旅に出ていた我が息子、アルが突然帰ってきた。

エドワード様も一緒にな。

なんだどうした?

ついこないだ帰郷したばかりじゃないか?

と不思議に思ったが、我が子の帰還は掛け値なしに嬉しい。

次に会えるのはもっとずっと先だと覚悟していただけに、喜びもひとしおだった。

なんなら、もっと頻繁に帰ってきてくれてもいいんだぞ?

いっそ、この王都を拠点に冒険者として活動しても……

「いやそれはちょっと……今回は、父上に渡したいものがあって帰ってきたんだ」

…そうかぁ。

アルの返答に少々落胆した私。

まぁ、しょーがない。

アルは活動的で自由奔放な子だ。そもそも世界中を気ままに飛び回りたくて冒険者になったのに、ここに居着いてくれるはずもないよな。

帰ってきてくれたからって調子良く高望みしすぎた。

で、渡したいものってなんだ?

気を取り直して尋ねた私に、アルは手のひらサイズの水晶玉をひとつ差し出した。

綺麗に整った球形をしており、透明度も高く、美しいな。

宝飾品やインテリアの類か…?

アルからのプレゼントとしては意外だな。もっと肉とか肉とか肉とかのイメージがある。

「違うよ。これ、魔道具なんだ」

うん?

「ほら、俺ももういっこ持ってるだろ。離れててもこれと通信できるんだぜ!」

どういうことだ?

いまひとつ飲み込めない私に、アルは実際に使ってみせてくれた。

百聞は一見に如かず。

こっ、これは…!

私は雷に打たれたかのような強い衝撃を受けた。

映像と音声をリアルタイムで双方向に伝達、だと…!?

なんということだ!

今までこんな魔道具はどこにも存在しなかった。

これは画期的な大発明だぞ!

情報伝達の概念が根底から覆る。

いや、それどころの騒ぎじゃない。

これを使って広く情報網を敷けば、本当に様々なことができるようになる。

いいことも……悪いことも。

ザッと思いついただけでも両手足の指の数では足りぬほどだ。

こんな、凄まじいが、危険なものを、何故アルが…!?

「俺が旅に出てる間、父上がどうしてるか気になるからさ。……ちゃんとメシ食ってんのか、とか」

…!!!

私は咄嗟に家令のセバスを振り向いた。

アルがこんな心配をするなんて…!

案の定、部屋の片隅に素知らぬ顔で控えていたセバスは、静かにそっと一礼してきやがった。

〜〜〜やっぱりおまえか!

私がちょっと食欲不振だったりしたこと、アルにチクったな!?

余計なことをー!

そんなこと聞かされたらアルは気にするに決まってるだろ!?

後で徹底的に叱ってやる…!

「あ、父上!セバスを怒るなよ!」

う、うぐっ!?

「父上のこと心配して俺に教えてくれたんだ。俺、自分で気付けなかったから……すっげーありがたかった」

…アル。

「家族のこと知らないままでいるなんて、情けないだろ。俺はセバスに感謝してる」

そうか。

そうだな。

おかげでアル、おまえもこうして帰ってきてくれたし。

この件ではセバスを叱責しないよ。

かといって主たる立場上、軽々に礼も言えんが。

…まぁ今度のボーナスにほんの少しだけ色をつけてやろう。

主が被雇用者に示せる感謝の形といったら、そんなものだ。

おまえもありがとうな、アル。

心配してくれて、本当に嬉しい。

「うん。その魔道具、ちゃんと分かる場所に置いといてくれよな。時々、抜き打ちで父上がちゃんと食ってるのか確認するからな!」

おお、それは油断できないなぁ……

私はついホロリとしたのを誤魔化すため、大げさに肩を揺すって笑ってみせた。

年かな。この頃涙腺が少し緩くなったやもしれん。

その分、我が子はこんなに立派に成長してくれた。親である私のことを心配して、こんな魔道具を持ってきてくれるくらいに。

………。

いやこの魔道具の出所については詳細に追求したいけどな!?

アル自身が作れるわけがない。一体どうやって……

「じゃ、俺たちもう行くな!」

…えっ?

ちょちょちょちょい!ちょっと待て!?

アル、おまえなー!?

魔道具だけ渡してもう行っちゃうって……そりゃないだろー!?

せっかく帰ってきたんだから!せめて今日は泊まっていきなさい!

「ええー?……でも、『熱波の彼岸窟』からの帰還報告をギルドに早くしなきゃだし……」

「アル。僕たちかなり早く攻略できたし、帰り道もショートカットできるから。まだ数日は猶予があるよ」

「あ、そっか!」

「むしろすぐに戻ったら時間的に不自然に思われてしまう。一週間くらいかけてから戻った方がいい」

エドワード様!ナイスアシスト!!

