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転生してホモスパイラルから逃げられたと思ったら前世で俺の処女を奪ったクソ野郎とエンカウントしちまった件  作者: KP
第二章

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冒険者気質ってことさァ!


俺たちはここにいるぞーッ!!!


「いきなりどうしたの、アル!?」

いやなんか、誰かに向かって叫ばなくちゃいけない気がして…

こほんっ。

とりま、俺。冒険者のアルだ。

相棒のエドも一緒だぜ。




ラージラージャナーガ討伐から、明けて翌日。

俺たちは冒険者ギルドに呼び出された。

宿屋の食堂で朝飯食ってるところにギルド職員さんが呼びに来たから、何事かと思ったぜ。

なんでも、昨日討伐したラージラージャナーガの後処理諸々が終わったらしい。

…ぶつ切りにして草原を血溜まりにしちまったんだった。

大丈夫だったのかな?と心配しつつギルマスを訪ねたが、特に問題なかったという。

てっきり、雑な倒し方したことを怒られちゃうのかなってヒヤヒヤしてたんだけど、

「第一級厄災指定モンスターを早期討伐してくれたんじゃ。感謝こそすれ、文句など言うはずないじゃろ」

好々爺の笑みを浮かべたギルマスにそう言ってもらえて、一安心。

血溜まりも町にいた魔法使い総出で浄化魔法をかけて、綺麗にできたんだそうな。

草原の禿げたところも、多少の時間を置けば元通りになる見込みだって。

あそこの草原は魔素が豊富で、自然の回復力も強いという。

よかった!

でも、じゃあなんで俺たち呼び出されたんだろ、って首を傾げてたら、

「ラージラージャナーガの素材じゃよ。おまえさんらは何も言っとらんかったから、全部買い取り扱いにさせてもらったぞい」

と、また金貨の詰まった袋を渡された。

どどん!と7こ。

………。

えっ、またこんなに…!?

「大雑把な切り口じゃったし、解体はすべてこちらで行ったからのう。悪いが、少々値引き扱いさせてもらったわい」

値引きしてもこんな大金になるのか!?

「Sランクモンスターの素材は希少価値があるでな。巨大なだけに皮も肉も大量に採れるしの、牙は彫刻を施せば美術品としての人気も高いんじゃ」

ああ、あのヘビの牙。

一本一本が柱みたいなごんぶとのサイズだったもんな。

確かに、あれを使えば立派な彫刻像ができそうだ。

そういう使い方もあるのか…

ちなみに、肉は美味いのかと聞いてみたら、食えないことはないけど臭みがあってあんまり美味くはないという。

魔素は豊富に含んでるから、有機肥料にするのにいいんだってさ。

美味いなら少しもらって食ってみたかったのに。残念。




さてどーしよう?

ギルマスのところを辞して、俺はエドと相談した。

昨日の分と合わせて、すごい量の金貨を手に入れられた。

「数えてみたら、一袋に百枚入ってたよ」

ってことは、全部で千枚か。

…実は俺、貴族として育って、あんまりこの世界の平均的な物価には詳しくねーんだよな。

これ、いくらくらいになるんだろ?

「前世の感覚でいうとおおよそ一億円くらいじゃないかな?」

いちおくえんっ!?

「贅沢しなければもう一生働かずに遊んで暮らせる金額だよ」

なんか計算おかしくね!?

モンスター一匹倒しただけでそんなに稼げちまったら、誰も地道に働こうとなんてしなくなるだろ!?

経済崩壊するんじゃねーの!?

「…たぶん僕たち、特殊な例だと思うから。アルは本当にもう少し自覚した方がいいよ?」

う〜んっ???




