飛竜騎士団爆誕っ!…か?1
…今朝は酷い目に遭った。
まあ自業自得って言われりゃそれまでなんだけどさ。
エドのやつ、シャレにならねー。
今後は本当に気をつけていかなくちゃな。
とりま、気を取り直して…
冒険者のアルだ。
王都の実家に戻ってきてるから、今だけフルネームで名乗ってもいいけど、やっぱもう俺の本分は冒険者だって思うから。
みんなにもアルって呼んで欲しいんだよな。
今日も引き続きダンジョンのモンスターを間引きに行くぜ。
でも、その前に冒険者ギルドにも寄っていくことにした。
父上から言われてたんだ。
もしかしたらだけど、騎士団から俺たち指名で依頼が入ってるかもしれないって。
どういうことだろ?
よく分からねーけど、念の為確認しておこうってことになったんだ。
で、行ってみたら本当に依頼が出てた。
王都の冒険者ギルド。
俺はずっとここで暮らしてたから、場所自体は知っていた。
入るのは初めてだったけどな。
ところが、俺とエドがスイングドアを通って中に足を踏み入れたとたん、すっごい注目を浴びてしまった。
四方八方から視線集中砲火だよ。
奥の受付カウンターにいるギルド職員からはもちろん、居合わせた他の冒険者たちまで。
え?なんで?
…って、疑問はすぐ氷解した。
コソコソとした囁き声でみんなが噂してるのが耳に入ってきたので。
「うわマジだ……マジで王子様が冒険者になってやがる……」
「それにあいつ、フュリューリンゲン家の一人息子だろ?頭の出来はちょっとアレだけど武芸達者で有名だった」
「上級貴族の贅沢な暮らしをしてたんだろーに。何を考えて冒険者になんかなってやがんだか」
「でもよその国じゃもう、かなりの大活躍だって評判だぜ……」
「身分を捨てても実力に変わりはないってか?……ケッ、存在自体が嫌味な連中だよな」
………。
うん。
バレてるーーーッッ!!?
ああ!でもそりゃそうだよな!
ここ、いわば地元だもん!
ずっと暮らしてたんだから直接関わったことのない連中にも面は割れちゃってるよなぁ!?
ヤベえ。
別に悪いことしたわけでもないのに、居た堪れない感がハンパない。
今からでも引き返すか…!?
「まったく、やれやれだね」
エド!?
わざとらしく溜息ついて、盛大に肩を竦めて!?
「冒険者に出自は関係ない……それが不文律だったはずなのに。そんな基本も心得ていない素人同然の輩しかここにはいないのか?……王都のギルドの名が泣くよ」
お、おいおい…!
言ってることは正しいが、完全にそれ喧嘩売ってるだろ!?
ほらー!みんなも「なんだと!?」とかって語気を荒げて殺気立ってる!
「いいんだよ。こういうことは早いうちにはっきりさせておいた方がいい」
止めようとする俺をよそに、エドは決然と、
「僕たちを冒険者として認めないなら、すぐ出ていくよ。そしてこの国では二度と冒険者ギルドには関わらない。それでいいかな?」
「あっ、ああっ!?お待ちくださいっ!!」
あ。
いきり立つ他の冒険者たちを押し退けて、受付カウンターからギルド職員さんが飛び出してきた。
「もちろんお二人は立派な冒険者ですとも!是非とも受けていただきたい依頼がありますので、こちらに!」
「ええーっ!?そんな……」
「いいのかよ、こんなの……」
「シッ!お黙りなさいあなたたち!……元々はこの国出身の実力ある冒険者たちですよ!他国のギルドばっかりおいしい思いをさせてなるものですか!」
「いやでも、王子様とお貴族様じゃ……」
「冒険者にそんなもの関係ありません!それともなんですか、あなたたちのうち誰でも、彼らより実力のある人がいるってんですか!?」
「え”」
「無茶ゆーなよ!?」
「天才王子と竜殺しのコンビにかなうわけあるか!?」
「だったら、黙ってすっこんでなさいっ!……あ、お待たせしました。どうぞこちらへ」
ギルド職員さん、強い。
他の冒険者たちをギロッとひと睨みして引き下がらせると、俺たちにはニコニコと愛想の良い笑顔を向けてきた。
その変わり身の早さにも戸惑いつつ、俺とエドは案内されるままに奥の部屋へと。
そこではギルマスが待ち構えていた。
案内してくれた人は、副ギルマスだという。どうりで冒険者たちにも強く出ていたはずだ。案内を終えると、また受付カウンターのところに戻っていった。
部屋には、俺たちとギルマスの三人きり。
「まずは掛けてくれ……ください。あ、いや……」
ギルマスはいかつい顔のおっちゃんだったが、その強面になんともいえない表情を浮かべて、やりにくそうに頬をポリポリ引っ掻いてた。
「念の為確認しときたいんだが……普通に話して平気だろうか?後で不敬罪に問われたりなんてことは……」
「そんなことはしないよ。ここにいる僕たちはただの一介の冒険者なんだから」
だよな!
