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転生してホモスパイラルから逃げられたと思ったら前世で俺の処女を奪ったクソ野郎とエンカウントしちまった件  作者: KP
第二章

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女武闘家が現れたッ!2


って、んなわけないでしょーッ!!!

一瞬茫然自失で固まっちゃったけど、これで終わらせてなるものか!

「なんで嫌なのよ!?」

「だって戦う理由なんてないだろ?つーか、あんた誰なんだ?俺たち初対面だよな?」

おっと…

確かに名乗らなかったのは私のミスね。

えー。こほんっ!

「私は天才武闘家リン!あんたをぶちのめして伝説となる女ッ!!!」

「あ、武闘家なんだな。それっぽい雰囲気だとは思ったけど」

「また随分と個性的な人だね…?」

「さあ名乗ったわ!これでいいでしょ。いざ尋常に勝負ッ!」

「なんでそーなるんだよ?だから戦う理由なんてないって…」

「あんたになくても、私にはあるのよ!」

「えー………困る」

「ねえ君。アルを困らせないでよ。あんまりしつこいと、僕………怒るよ?」

エドっていう金髪男が横から茶々を入れてきたわ。

相棒を庇おうってことね。敵ながら、あっぱれな友情じゃない。

でも、邪魔よ!

これは私とそっちのアルって男、武闘家同士のメンツの問題なのよ!

あんたみたいな上腕二頭筋の盛りの足りない奴なんて、お呼びじゃないのよ!

「じょ…上腕二頭筋…!?」

「ふーん、そっか。メンツの問題か。なら確かに、受けて立たなくちゃいけねーよなぁ」

エドってやつは顔を引きつらせてたけど、アルは納得して頷いてくれたわ。

やっと話が通じたようね。遅いのよ!

「でもやっぱ嫌だなぁ」

あれっ!?

「いやだって、こーいうふうに絡まれるのギルドの定番イベントだとは思うけどさ……あんたみたいな可愛い女の子と戦うなんてやりにくいよ」

「私が可愛いのは知ってるわ!」

「知ってるんだ!?」

「そうよ!私のリンちゃん♡は可愛いのよ!」

「ってまた増えた!?君は誰!?」

「あ、どうもー。リンちゃんの運命的パートナー、キリコっていいます」

「あ、これはどうも。ご丁寧に…!?」

キリコちゃんとエドってやつが互いに挨拶し合ってる。

それを尻目に、私はアルと話をつける。

「でも可愛いかどーかなんて勝負の世界には関係ナッシン!私の挑戦を拒む理由になろうはずもない!」

「だけどさ、男が女の子にグーパンかますわけにはいかねーし…」

「それもまたナンセンスね!普通の町娘さんならともかく、私は武闘家なのよ!あんたの言ってるのはただの男尊女卑で男女差別だわ!」

「そっ、そーいうことに……なるのか……!?」

アルが目をグルグルさせて迷い出したわ。

よっし、もう一押し!

「ねえ、だから無茶言ってアルを困らせないでってば。アルは優しいんだから、女の子に手を上げたりできないんだよ」

またエドが余計な横槍をー!?

「ちょっと待ってください。そちらこそリンちゃんの言ったことちゃんと聞いてたんですか?」

キリコちゃんが援護射撃を!

「性別によって対応を変えるなんてセクハラです。女性だからって戦えないなんて、そちらのアルさんって人、とんだセクハラ野郎じゃないですか」

「は?……僕のアルにその暴言、覚悟はできてるんだろうね?」

「あなた方こそ私のリンちゃんにさっきから失礼なんですよ」

「……処すよ?」

「……返り討ちにしてやりますよ」

二人の間で見えない火花がバチバチッと…

なんか外野の方が対決ムードが盛り上がってきてる!?

待ってキリコちゃん、気持ちは嬉しいけど無理しないで。

同じ魔法使いでもキリコちゃんは支援型なんだから、ガチンコ対決には不向きだわ。

ここはやっぱり、私とアルとで雌雄を決するべきなのよ!

「……そうだな。あんたの言い分の方がもっともだ」

アルが意を決したというように頷いた。

「その挑戦、受けて立つぜ。……えーと。だからそっちの、キリコさんって人?あんまエドを刺激しないでくれ。こいつ時々シャレにならねーから」

「リンちゃんにきちんとした対応をしてくれるなら、私に文句はありません」

「アル……本当にいいの!?」

「ああ、向こうの方が筋が通ってる。武を志す者として、俺がまだまだ甘かったんだ」

よーし、よしっ!

私のペースになってきたわ!