ひとまず、当面の旅の資金の心配は一切なくなったな。

…出奔する前、ちまちま小遣い貯めてた努力を思い出すと、若干遠い目になっちまう俺だが。

ま、まあ金はないよりあった方がいい。

かさばって荷物になるから、すぐ使いそうな分だけサイフに入れて、大部分はエドの次元収納に入れておいてもらうことにした。

「いいけど……これ、僕がひとりで持ち逃げしようと思ったら、簡単だよ?」

おまえはそんなことする奴じゃないって知ってるから問題ない。

「アル…♡」

そもそも、俺と一緒にいたくて出奔してきたアホだもんなおまえ。

「僕はいつだって愛に忠実に行動するよ♡」

だから何も心配してない。

普通の冒険者は、こーゆー財産をどう管理してんのかなって気になるけど。

「大きな町には銀行があるから、金庫を借りて保管するみたいだよ」

おおっ、異世界にもあったんだな。銀行。

そのうち持ち運ぶのがヤバい量になったら、俺たちも考えてみるか。




ところで。

唐突なんだが、俺にはひとつの野望があった。

冒険者になった暁には、ゼヒとも一回はやっときたい!って野望が。

クエストこなして、日銭を稼いで。

それをその日のうちにパーっと使い果たして、無一文になる!ってやつ。

あれだよ、宵越しの金は持たねぇ主義だ!っての。

前世の時代劇でそーいうの見たことあってさ。

なんかカッコよくて憧れたんだよな!

だけど…

「金貨千枚をパーっと使い切るのは現実的に不可能でしょ。首都あたりの土地付き豪邸でも買うんなら別だけど」

だよなぁ〜!?

あと土地付き豪邸なんか買ってもしゃーないから、却下だ。

パーッと使う、ってのは、そーいう高額の買い物をするのとはニュアンスが違うんだよ。

「まあね。酒場で景気よくみんなにおごってパーッと、ってイメージでしょ。アルがやりたいのは」

そう!それ!

楽しそーだし、いかにもアウトローって感じでさ!

もちろん毎回そんなことしちゃダメだってのも分かってるけど、一回くらい!

冒険者になった記念に!

「…別にいいよ」

えっ、本当!?

おまえ、そーいうノリはあんまり好きじゃないと思ってたけど。

「うん、無計画で野放図なのは本来は良くないと思ってる」

じゃあ…?

「正直、一回のモンスター討伐でこれだけ稼げちゃね……アルじゃないけど金銭感覚おかしくなりそうだし、少しは放出してまわりにも還元して、経済を循環させた方がいいと思うから」

やったー!

おまえの言ってる小難しいことはなんだかよく分からねーけど、とにかくいいってことだよな!

じゃあ早速!

酒場に繰り出そーぜっ!

「まだ昼前だけど…!?」

ラージラージャナーガの事後処理してた人たちは、徹夜作業で今帰ってきたらしいじゃん。

たぶん打ち上げしてる連中もいるはずだ!

そこに混ぜてもらおーぜ!




ってワケで。

やって来たぜ、ギルドに併設されてる酒場!

こんな早い時間だったけど、結構大勢の客がいた。

いつもこうではないという。

やっぱ徹夜明けの打ち上げで、今日は特別なんだってさ。

俺たちが入っていくと、気付いて向こうから声を掛けてくれる人たちが。

「おーっ!お手柄の新人パーティじゃねーの!」

「おまえらのおかげで助かったぜ!」

「あんなでっかいの討伐するのは大変だったろ?よく休めたか?」

このグループは……事後処理に当たってくれた討伐部隊の人たちか。

テーブル席がまだ空いてたので、俺とエドもそこに加わる。

他のテーブルのみんなもジョッキ片手にワイワイと寄ってきた。

店員さんに適当に注文して、飲み食いしながら色々と話した。

やっぱ話題は、ラージラージャナーガをどうやって倒したのか、ってことに集中してたな。

俺たちの方からも、先輩冒険者にいろんなことを教わることができて、ためになったぜ。

「あーあ、討伐の成功報酬すごかったんだろ?ちょっとは俺たちにも分けて欲しいよなぁ〜!」

しゃべってたうちの一人が、そんなことを言い出した。

目が半分トロンとしてる。…酔ってるな、この人。

近くにいた仲間にどつかれていた。

「バッカやろ、なに僻みっぽいこと言ってやがんだ!」

「こいつらのおかげで俺たちラージラージャナーガなんかと戦わずに済んだんだぞ!?」

「解体だってそこそこもらえたんだから、全然いいじゃない!」

なお、解体の報酬をそれとなく聞いてみると、薬草採取とたいして変わらなかった。

特に危険もない仕事は低賃金の傾向があるという。

うーん、でもなぁ…

この人たちだって討伐部隊に参加してたんだから、本来ならラージラージャナーガと戦って、かなりの報酬がもらえたはずだ。

大怪我を負ったり死んだりする可能性もあったから、戦わずに済んでよかったんだって?

