小さなライバル出現!…なんて認めないよ!?
僕はこの国の第一王子。エドワード・デ・ラ・ウル・サウザンド。通称エド。
実は異世界転生者!
前世では結ばれたばかりの恋人と死に別れるという悲劇に見舞われてしまったけれど、転生先のこの世界で運命的に再会できたのでバラ色の毎日さ♡
脳内のイマジナリーたろーちゃんが『誰が恋人だこの変態!?』とかってツッコんでくるのが聞こえるけど、気にしない!
たろーちゃんはちょっと素直じゃないツンデレさんだからね♡
今のアルもそれは変わらない。
王城通いなんてめんどくさいとか文句を言いつつ、ほぼ毎日僕に会いに来てくれるし♡
僕の作ったおやつもいつも美味しそうに食べてくれるし♡
ああ、大好きなハニーと毎日のように逢えて、しかも一緒に楽しくお茶会できるなんて、幸せだなぁ…!
まあ僕はお茶菓子なんかよりもアルを早く食べちゃいたいんだけどね♡
ペロッとまるっといただけるのは、いつになるだろう…?
できれば、成人年齢の18歳になったら即いただきまーす!したいなぁ。
その日が今から待ち遠しくてならないや。
ふふふふふふふふふ!!!
ところで、前述通り、僕はこの国の第一王子だ。
ということは、第二王子もいる。
同じ母上から生まれた5つ違いの弟で、ウィリアム・ド・ウル・サウザンド……長いからウィルって呼んでるよ。
とはいえ、僕たちは距離感の遠い兄弟だった。
王族という特殊な環境のせいか、僕が異世界転生者であまり普通とは言えない雰囲気を醸し出していたせいかは、分からない。
僕の方から弟に構いに行くことはなかったし、向こうも好んで僕に近寄ってきたりはしなかった。
弟が可愛くないわけじゃない。
でも、僕にとって一番大事なのは今も昔も愛しのハニーだから。
ウィルに割く時間があったら、アルと一緒に過ごす方を選んじゃう!
薄情な兄と呼ばわ呼べ!
僕はアルだけがいればそれでいいのさ!
…とか思ってたんだけど。
このところ、互いに干渉しないという兄弟の不文律が破られつつある。
ウィルの方から、僕のところに来ることがすごく多くなった。
いや、正確には違う。
あんまり認めたくない事実なんだけど、どう考えても僕と一緒にいるもう一人を目当てに来てる。
「ねえ、アル。このクッキーおいしいよ!はい、あーん♡」
「え?…自分で食えるけど」
「あーん!」
「……あー、分かったよ。ありがとな」
「えへへ……おいしい?」
「もぐもぐ……ん、うまい」
「よかったー!」
…じゃないよ!
そのクッキー作ったの僕だから!
何勝手に僕とアルのお茶会に乱入してしかもアルにあーん♡なんてしてるのさ!?
僕だってそんなこと絶対にしたいのにっ!!
…まあ僕がやるとアルは警戒してるフリして照れちゃって食べてくれないんだけどね!
ウィルのやつ!
アルが優しくて年下の子には特に甘いことを利用してやりたい放題しやがってー!
いくら弟でも、いいや弟だからこそ許せない!
「ねえアル、兄様のところばっかりじゃなくて僕のところにも遊びに来てよ!二人きりでお茶会しよう!」
コラァァァァァァッ!!?
言うに事欠いて、なんて図々しい!
アルは僕のために王城に来てくれてるんだぞ!?
っていうか、これもう決定的だよね!
確信犯!
有罪!
ギルティ!
ウィルのやつ、アルを確実に狙ってやがる!
人を見る目は確かってことだよね。そういう意味では兄様も嬉しいよ。
でもアルに不埒な目を向けたり、まして手を出そうとするなんて、言語道断!
絶対にダメだからぁぁぁぁぁッ!!!
「ウィルと二人きり、か?……エドがそれでいーなら、いーけど」
僕の方を心配そうにチラ見して、アル。
ああっ、僕のことを気にかけてくれるんだね、ハニー!
なんか小声で「後々めんどーそうだし…」とかって聞こえた気がするけどきっと空耳さ!
なお、申請は却下するよ!
「ダメ。僕をハブってウィルとだけなんて、許さない」
「……だってさ。ごめんな、ウィル」
「ええー!?兄様、ちょっとは空気を読んでよ。お邪魔虫だなぁ」
「こっちのセリフだけど!?」
僕はさすがに声を荒げて、椅子からガタッと腰を浮かした。
むくれた顔をしていたウィルが、とたんに青ざめる。
…兄弟だけど、僕の方がうんと強いからね。魔法も武芸も何もかも。僕が年上だからってだけじゃなくて、異世界転生者ゆえのチート性もたぶんあるんだと思う。それに、身分としても第一王子と第二王子じゃ同じ王族でも雲泥の差だ。
僕を本気で怒らせたら酷い目に遭うって、ウィルも分かってるんだ。だから、怯えてる。
僕だっていたずらに弟に危害を加えたりするつもりはないけど。
アルのことだけは別だ!
そんなに怯えるくらいなら、もっと言動には気をつけるべきだったよね…!