これでアルをぶちのめして、私の華麗なるビクトリーロードの第一歩目に…!

「もう可愛い女の子とは思わない。そのへんのおっさんと同じだと思って、戦うぜ!」

誰がおっさんよ!?

あんた失礼しちゃうわねッ!?




すったもんだあったけど、とにかく勝負に持ち込むことができたわ。

ギルド内の訓練場を貸してもらって、私とアルが対峙する。

「……こんな連中の相手をしてあげることないのに。アルさんはお人好しですねー」

「そこが僕のアル♡のいいところだよ」

この場所に案内してくれたギルド職員のおねーさんが、エドとそんなこと話してた。

この二人と、我が相棒キリコちゃん。ギャラリーはこれだけ。

もっとオープンな場所で堂々とした勝利を華々しく飾って、全方位に私の存在をアピールしたかったけど。しょうがない。

私たちレベルの武闘家がそのへんで戦うわけにはいかないものね。

ギャラリーが少ないのは寂しい限りだけど、まぁいいわ。

いざっ!

「いつでもいいぜ」

真正面で、アルが構えてる。

ほんの僅かに半身になっただけの自然体で、並の奴ならただ突っ立ってるだけに見えるでしょう。

でも、天才武闘家たる私には分かる。

…隙がねえぇぇぇぇぇぇッッ!?

ビックリするほどビタイチ隙がないわ!?

どこから攻め込んでも返し手を食らう嫌なビジョンが浮かんでくる!

くぅっ…!

なにもしてないうちから、額にじっとり脂汗が…!?

「動きがないですねー。威勢のいいこと言ってたくせに、どうしたんですかねー?」

「ふふっ……そりゃ、アルが相手だからね。実力差がちゃんと分かるだけ、彼女はマシな方だよ」

「リンちゃん頑張って…!」

ギャラリーからの声にも、構っている余裕などなかった。

アルは呑気そうな微笑みさえ浮かべてる。

「どーした?俺の方からいくか?」

…それは非常にヤバい!!!

こうしてジッとしていても埒が明かないのも事実だし。

守勢に回っては、勝機を掴むことなどできやしない。

ここは攻め込まれる前に、こっちから攻めるべきよ!

果敢に攻めることによって活路を見出してやるっ!


烈帛の気合いと共に、私は一気に間合いを詰めた。

アルに向かって、まずは一撃!

からの、二撃、三撃!…もっとたくさん!

シュバババババッとした素早い連続攻撃が私の戦闘スタイルよ!

相手の顔面めがけての多段ヒットを狙う。

が、全部避けられたー!?

正直、この展開予想ついちゃってたけど…

全部最小限の動きだけで、紙一重で回避されてる!

完全に見切られてるわ!

ここまで露骨に余裕でかわされるなんて、プライドが傷つくじゃない!?

だけど…

ナメないことね!

上半身への連続攻撃を仕掛けて注意をそっちへと向けておいて、唐突に下半身への攻撃へと転じる。

足首の角度がポイントよ!

腰を落としたローキックの回し蹴りで足元を刈り取ってーーー

「おっと」

って、これも避けられた!

でもアルをその場から一歩移動させることに成功したわ!

さっきから上半身をちょっと捻るだけで、私の拳を軽々と避けやがってたからね。

移動した、ってことは、重心がズレたってこと。

畳み掛けるなら、今ッ!!!

いくわよ!

旋風脚!連牙連脚!かかと落とし!からの連牙拳!そしてオマケに飛燕裂空脚ーーーッッ!!!

「すっごい手数の多さだなー。ここまでやる奴、初めて見た」

だぁぁッ!?

アルのやつ、やっぱ全部回避したー!

しかも平然とおしゃべりとか!

くっ…

こうなったら一旦間合いを取って、もう一度…!

「んじゃ今度はこっちの番だな」

えっ…

バックステップで離れようとした私に、それ以上の速度で肉薄してきて…


ーーーぐふっ


腹部に衝撃が走り抜けた。

やばい、これ。

疾い上に、異様に重い一撃…!

薄れゆく意識の中、私は自分の体が後ろ向きに倒れていくのを自覚した。




って、やられるかッ!!!

気合いで意識を繋ぎ止めて、受け身で体勢を立て直す。

勢い余ってコロコロコロって連続でバク転決めた感じになっちゃったわよ。

あっぶなー!

ギリだった!

本当にギリだった!

ほとんど意識落ちかけてたわ。

たった一発のグーパンに、ここまでの威力があるなんて!

