初クエストに挑戦!2
こうして、巨大ヘビの処理がつつがなく終わった。
けど、
「どーしよっか。こんなでっけーの…」
「僕の次元収納に入れて持っていくことはできるけど……輪切りの一個だけでも、町中で取り出せるサイズじゃないよね…」
まだ問題は残ってた。
草原にまるっと転がっている、ラージラジャナーガの死体。
輪切りにした断面から大量の血も溢れ出てて、草原が真っ赤に染まっちまってる。
…なんか、結局あんまり被害を防げた感じがしないな。
冒険者ギルドに報告しに行くべきだろうけど、これを放置して行くのはなぁ…
ワイバーンから降りて、俺たちが顔つき合わせて困っていたら、
「おおーい!大丈夫かぁー!」
遠くから、声が。
大勢の足音も。
町の方から、一個師団くらいの規模の人々がこっちに駆け足で向かってきてた。
冒険者や駐屯の兵士たち……戦う力を持ったムキムキの団体さんだ。なんか決死の形相をしてる。
やがて俺たちのところまでやってきた。
話を聞いてみると、ラージラージャナーガ出現の凶報を受けて結成された討伐部隊だった。
既に俺たちが倒した後だと知って、唖然とした表情になっていた。
「まさか……たった二人の駆け出しパーティで討伐しちまうとは!?」
「それもこんな短時間で…」
「俺たち、あんたらが薬草採取でここに来てるって知ってたから、犠牲になってやしないかと心配してたんだぜ!?」
ラージラージャナーガはSランクのモンスター。
普通だったらDランクの冒険者が敵うはずがない。
巨体ゆえにエンカウントしてしまったら逃げ切ることも難しいので、すっかり心配を掛けちまってたみたいだ。
急遽編成したこの討伐部隊の規模でも、全員が無事では済まない。半数以上の犠牲を払って、どうにか倒せるかどうかってことで、みんな覚悟してここに来たという。
それが、蓋を開けてみれば既にこの通りのぶつ切りで。
安堵したと同時に気が抜けて、へなへなとその場にへたり込んでる人までいた。
「ともかく助かった。町に接近される前に必ず討伐せにゃならん第一級厄災指定モンスターだったからな」
「後の処理はこっちに任せて、あんたらはギルドに報告に行ってくれ」
ということで、俺とエドはみんなに後を託して一足先に町へと帰還した。
冒険者ギルドに報告すると、お祭りみたいな騒ぎになった。
ひとつは、安否の危ぶまれていた俺たちが無事だったこと。
もうひとつは、ラージラージャナーガが討伐されて町の安全が確保できたことへの歓喜で沸き返ってた。
老齢のギルドマスターに、どうやって討伐したかの具体的な報告も済ませると、
「おまえさんらは、このままにはしておけんなぁ。ラージラージャナーガを倒せる実力者じゃ、もうCランクでよかろうて」
「え”っ!?もう!?」
ついこないだ冒険者登録して、しかも即日ランクアップしたばっかなのに。
Cランクは嬉しい……と思うんだけど、簡単にランクが上がりすぎて、正直あんまりありがたみがないっつーか…
ギルマスはおかしそうに肩を揺すって笑ってた。
「Sランクモンスターを無傷で討伐できるんじゃから、本来はもっと上位ランクでもいいくらいなんじゃよ。実力のある者には、上位モンスターの討伐依頼もどしどし受けて欲しいからのぉ」
…そう言われると、確かに。
あんまり弱いモンスターの討伐依頼は、相手が逃げちまうから実質受けられねーし。
そういう意味じゃ、とっととランクを上げとくに越したことはないのか。
俺たちはありがたくCランクの冒険者カードを受け取った。
「とはいえCランクまでじゃったら、割と誰でも頑張ればいけるんじゃよ。そこからBランクに上がるまでに、壁があるでな」
Bランク以上となると単純な強さだけじゃなく、冒険者ギルドへの貢献度とか、達成したクエストの質や数、人格なんかも考慮されるそうな。
「ま、それもおまえさんらなら大丈夫だと思うがの。精進せえよ、若人たち!」
それから、ラージラージャナーガの討伐報酬ってことで、袋3つ分くらいの金貨をもらった。
…すっげー大金。
貴族だった時より、よっぽど大金持ちだ。
いや総資産とかだったらフュリューリンゲン家の方がずっと上だとは思うけど。
自由に使っていいお小遣いって考えたらさ…
冒険者ってめちゃ儲かるんだな。
ちょっと強いモンスター一匹倒すだけで一攫千金でウハウハじゃねーか。
「…それ、一般的には当てはまらないだろうからあんまり言わない方がいいと思うよ?」
エドには呆れた顔をされた。
ギルマスはまた肩を揺すって笑ってた。
…ん?