「おい、やめろよ。大人気ないだろ」
怒りと共にほんのちょっと闘気と魔力を立ち昇らせていた僕に、アルが顔をしかめてストップを掛けてきた。
くっ…!?
「だって、アル!ウィルがふざけたことを言うから!」
「おまえがあんまり構ってやらないから、ウィルは俺に懐いてくれてんだろ。一緒に遊びたいんだよ。な、ウィル?」
「う、うん…!僕も、もっとアルと遊びたい!」
「ほらな。おまえが俺に……こだわってるのは知ってるけど、こんな小さな弟にまで焼いてんじゃねーよ」
くぅぅぅぅぅぅぅッッ!!?
ただの友達としてなら、僕だってこんなふうに怒ったりはしないよ!
小さいからって油断しちゃダメだ!
ウィルは明らかにいっぱしのオスの顔でアルを見てるぞ!?
…でも、優しいお兄ちゃん目線でウィルを見てるアルには、そんなこと教えたりしたくない。
だからってウィルの暴挙をこのままにしておくわけにもいかないし…!
ほらー!
アル、後ろ後ろ!
アルが味方になってくれたからって、すっごいほくそ笑んだ顔してるぞ、ウィルのやつ!
やっぱりダメだ!
ここはきっちり思い知らせてやらないと!
もっとも、ウィルを直接どうこうしたらアルから盛大に顰蹙を買ってしまう。
よし、ならば!
「アルっ!!!」
「えっ!?」
「あ”あああああああっ!?」
僕は半歩分の距離を素早く詰めて、隣の席についているアルに横から抱きついた。
そのまま、ほっぺにチュっ♡
唖然としてるアルをギュッと抱きしめて、僕はショックを受けた様子のウィルへと勝ち誇って言い放った。
「アルは僕のものだからね!ウィルがどんなに頑張ろうと僕たちの間に割って入るのは無理だから!諦めなよ!」
「そっ……そんな……そんなぁ…!?」
フッ…!
多少早熟だったとはいえ、所詮弟。
この程度のことで涙目になって部屋から飛び出していってしまった。
これで少しは思い知っただろう。
兄の偉大さ…はどうでもいいけど、アルが僕のものだってことをね!
弟が逃げ去った部屋の扉を眺めてフフンと鼻で嘲笑っていたら、腕の中でアルがふるふると身を打ち震わせだした。
「エド………おまえってやつはぁぁぁぁぁぁッッ!!?」
力づくでベリっと引き剥がされて、さらに流れるような動作で拳を叩き込まれる。
ぐふっ!?
相変わらずいいパンチだ…!
僕の目の前に星がチカチカと飛び散った。
「あんなちっちゃな子になんつーもん見せてんだよ!情操教育に悪いだろ!?」
ああっ、それはその通りだね、アル…!
あいつにはほっぺチューすら刺激的すぎてまだ早かった!
僕の弟のことまで気遣ってくれるなんて、アルは本当になんて優しいんだろう…!
大好き…!!
がくっ。
僕の意識はそこで途切れた。
でもドサマギでアルにほっぺチューできたし、ウィルをしっかり牽制できたから、悔いはない。
後日。
懲りもせず、アルにモーションをかけようとしているウィルの姿を見かけた。
僕のいないところを狙ってやったみたいだ。
僕に対抗しようとしてか、背伸びしてアルにほっぺチューしようとしてやがった。
とてつもない怒りが湧き上がる僕だったが、
「こら、やめろ。エドがやってたからってまねっこしようとすんな」
「えっ…でも、僕も」
「本当にあいつの存在は教育に悪いよな。いいか、ウィル。おまえはあいつみたいになっちゃダメだ。おまえは真っ直ぐ、性癖がねじ曲がることなく、ちゃんとした人間に育ってくれ」
「ねえ、聞いてよアル!僕は…」
「もしおまえもエドみたいなことするようになったら、俺はこの拳を振るわなくちゃならなくなる」
「え”…っ!?」
「な、俺に必殺のグーパンを出させないでくれ」
「う、ううう…」
ウィルは涙ながらに項垂れて、諦めた様子だった。
アルのグーパンは本当に強烈だからね。
僕だからちょっと気絶する程度で済んでるのであって、並の奴なら致命傷さ。
ウィルだってそう。あいつ、回復魔法も僕ほどには使えないし。
やった…!
アル自身でしっかり拒んでくれた!
っていうか、アルは今だにウィルに懸想されてるなんて夢にも思っちゃいないだろう。単に兄である僕の真似事をしようとしただけって思ってる。
要するに、そーいう対象としてまったく見られてないってことさ!
小さな弟に、本当に大人気なくて申し訳ないけど…
ザマァ!!!
って思ったよね!
僕は心の底から喝采を上げていた。
あまりにも痛快だったし、さすがに気の毒でもあったから、今の件でウィルに制裁を加えるのは勘弁してあげようっと。
「今はまだ無理でも……いつか兄様よりも強くなって、きっと…!」
アルが立ち去った後、決意じみた独り言も聞こえてきたけど。
いつか、なんて日は永遠に来ないものさ。
っていうか、僕が来させないよ。
アルは僕だけのもの。
前世からそう決まってるのさ!
「俺は認めてねぇからな!?」
ふふふ、アルは本当にツンデレさんで可愛いなぁ…♡