勧められたソファに腰掛けながら、大きく頷く俺たち。
ギルマスはあからさまにホッとして肩の力を抜いたようだった。
「なら、よかった。いや俺も理屈では分かってるんだが、この王都に長年暮らす者としてはどうしてもな……それに、こんな指名の依頼まで来ちまうと」
と、一枚の依頼票を渡された。
表の掲示板に貼ってあるのと違って、上質紙が使われている。文章の他に装丁も入っててめっちゃ綺麗だし…
依頼人は、騎士団長となっている。
そこまではまあいいんだが、問題は中身の文面だった。
俺たち。冒険者パーティのアル&エドを指名ってのは間違いない。
でもさ…
エドワード様とアルバート様、なーんて書かれちゃってるんだよ!
明らかに目上に対して使うような尊敬語の文体だし!
「レオナルド団長のことだ、悪気はないんだろうが……彼はあまり融通の効かないところがあるからな……」
エドが渋面で呟いてた。
本当に。
こんな依頼票を王城の騎士団長から渡されちゃったら、ギルマスだって俺たちの扱いをどうしたものかって悩んじゃうよな。
「団長には後で言っておくよ。……まあ改善しないかもしれないけど、気にしなくていいから」
「そ、そうか」
まだ態度がちょっとぎこちないギルマス。
「それで、この指名の依頼だが、どうする?」
俺とエドは顔を見合わせた。
依頼は、また騎士団に同道して訓練をつけて欲しいって内容だった。
場所はダンジョン『マッドの館』で。
俺は受けてもいいと思うけど。
「……そうだね、受注しよう」
エドがなにやらものを含んだような様子だったので、後で聞いてみたら、
「よく考えたら『マッドの館』は国が管理しているダンジョン、関係者以外は立ち入り禁止だ。本来であれば、もう部外者の僕たちは入ってはいけなかったんだよ」
そっか。
モンスター群から騎士団を助けた流れで、成り行きでずっとダンジョン通いを続けてたけど。
本当は、そんなことしちゃダメだったんだな?
「状況的に、騎士団から依頼を受けてモンスター討伐に当たっていたってことにはなるけど、なあなあで、曖昧なままだったからね。だけどこれで正式にダンジョンに入る大義名分を得られたことになる」
もしかして騎士団長さん、そこまで考えてこの依頼を?
「どうかな……レオナルド団長はこういう気の回し方はしないタイプだから。いずれにしろ、僕たちにとっても悪い話じゃないよ」
なるほどな。
ってわけで、ダンジョンに来たぞ!
騎士団とは入口のある雑木林で落ち合った。
王都から同行したんじゃ、否が応にも目立っちまうからな。
「エドワード様、アルバート様。急な依頼を受けていただき、ありがとうございます」
折り目正しく俺たちに頭を下げる騎士団長さん。
俺もエドも苦笑することしきりだった。
「依頼主が冒険者にそんな畏まったりする必要はないよ」
「いえ、これは私の性分ですので」
本当に真面目すぎる人なんだなぁ。
しょうがないので、好きにしてもらうことにした。
で、早速騎士団の特訓だ。
ダンジョンモンスターを間引く仕事もしなけりゃいけないから、両方同時にやっちまおうってことになった。
要するに実戦だな。
スタンピード状態もそこそこ落ち着いてきてるし、今ならどうにかなるだろう。
「っヒィィぃぃぃッ!?」
どうにか……
「ギャーッ!やられるーっ!?」
………。
「無理無理無理無理ィィっ!!!」
…あれっ?
とりあえずオーガが5、6匹たむろってたから、今の実力を見るために突っ込ませてみたんだけど。
俺に預けられた部隊、速攻でもう壊滅しそう!?
「も……もうダメ…………死ヌ……」
ヤバいっ!!!
俺は冷や汗を流しつつ、全速力でヘルプに駆けつけた。




