女武闘家が現れたッ!1
はぁい!私はリン!
レイクヒル共和国で生まれ育った天才武闘家!
年は18!やっと成人年齢に達したばかり!
これから冒険者登録をするとこよ。
バリバリ活躍して数々の伝説を打ち立てて名を残し、みんなからチヤホヤされる予定ッ!
大丈夫!
私、可愛い上に強いから、そうなる資格と価値が十分にあるわ!
だって町の格闘道場でも先生に褒められてたもん。
今の門下生の中じゃ一番筋がいいって。
『強くて偉いで賞』だってもらったの!
だから冒険者としても十二分にやっていける!
てなわけで、早速登録ね。
最初は最底辺のEランク。
まぁこれはしゃーないわ。
スタート地点はみんな同じ。
でも私は、ここからが違うっ!
初心者向けのチマチマした薬草採取の依頼なんてやってられないわ!
モンスター討伐は、依頼としてはまだ受注できないけど。エンカウントしたモンスターを勝手に狩っていくのは自由ッ!
高ランクのモンスターをどしどし倒して、その評価と功績をもって、まずはDランク昇格最短記録を樹立してやろうじゃないの!
「もう、リンちゃんってば張り切っちゃって…」
あっ、我が頼れる相棒にしてパーティメンバーのキリコちゃん!
私たち幼馴染なのよ。
キリコちゃんには生まれつき魔法の素養があったから、町の魔法塾に通って今では一人前の魔法使いだわ。
「どちらかというと支援型で、攻撃魔法はあんまり得意じゃないけどね〜」
いいのよ!
攻撃は私が担当するから。
いざって時にキリコちゃんの支援魔法があると心強いしありがたい。
私たち相性バッチリの最強パーティよ!
二人で頑張っていきましょうねッ!
「うん。…ふふふっ、リンちゃんは脳筋だけどそこが無邪気で可愛いなぁ♡」
よーし、やるぞーっ!!!
モンスター狩りをして、数日くらい。
もうEランクのモンスターなんて目じゃないわね。Dランクのモンスターだって何匹も討伐してやったわ!
すぐさま冒険者ギルドに持ち込んで、ギルド職員さんに査定してもらう。
もうだいぶポイントも貯まったと思うのよ。
そろそろ…
「はい、いいでしょう。あなたたち二人をDランクへと昇格します」
やった!!!
冒険者になって、たったの数日でランクアップよ!
どうよ、これ!
最短記録でしょー!
ねえ、ギルド職員さんも遠慮なく褒め称えてくれていいのよ!
「あ、はい。そーですねー。割と早い方だったと思いますよ。すごいんじゃないですかねー」
…あれっ?
なんか、思ってた反応と違う?
最短記録よ!それも当分は破られる見込みもなさそうな!
普通はもっと飛び上がって驚いて尊敬の眼差しを向けてくるものなんじゃ…!?
「え?……ああー、いえいえ違いますよー。最短ではないですよ。まあ割と早い方ですけど…」
えええええッ!?
な、なによそれ!?
一週間足らずでランクアップした私たちより早い奴なんていたの!??
「登録したその日のうちにDランクになった方たちがいるんですよねー。この記録は永遠に破られようがないでしょーねぇ」
なっ…
なななっ…!
なーんですってぇぇぇぇぇッ!?
思わず溜めに溜めて驚く私に、ギルド職員さんはさらに聞き捨てならない情報を。
「そして今ではもうCランクに上がってますねー。それも、たった一週間足らずで」
えーっ!?
私たちが1ランク上がったのと同じ期間で、そいつらは2ランクもアップしたの!?
「Cランクへの昇格も最短記録だと思いますよー。本当にすごい冒険者パーティで…」
お、おかしいわよ!
私たちみたいな実力者でも、ランクアップにはこれだけ時間が掛かったのよ!?
そいつら、なんかズルしてない!?
「…人聞きの悪い。ギルマス直々の、正当な評価ですよー!?」
ギルド職員さん、ちょっとムッとしながら教えてくれた。
ランクアップに必要な、ギルドポイントの計算方式。
例えばだけど、Cランク冒険者がCランクのモンスターを倒しても1ポイントだけにしかならない。
でも下位のDランク冒険者がCランクモンスターを倒したら10ポイントっていう感じで、同じ仕事をしてもランクに応じてもらえるポイント数は変わってくる。
ポイント計算については冒険者ギルド運営側の機密だから、あくまで目安だというけれど…
最短記録保持の冒険者たち、登録初日のEランクでCランクモンスターを討伐してきたという。
当然、もらえるポイントはでかい。
Dランクに上がってからは、なんとSランクモンスターを討伐したと!
「それも第一級災害指定のラージラージャナーガを、たった二人で、無傷で討伐されたんですよねー。もう完全に伝説級の功績ですよー」
ギルド職員さん、話しながらその冒険者のことを思い描いてか、うっとりとした顔してる。
ぐぬぬぬぬッ!?
そんな憧れと尊敬のこもった眼差し、本当だったら私とキリコちゃんが向けられるものだったはずなのに!?
なによ、そんな奴ら!
ちょっとたまたま、運良く、高ランクモンスターとエンカウントしたってだけじゃない!