そうは言っても、徹夜の事後処理の報酬がしょぼかったら、なんか微妙な気分にはなるよな。

よし!

最初から決めてたことだったが、切り出すにはちょうどいいタイミングだ。

みんな、ここの払いは全部俺たちで持つよ。

好きなだけ飲んで食ってくれ!

「えっ…!?いいのか!?」

「こいつの言ったことなんて気にしなくていいんだぞ!?」

そーいうんじゃなくて。

俺たちが、出したいんだよ。

仕留め方が雑だったせいで、事後処理も時間掛かって大変だったんだろうし。

討伐したのは俺たちだけど、みんなで協力してあのでっかいヘビを片付けたんだ。

少しくらい、出させてくれよ。

「そ……そっか?そこまで言うなら…」

あといっぺん、こーいう大盤振る舞いしてカッコつけてみたかった!

「自分でそれ言っちゃう?」

「おいおい、若いやつは後先考えねーなぁ!」

「だが気に入った!いい気風だぜ!」

「そーいうことなら、俺たちも遠慮しねーぞっ!」

おうっ!

じゃんじゃん注文してくれ!


そこからは、すっげー大宴会みたいになった。

宣言しただけあって、みんな飲むわ食うわ歌うわ踊るわの大騒ぎ。

徹夜明けなのに元気だなーっていっそ感心しちゃったぜ。

みんな笑顔で、賑やかで、楽しかったな。

俺も途中からちょっと酔ってて記憶がふわふわして曖昧になってるけど。

誰かと肩組んで乾杯したり、宴会の空気を満喫した。


で、翌日。

気付いたら宿のベッドの中にいた。

昨日どうやって帰ってきたのか覚えてねえ…

うっ!?

あ、頭めっちゃ痛い!?

カチ割れるみたいに痛いガンガンする!?

これって、まさかの…!?

「まさかもなにも、完全に二日酔いだよね」

先に起きてたエドがとっくに身支度を整えた格好で、呆れてた。

「アルってば、顔真っ赤でべろんべろんだったよ?」

マジか〜…

それも覚えてねえ…

「急性アルコール中毒とか怖いんだから。少しは自重しなよね」

ハイ…

反省します…

それはそれとして、頭がっ…!

うぷっ、なんか腹の奥もムカムカする…?

これが吐き気ってやつか!?

俺、どんなに食ってもリバースしたことなかったから分からねえけど…!?

「健康優良児も困ったもんだよね。しょうがないなぁ……リカバー」

あ…

エドのかざした手の平から、あったかい光が溢れて…

うわ、じんわり気持ちいい〜!

………。

頭痛いの治った!

吐き気もしなくなってる!

「解毒魔法だよ」

そっか!ありがと……

…って。

えっ?

解毒…!??

「アルコールだって広義の意味では毒の一種だよ。人体に有害なんだから」

そ、そっか…確かに!

そう言われると、急に酒を飲むのが怖くなってくるな。

思えば、前世じゃ20歳前に死んじまったから、酒を飲んだことなんて一度もなかった。

この世界じゃ成人の18歳で飲酒もオッケーになるけど、俺はついこないだ成人を迎えて酒の味も覚え始めたばかり。

経験値が全然足りなくて、どれくらいが自分の適量か、まだよく分かってなかったんだな…

今度から気をつけよ。

「そこで禁酒しようとはならないんだね…」

だって俺、冒険者だし。

冒険者はクエストこなした後は飲んで騒ぐだろ?

