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転生してホモスパイラルから逃げられたと思ったら前世で俺の処女を奪ったクソ野郎とエンカウントしちまった件  作者: KP
第二章

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父上はつらいよ2


完全に開き直った私が、ウィリアム様の補佐として忙しく働いて、しばらく経った頃。

「ねえフュリューリンゲン卿……父様から、こんなものを預かってきたんだけど」

専用の執務室で、ウィリアム様から一通の封筒を渡された。

わぁお。嫌な予感しかしなーい!

って直感的に察したけれど、受け取らないわけにはいかないよなぁ…!

私は覚悟を決めて、封筒の中身を広げてみた。

…なんだ。結構な量があるな…何枚も…報告書、か?

差出人は、エドワード様…

えっ!?

エドワード様っ!??

私は食い入るように書類の束に目を通した。

噂になっていたとはいえ、エドワード様が本当にアルと行動を共にしているのか、確証まではなかったが…

ここに書かれていることで、決定的。

アル…!

元気にやってるんだな!

よその国で冒険者になって!

私がこっそり忍ばせてた手紙にも気付いてくれたようだ。亡き妻の墓参りに…

………あ”!?

赴いたところで、かの領地の窮状に出くわした!?

よく今まで気付かれなかったなってレベルの悪質な不正腐敗の温床!?

9公1民の違法!?

領主がゴロツキを雇って領民から搾り取って…!?

なっ…

なんじゃこりゃぁぁぁぁぁッッ!!!

「わあああ。フュリューリンゲン卿でもそんな顔で怒ることってあるんだね…」

ウィリアム様ー!

なにを呑気な!

あなた、これをお読みになってないんですか!?

こんなの憤激ものでしょう!?

「アルの目つきの鋭いところって、実はフュリューリンゲン卿に似てたんだね。今まで気付かなかったや」

そっ…

そんなこと言われたって…

嬉しいですけど!

似てない親子って言われるばかりだったから、嬉しいですけどっ!!

そーいう問題じゃないでしょーが!

「うん。まさか兄様からの初報告がこんな内憂の件になるとは思わなかったって、父様も頭を抱えてた」

国王陛下!?

そもそも、どうして出奔したエドワード様からの報告書が届いているのか……と今更ながら不思議に思うが。

おおよそは見当がつく。

アルと違って、エドワード様はしっかりご家族に許可を取ってから旅立ったというからな。

何かあったら報告を入れるよう、あらかじめ取り決めでもしておいたのだろう。

身分を捨てて自由になって、他国を含めてあちこちを気ままに旅するなら、ついでに情報収集してこい、と。

要するに、諜報員のような仕事を任せていたのだ。

…元は王位継承者だったお方に、なんつーことさせてんだよ、とは思うが。

どんなことでも国家のために役立てようとする。抜け目のない国王陛下らしい、か。

にしても、その内容が他国の情勢とかではなく、国内の問題とは…

私が地方官僚やってた頃の任地だ。

私はあの地で妻と結婚し、アルを授かった。

思い出の場所。

今でも亡き妻が静かに眠る…

それが。

それを!

死者の安眠を妨げるよーなとんでもねー統治をしやがって後任のクソ領主〜〜〜〜〜ッ!!!

国王陛下が私にもこの報告書を見せてくださったのは、かつての任地だからある程度は事情に通じていると判断してのことだろう。

そして事後処理なんかも私がやれと!

情報源が出奔したはずのエドワード様では、下手に他の奴に割り振れる仕事じゃないものな!

この激務の中、さらに仕事を追加されるのは本当にキッツイが…!

いいでしょう!

やってやりましょうとも!


まずクソ領主一味は中央裁判所までしょっぴいてきて正式な裁きを受けさせる!

余罪も悉く追求して不正に溜め込んでた財は当然没収!本来の持ち主である領民たちにきっちり還元するからな!

補佐官の上奏を止めていた不正役人どもも連座させるぞ!関わった輩は誰一人として見逃してなるものかー!

季節外れの大掃除じゃーいッ!

徹底的に、苛烈に!

かの領地から不正腐敗をキレーに一掃するまでは!!




………!!!




ゼーッ!!!ゼーッ!!!(精神的疲弊)

ようやく少しは状況が落ち着いてきた。

役割をまっとうできていなかった領地の補佐官だが、彼は心ある人物ではあった。

不正には一切加担せず、どうにか中央に状況を伝えようと四苦八苦していたようだ。ちゃんと裏も取って確認したぞ。

なので、そのまま領主代行として領地での仕事を継続させることにした。

統治する者が完全にいなくなっては、それはそれで問題だからな。補佐官がまともな人物であったことは不幸中の幸いといえた。

無論、手放しで信用したりはしない。

定期的に細かく報告を送ってくるよう、命を下しておいた。

なお遠距離ではあるが、魔法の通信道具で重要な報告書なんかは即日やり取りできるようになっている。使用権限を持っている役人が途中で阻んだりしなけりゃ、中央にはすぐ情報が伝達されるのだ。