私たちだって、もっと上位のモンスターに巡り会える幸運に恵まれてたら、それくらい…!
「ううんリンちゃん、さすがにSランクモンスターは今の私たちじゃ無理だと思うよ?」
キリコちゃん!
ダメよ、そんな弱気なこと言っちゃ!
引けば老いるわよ、臆せば死ぬわよ!
私たちだって伝説になる予定なの!
そんな奴らに負けてられないわ!
しかも、聞けば武闘家と魔法使いのコンビですって!?
私たちとモロかぶりじゃない!もう存在自体が喧嘩売ってる!
こうなったら直接対決よ!
そいつらに勝負を挑んで、私たちの方が優れてるって全方位に証明してやるわ!
ねえギルド職員のおねーさん、そいつら、今どこにいるの!?
「ええー…?…分かりませんよー。冒険者はフリーダムが売りなんですから…」
なんでも、ラージラージャナーガ討伐後は最寄りのこの町に滞在していたけど、とっくに旅立ってしまったという。
くっ……なんて運の良い奴らなの!?
今ここにいたら、私が華麗にぶちのめしてやれたのに!
「ちょっとちょっと、この町を救ってくれた大恩ある冒険者パーティに喧嘩売ろうとしないでくださいよー。まあどーせあなたたちじゃ到底敵わないでしょうけど…」
ぬわぁんですってぇぇぇ!!?
「ご本人に会えば分かりますって。もう全然お話にならないレベルで実力が段違いだって……あっ!?」
私に向かって顔をしかめてしゃべってたギルド職員のおねーさん、急に表情を一変させた。
私の肩越しに何かを見つけて……えっ?頬をポッと染めてるっ!?
「ああああっ!あの方たちですよー!最短でCランクに駆け上がった、新進気鋭の冒険者パーティ!アル&エドですっ!!」
なにぃっ!?
目をクワッと見開いて振り返る私。
そこには、ちょうどギルドに入ってきた二人連れの姿があった。
「あれ、この町って前も来たところか?」
「そのまま引き返してきたんだよ。アル、気付いてなかったの?」
「一番近くの町、おまえが場所分かるってゆーから何も考えずについてきた」
「あっ、僕を信用してくれたんだね♡嬉しい、アル♡」
「確かにそーだけど……そーいうのやめれー!」
なんか呑気な会話をしてるけど…
ぐっ…
ぐぉぉぉぉぉッ!?
眩しいッッ!
なんという美しい骨格と筋肉ッ!?
「えっ、そこ!?」
金髪の方もまぁまぁだけど、それより日焼けして精悍な男の方…
鍛えに鍛えに鍛え上げた極上の美肉をしているわッ!
「ちょっ……言い方!?というかそっち!?確かにアルさんもカッコいいですけど、普通はエドさんに目を奪われるんじゃ…!?」
「リンちゃんは武闘家で脳筋だから、普通の女の子とは着眼点が違うのよ♡」
「そーなんです!?年頃の女性としてはどーかと思いますよ!?」
「そこが私のリンちゃんのチャームポイントよ♡」
「なんだかあなたたち、なにかを拗らせてません!?」
ギルド職員のおねーさんとキリコちゃんが何か後ろでゴチャゴチャ言ってたけど、私には聞こえちゃいなかった。
額に、玉の汗が浮かぶ。
私、天才武闘家だから。
分かるのよ。
同じ種類の天才って奴が!
そして、彼我の実力差も。
非常に悔しいけど、認めざるを得ないわ。
現状、私よりあのアルって男の方が何枚も上手だと…!
「えっそんな!?リンちゃんが戦わずして誰かに負けを認めるなんて…!?」
「あーよかったー。そこは冷静に判断してくれましたかー」
しかーしっ!
逆に考えれば、これはチャンスよ!
好機だわ!
格上に挑み、そいつを打ち倒すことによって、私がパワーアップしていく絶好の機会!
「あれっやっぱダメだ!?なんか変なこと言い出した!?」
実戦に勝る経験値などなしッ!
挑む相手が強敵難敵であるほど、乗り越えた後の成長度もハンパないってスンポーよ!
思えば、私たちより先にこいつらが勇名を馳せているのも、このためだったかもしれないわね。
この私が築き上げる伝説の、第一歩目!
私がステップアップするための踏み台の役割ってことよ!
「ものすごく失礼なことまで言ってる!?ちょっと、そーいうのやめてくださいって!」
「いいわリンちゃん、その意気よ!それでこそ私のリンちゃん♡」
「あなたも止めるとかしてくださいよ相棒でしょう!?」
「私がリンちゃんの大活躍を阻んだりするわけないじゃない♡」
「ダメだー!?この二人どっちも理屈が通じない!?」
そうとなったら、こうしちゃいられない!
膳は急げよ!
うりゃぁぁぁぁぁッ!!!
「えっ?…誰?」
「僕たちになにか用でも?」
受付カウンターに向かってのんびり歩いてきてた二人の行く手に立ち塞がり、私はビシッと指を突き付けた。
キョトン顔してるアルって男!ターゲットはあんたの方よ!
「私と勝負しなさいッ!!!」
「え、やだ」
そこで話は終わった。
完。