彼がアルと一緒にいてくれて本当によかった!

「なるほど、考えてなかったぜ。んじゃ父上、しばらく厄介になってもいいかな…?」

いいに決まってるだろ!

なーにを遠慮しとるんだ、この子はもー!

ここはおまえの家。いつだって、いつまでだって居ていいに決まってる。

私は笑み崩れて息子たちを温かく迎え入れた。




そんなわけで、アルとエドワード様はまた一週間ほど我が家に滞在することとなった。

私は今度こそウィリアム様や陛下に悟られぬよう、最大限気をつけた。

…いや、だって。

前の時は本気でシャレにならんくらい酷かったんだぞ。

連日誰かしらが泊まりに来てさぁ……

いくら王族、いくら主君つったって、限度ってものがある。

私だって家ではのんびり寛いで過ごしたいし、久しぶりに帰ってきた息子との時間も邪魔して欲しくないっての!

ウィリアム様たちもエドワード様に会いたいだろうと思ったから、前回はずっと我慢していたが。

今回は。……もーいいだろ。

って思ってずっと黙ってた。


「ああ、兄様とアルは今頃どうしてるかなぁ。ねえ、フュリューリンゲン卿」


こんな時に限って、ウィリアム様が執務中にちょっとしたボヤきみたいに零して、ギクゥッ!としたが。

…本当に、この方の異様な勘の良さはなんなのだ。

私は完璧な演技と面の皮の厚さですっとぼけ、最後まで誤魔化しきった。

多少、罪悪感が湧かないでもなかったが……

それと引き換えにしても、アルと親子水入らずで過ごす時間は掛け替えのないものだった。

私、超満足…!




楽しい時間もいつか終わる。

予定通り、一週間でアルとエドワード様は再び旅立っていった。

とたんにガラーンとしてしまった屋敷の様子に、正直、気落ちした私だったが……

大丈夫!

今の私には、これがある!

画期的な新・通信用魔道具!

…呼びやすい名称は考えないとな。まぁ追々でいいが。

水晶玉なのでコロコロ転がっていったりせんよう、下にミニクッションを敷いて、安定させて、と。

えーと。

エドワード様が説明してくださったところによると、軽く手をかざして念じれば、内部に組み込まれた魔導回路が反応して通信開始できるのだったな。

魔法が使えなくとも、どの人間も内在魔素は有している。それを媒介にできるのだとか。

…私には専門外のことだが。もうこれだけでとてつもなく高度な技術だよな。

これを作ったなんとかという魔導士は天才なんじゃないだろうか?

実際、アルはそんなこと言ってたもんな。

っと。考察はこのくらいにして。

魔道具を起動させた。

水晶玉が静かに明るさを増していき……

相手の状況次第では繋がらないこともあると聞いていたが、幸い、今は大丈夫だったようだ。

どこまでも澄み渡って透明だった水晶玉の中に、虚像が浮かんでくる。

アルだ!


『あ、父上。今日のお仕事終わったのか?おつかれさまー!』


うちの子、いつも通りの呑気な声だなぁ……

私はつい吹き出してしまった。

こんな画期的な魔道具を使って遠距離双方向通信という歴史的偉業を成し遂げているにも関わらず、ごく普通にしゃべってるアルが、なんだか面白かった。

『これからメシか?……ちゃんと食えよな』

分かってるって。

おまえは?

今、どうしてる?

えっ?

レイクヒル共和国の有名な温泉街に!?

いいなぁ…!

私も温泉、入りたい。

『じゃあ今度は父上も一緒に来ようぜ!ここ、いいところだ!』

ああ、うん……

現状は忙しすぎて難しいかな……

いずれ仕事を辞めて引退したら、是非とも行きたいものだが。

いつになるかなー……(遠い目)

とかなんとか会話しながら、私はその日の夕餉を平らげていった。

食事の席に魔道具を置いとくのはマナー違反かもしれんが。

…こんな魔道具自体、今までなかったんだから例外ってことでいいだろ。

どうせ、誰に見咎められるわけでもない我が家でのことだしな。

アルはもう早めの食事を済ませていたそうだが。

私が食べてるのを見て、また空腹になってきたとか言う。

宿では別室を取っていたエドワード様も途中で呼んできて、客室でも食べられる飲食物を買い込んできて、早速広げて。

和気藹々とおしゃべりしつつ、共に食事を楽しんだ。

本当は遠く隔たった距離にいる私たちが、まるで同じテーブルを囲んでいるかのようだった。

私、ついつい食べすぎちゃったぞ。

これじゃ下手したら太っちゃうかなぁ?

ハッハハハ!

私はその日、パンパンになった腹を抱えて上機嫌で眠りにつくことができた。

心は腹以上に満たされている。

いつでも、アルと会える。

そのことが私の気持ちを大いに満足させたのだった。



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