あまりに酷い状況だったからな。最初のうちはもう毎日送ってこい、って勢いで命じた。

領主代行となった彼は、今のところ真面目に報告を送ってきている。

うん。

本当に毎日送ってくるんだよな…

確認する私も大変ではあるが。

…おっ、そんなこと言ってるうちに、今日も。

また分厚い束だなぁ。

一連の流れで経歴も調べ上げたが、領主代行は平民からの叩き上げだったんだよな。武術もこなすが、専ら学業で優秀な成績を修めて中央の文官に採用されていた。

だから事務仕事なんかお茶の子で、これだけの報告書も苦もなく仕上げてくる。

有能な男だ。

元領主の専横を止めることができなかったのは、ひとえに貴族へのツテがなかったためといえる。不正に加担してた役人ども、みーんな貴族としての縁故採用だったもんな。

中央の為政者サイドとしては、色々と考えさせられる事案だ。

ともかく内容は、っと。

おお……エドワード様が内政立て直しを手伝ってくださっているのだな。

アルも。畑に出るドリュー退治をしてるのか。

普通なら冒険者として依頼料を取る仕事だろうが。無償のボランティアとしてやってると。しかもボランティアという自覚もなく、恩に着せたりなどせず当たり前のように。

…ふふふっ、アルらしいなぁ。

私はいつしか口元を綻ばせていた。

目が回りそうな激務の上に、毎日分厚い報告書に目を通すのは本当に大変なのだが、この楽しみがあるから頑張れる。

伝聞でも、息子が元気でやってると分かるのは、嬉しいものだ。

領主代行もそのへんのところを心得て書いてくれてるフシがあるな。『新領主には是非ともアルバート様のようなお方を』などという一文は、おべっかが過ぎると思うが。

ひとまず順調なようでなによりだ。

私は簡単な返信をしたため、引き続き励むよう、領主代行へと申し伝えた。




翌日。

また報告書が届いた。

また分厚いんだよなぁ…

アルのことは書いてあるかな?

…あった!

なになに。近くの森でモンスターを仕留めてきて、領民たちに肉を振る舞ってくれたと。誰に頼まれたのでもなく自発的に。

あの子は強くて心優しいからなぁ。

自慢っ!

領民たちも感謝することしきりのようだ。

領主代行の奴も、また書いてきてるな。『新領主には是非ともアルバート様を!』

…んっ?

なんだこれ。名指しになってるぞ。

アルは現状貴族としての身分を捨てた冒険者だぞ?

無理に決まってるだろーが。

褒められれば父親として悪い気はしないが、限度ってものがあるだろ。

私はほぼ定型文だった返信に、『非現実的なことは書かないように』と注意を加えて、領主代行へと送り返した。




さらに翌日。

またまた報告書が来た。

なんだか分厚みが増している気がする…

気のせいか?そーだよな?

アルのことがたくさん書いてあるなら嬉しいけどな……と思いながら読み進めていった。

たくさん書いてあった。

本当にたくさん。

なんだよ、これ。『新領主には是非ともアルバート様を!』ってニュアンスの文言が全部で5、6回くらい出てくる。

サブリミナル的に繰り返してる…!?

今まで、てっきり私へのご機嫌取りで書いてるんだと思っていたが…

これ、ガチじゃね?

本気でアルを領主にしたがってる!?

無茶ゆーなよ領主代行!?

仮に領主になったとして、あの子は勉強はからっきしのアホの子だぞ!?

領主としての執務なんかこなせるものか!


『そこは私めが全力で担わせていただく所存です。』


私の反応を予測して受け答えみたいに書いてきてる!?


『煩雑な事務仕事などは私めに丸投げで結構。アルバート様はただそこにいらっしゃって、正義を体現してくださるだけで良いのです!』


うちの子、ヒーローかなんかだったかな!?


つーか領主ってそーいうものじゃないだろ!?

大丈夫か領主代行!?正気に戻れ!

私はいつもの返信に『疲れてるんじゃないか?くれぐれも無理はしないように』と柄にもない気遣いの一文を添えて送った。




その翌日。

またまたまた報告書が。

分厚ぅ〜い…

アルのこともたくさん書いてあるぅ〜…

嬉しいけど、どの項目も最終的には『新領主には是非ともアルバート様を!』って結びになってるんだよ…

だから無理だっつーに。

なんでうちの子、ここまで慕われてんの?

「そりゃアルが強くて真っ直ぐで優しくてカッコよくて素敵で頼りになるからだよ」

ウィリアム様ー!?

私と一緒に報告書に目を通して、そんな当然みたいな口ぶりで!?

「だって領民のために自発的にいろんなことしてるって書いてある。ドリュー退治が終わった後も畑の穴を埋めるのを手伝ったり、森の危険なモンスターを間引きに行ったり。痩せてる領民たちを心配してお肉を振る舞ったり、他の素材も放出してあげたり。子供たちと遊んであげたり、お年寄りに手を貸してあげたり。何もなくとも、寄り添って話を聞いてあげたりさ。こんなの、ずっと一緒にいて欲しいって思っちゃうよね」

…なんだか羨ましそうにおっしゃいますな!?