「アルのグーパンに耐え切った!?そんな……」

「えっ、えっ、どーいうことです!?アルさんが余裕で勝ってるように見えてましたけど…!?」

「そんなのは当然のことだよ!でもアルが一撃で倒せないなんて、彼女すごいよ!」

「そ、そーいう基準になるんですね…!?」

「少なくとも彼女、マーダーグリズリーよりは頑丈でしぶといってことになる」

「Aランクモンスターオーバー!?」

「私のリンちゃん♡はすごいんですよ当然でしょうっ!だけど比較対象にモンスターなんか持ち出さないでくださいっ!」

ギャラリーの三人が騒然としてる。

今の私たちの攻防、周りからはそう見えていたのね…

でも、私自身は知ってる。

もちろん、アルも。

「バックステップを利用してうまく衝撃を逃がしたんだな。咄嗟にその反応ができるなんて、やっぱあんた、かなりやる奴だな」

そう。

相手からの反撃を受ける刹那、私は反射的に受け流す姿勢を取った。

丹田にも力を込めて。グッと耐える構えだったのよ。

にも関わらず、意識が飛びかけた。

受け流しきれない程の強烈な一撃だった。

アルの様子から、それでも相手にとっては渾身ではなかったことが窺い知れる。

たぶん、ごく普通のワンパンってだけの攻撃だったんだわ。

やろうと思えば、そこから追撃を加えて、確実に私を仕留めることもできたでしょう。

アルはあえてそうしなかった…

「どうする?まだやるか?」

質問に、私はゆっくりと頭を振った。

構えを解く。

「やめとく。あんた、すごい奴ね」

本当に。

上には上がいるものだわ。

私が天才武闘家ってことは間違いのない事実だけど。

アル。

彼は、武の頂に到達しようとしているわ。

「いや俺もまだまだだよ。最初渋っちまったけど、他の武闘家との手合わせっていいものだな。すっげー勉強になる」

あんたこれ以上強くなるつもり!?

「うん。俺の方が一撃は重いし、今のところスピードも上だけど。あんたの方が手数が多くて、狙いも正確で、臨機応変な対応力のある身のこなしだった。俺ってどーしても攻撃が単調になりがちだからさ、すごいなって思ったぜ」

ふ…

ふふんっ…!?

そうよ、そうなのよ。

私だってすごいのよ!

今回はちょっと遅れを取ってしまったけれど、アルにだって決して負けちゃいないわ!

いいわ。

私たち、ライバルね!

「ああ。ライバルだな!また勝負しようぜ!」

私たちは笑顔で、ガッシと握手を交わした。

が、


べりっ


次の瞬間、私はキリコちゃんに、アルはエドによって後ろから引っ張られ、半ば強制的に引き離されてしまった。

「ダメだよリンちゃん、敵と慣れ合ったりしちゃ!」

なんか強張った顔のキリコちゃんにすっごい勢いで怒られる私。

えー、でも。

アルはもう敵っていうか、ライバルだし。

「ダメーっ!!!そんなふうに気を許したりしちゃ、勝てる相手にも勝てなくなっちゃうよ!!!」

そ、そう…?

いつも冷静で賢いキリコちゃんがそう言うなら、そーかも…?

一方で、アルはエドに詰め寄られてた。

「あんな女なんかとベタベタしないでよ!アルのバカっ!!」

「はー!?そーいうんじゃねーだろ!?これは戦った後はノーサイドっていう友情の証で…」

「そんなこと言ってまんざらでもなかったくせにー!僕は絶対に許さないからっ!」

「おまえにんなこと言われる筋合いはねーよ!?」

一人、蚊帳の外になってたギルド職員のおねーさんが、青ざめた顔色でポツリと、

「はわわわわわッ………泥沼カオス二重奏ッ…!!?」

などと呟き、慄いていた。

一体、どーいうことかしら…?






「阻止っ!絶対に阻止だっ!あの女をアルに近付かせるのは危険すぎる…!」

「こっちのセリフですよ!?私のリンちゃん♡に二度と近付かないでくださいっ!」

「そっちから絡んできたくせに!」

「だってこんなことになるとは思わなかったんですよ!私のリンちゃんがっ…」

「僕のアルがっ…」

「………」

「………」

「あの、エドさん。私たち、協力しません?」

「僕も今、それを考えていたよ。僕たちは決して仲間ではないけれど、互いの利害が一致している」

「ええ。互いの利害のために、手を組みましょう」


ガシィッ!


キリコちゃんとエドが、なにやら黒い笑顔で熱く握手を交わしていた、なんてこと。

私も、アルも、まったく気付かなかったのだった。


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