「その偏ったイメージどこから来てるのさ?」

あ、でも。

おまえがやめとけって言うなら、しばらくは控えることにするよ。

覚えてねーけど、たぶん迷惑掛けたんだろ?

「うん、まあ、僕がアルを宿まで運んであげたりしたけど……………別に、いいよ?」

いいのか?

「あんまりだらしないのはどうかと思うけど、頼られるのは嬉しいからね……」

そうか…

………。

なんか、妙だな。

エド、優しすぎやしないか?

おまえってこーいうことには割と厳しいはずだろ?

「うん。僕が一緒にいないところでは、アルは絶対お酒飲んじゃダメ。許さない」

うぐっ!?

目の届く範囲でだけ大目に見るってことか。

逆に言えば、俺一人だとまたやらかすって思われてる。

ビタイチ信用ねえのな…

でも、しょうがない。

分かったよ。

この件は、明らかに俺が悪いからな。

おまえの言う通りにするよ。

つっても、パーティ組んでるんだし、おまえと別行動なんてそうそうなさそうだけどな。

「もちろん。絶対に離れないよ♡」

…まあ心強い、ってことにしとく。

ところで、昨日の支払いはどーしたんだっけ?

「僕がまとめて払っておいたよ。金貨6枚でお釣りがきた」

ありがとな。

しかし、分かってたけどやっぱ無理だったなー。

宵越しの金は持たねぇ主義さ!っての。

全然使い切れてないでやんの。

「また気が向いたら大盤振る舞いでもすればいいんじゃない?」

え。

いいのか?

「まあ、ね。僕も楽しくなかったわけじゃないし……」

そうか!

おまえも冒険者気質ってのが分かってきたんだな!

「……………うん、まあ、そんな感じ」

よーし、よし!

じゃあまた、機会があったら楽しく騒ごうな!




浮かれる俺は、気付かなかった。

エドが、若干目を逸らしつつ頬を染めていたことに。






***


「ちょっとアル!そんな連中と肩なんか組んでー!?」

「んー?なんだよエド?」

「僕というものがありながら…!!!」

「じゃあおまえとならいーよな!」


ガバッ!


「えっ……あ、アル!?」

「わははー!楽しーな、エド!」

「あ、あああっ…♡」

「おー、なんだよおまえらベッタリくっついて」

「もしかしてデキてんのかぁ?」

「んん〜?エドは大事な相棒だぜー!」

「っ…♡♡♡」

「お熱いねー!ヒューヒュー!」

「おいおい美青年、顔真っ赤じゃん」

「新人パーティそっちの意味でも初々しいなー」

「俺たちずーっと一緒だぜ!なーエド!」

「あ、アルぅ…♡」


ギューッ!!!


「見せつけてくれるなぁ」

「これが若さってやつか…」

「おまえら、せいぜい仲良くな!」

「うん!」

「………(幸せの飽和状態で昇天)」


***






昨日、酔った勢いでそんなことをしでかしてたなんて。

俺の記憶からは完全に吹っ飛んでいたのだった。




さて。

二日酔いも治してもらったし、身支度も済んだ。

出発するとするか。

「次はどこに行く?」

うーん。

昨日、先輩冒険者にダンジョンの情報を聞いただろ?

そこに行ってみたい気はするんだけど…

「何か迷ってるの?」

うん。

一番近場のダンジョンは、レイクヒル共和国からさらに隣の国だっていうじゃん。

サウザンド王国から離れちまう。

ここはまだ国境沿いで距離も近いから、今のうちに母上のお墓参りに行っときたいなって。

おまえも付き合わせちまうことになるけど。

「いいよ。行こう」

本当か?

冒険者ギルドもないような辺境の田舎領地の片隅だ。

完全にただの寄り道になるぞ?

「元々あてのない旅なんだし。別にいいじゃない。それに、他ならないアルのお義母様のお墓参りなんだから」

…ありがとな。




こうして次の行き先が決定した。

俺の生まれた、その地へと向かう。


長く一緒にいすぎたせいで無意識下で距離感をバグらせてたやつ。

と、それに味をしめたやつ。

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