「そりゃ羨ましいよ!僕だってアルともっと一緒にいたかった!」

「うむ。余も同意である」

ギャー!?陛下っ!?

様子を見にいらしたのですか!?

「アルバートくんなら誰からも慕われるであろうな。なんら不思議はない」

「そうですよね、父様。アルだったらこれくらい当然です!」

うちの子、ビックリするほど王族から高評価!

思えばその筆頭がここにはいないエドワード様だったよなぁ…!

って、お二人とも、お戯れはおやめください!

アルはもう一介の冒険者なのですよ!

どんなに慕われてようが望まれてようが、領主になどなりません!

「でも領主代行も領民も、アルじゃなきゃ嫌だって書いてあるよ?」

そんな我儘許しません!

あの子は自由が好きなのです!

領主として一処に縛り付けるなら、私が寂しいのを我慢して手元から離した意味もなくなってしまう!

「じゃあ新領主はどうするの?ずっと棚上げにしてあったけど、そろそろ決めないとだよね?」

それはっ…!?

「どうしてもアルバートくんが無理なら、父親であり元領主でもあったそなたであれば……とも書いてあるようだぞ、フュリューリンゲン卿」

私っ!?

あっ本当だ書いてある!

最後の方に、ちんまりと!

あの領主代行、落とし所の妥協点として私を指名してきやがった。

最初無理難題をふっかけておいて、後から実現可能なレベルの要求に切り替えるとか。

交渉術としては正しいけどなぁ…!?

私だって無理だろ!?ウィリアム様の補佐してるんだし…

………。

いや、待てよ。

よく考えたら、そう悪いプランではないかも。

地方領主に封じられるなら、中央での仕事を辞して任地に赴くことになる。

昔みたいに辺境の地方領主をしながら、ゆっくりのんびりアルが帰ってきてくれる日を待つ…

うん。

いいじゃないか!

思い描いてた第二の人生に限りなく近いプランニングだ!

よーし、分かりました!

残念至極ですがこの私、ウィリアム様の補佐を辞して地方領主にーーー

「兼任だな」

「兼任だよね」

…え”っ!?

「そなたならウィルの補佐と地方領主。どちらもそつなくこなせるであろう、フュリューリンゲン卿?」

いや陛下ちょっと待って待ってお待ちください!?

地方領主って普通はその任地に赴いて統治するものですし…!

「有能な領主代行の人がいるから、そのへんは大丈夫なんじゃない?ほら、今やってるのと同じように中央から指示を飛ばせば」

え”〜〜〜〜〜ッ!?

これ超激務なんですけど!?

今だけの一時的な業務だと思ってたしアルの情報も掴めるからなんとか頑張ってこれたんですよ!?

今後もずっととなると私の仕事の許容量的にも限界が…

「なぁに、そなたなら大丈夫であろう。頼りにしておるぞ、フュリューリンゲン卿」

「フュリューリンゲン卿にいなくなられたら僕が困っちゃうよ。だから、ねっ!」

親子して畳み掛けてくるー!?

もうのし上がる必要のなくなった今更になって王族にこんなに頼られるとか。

皮肉もいいとこだよ。

トホホ…




そんなわけで、私。

地方領主を兼任することになりました…

成り行きで強引に決定されたも同然だったのに、中央から領主代行に指示を飛ばす新しい統治システムだってんで注目されてるし評価もされつつある。

私、悪名の他に、普通の名声も高まってきた。

そんなつもり、ちっともなかったのになぁ…

領主代行にも私が領主に決まった旨を伝えたよ。

元はといえば、こいつが報告書に余計なこと書きまくってたせいだと思うと業腹だが…


『ご英断、誠にかたじけなく。ギルバート様の統治時代を知る領民たちはこぞって喜んでおります』


私もまぁまぁ慕われていたのだな。

あの頃は私も若く、清廉な統治をしていたからな…

まぁ悪い気はしない。


『ギルバート様の統治時代を知らぬ若い世代は、アルバート様でなかったことに落胆しておりますが』


一言余計だこの領主代行!?

アルが人気者なのは嬉しいけどさぁ!?

わざわざ書くなよ落胆とか!


『いずれギルバート様がご勇退あそばされた暁には、必ずやアルバート様に領主の座が引き継がれるものと信じております!』


そして諦めてねぇぇぇぇぇ!!???

諦めねぇなぁこの領主代行!?

どんだけアルに領主になって欲しいんだよ!

つーかアルに地位と財産相続して穏やかな余生を過ごすとか、私だって本当はそーしたいよちくしょう!?




ううっ…

アルよ、おまえは今どこにいる?

きっと自由な旅の空の下なんだろうなぁ…

たまには帰ってきてくれよ。

私が過労死する前に…!

父は、切実におまえに会いたいです。


あーいう息子と日々接していたため、父上は意外と気が若くてやんちゃ

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