俺、そんな変なこと言ったかな?
「ところで、おまえさんらはパーティ名はどうするのかね?」
ギルマスに尋ねられて、俺とエドは互いの顔を見合わせた。
そんなの全然考えてなかったぜ。
つーか必要か?
「必須ではないがの。Cランク以上の冒険者であれば、大抵はパーティ登録もしとるぞい。パーティとしてのランクも考慮されて受注できる依頼の幅が広がるからの」
そっか。
なら、登録しといた方がいいな。邪魔になるもんでもなし。
ただ、俺、こーゆーの考えるの苦手なんだよな。
「どうしよっか、エド?なんかいい名前あるか?」
エドの方が得意だと思って話を振ってみたら、
「僕とアルとのパーティなんだから、ラブラブラバーズ♡とか?」
「却下」
「じゃあスウィートハートパートナーズ♡とか?」
「却下」
「だったらディスティニーベイブ♡」
「却下!…って、おまえ分かってて言ってるだろ!?」
ダメだー!?
こいつ、思考があっち方面に逸れてて全然まともな案を出してこねえ!
「ちぇっ。じゃあもうアルが考えてよ」
「俺が!?」
ま、まあそーなるか…
でも本当に苦手なんだよな…
もういっそ前世で聞いたことのあるバディ名とかで…
「おまえ色白でウサギっぽいし、タイガーアンドバ」
「ダメだよ」
「二人はプリキュ」
「もっとダメ!ってゆーか、それは僕たちとはなんか違くない!?」
俺たちは散々にモメた。
結局、パーティ名は捻りなく「アル&エド」で登録することにした。
もうセンスとかどーでもいい。分かりやすけりゃそれで。
エドも何故か賛成したし…
「そりゃそうだよ、このパーティ名だったら僕とアルの他に誰も入ってこれないでしょ。ず〜〜〜っと僕たち二人だけのパーティだよ。ねっ♡」
………。
し、
しまったぁぁぁぁぁッ!??
すぐには難しいだろーけど、そのうち可愛い女の子とか仲間に欲しいな……ってちょっと考えてたのに!?
「ほいほい、やっと決まったかね。…アル&エドで登録、と。ほい、これで完了じゃよ」
あああっ!?
ずっと待ちかねてたギルマスがすっげー素早く登録を!?
「これで僕たち二人だけの鉄壁パーティだ♡なんて素敵なんだろうね、アル♡」
エドはニッコニコでご満悦。
これ、とてもじゃないがもう覆せないよな…
トホホ。
そんなわけで、俺たちの初クエストは終わった。
…薬草採取依頼のことだけどな。
なんかラージラージャナーガ討伐にほとんど持ってかれたけど。
ちゃんと達成報告したんだぜ。
依頼報酬は、銀貨15枚だった。
うん…
ラージラージャナーガ討伐の報酬と比較しちまうと、なんだかなぁ…って気分にはなる。
せっかく俺も薬草見分けられるように覚えたのに、もうこの依頼は受注することないかもな。
しかし、話はまだ終わらない。
その日の泊まり先の宿屋で、エドと二人きりになって。
「約束だよね、アル♡」
…そーなんだよな。
俺、咄嗟に「後でハグくらいさせてやる」って言っちまったから。
エドのやつもちゃっかり覚えてやがった。
ドサマギで忘れててくれねーかなって少し期待したけど、甘かった。
こいつが、俺とのこーゆー約束を忘れてくれるわけねーんだよな。
…ええい!
俺も男だ!
二言はないぜ!
よっしゃ、来い!
「アルぅ♡」
うわ〜…
俺が両腕を広げて迎え入れるポーズを取ったら、速攻でがばちょと抱きついてきやがった。
すごい密着感。
あとハグしてる両腕の力が半端ねえ…
当分離れてくれそうにないな…
「ああああ嬉しいよアルの方から僕を受け入れてくれるなんてぇ♡幸せぇ♡」
なんかまたハァハァしてやがるし…
………。
まーいいか。
ぶっちゃけ、俺も本当はそこまで嫌じゃない。
こいつに下心があることはもう知ってるけど、ずっと一緒だったし、段々慣れてきたっつーか。
断じてホモを受け入れたりはしないが、友達としてこれくらいなら別にいーかな、とは思う。
前世ではしょっちゅうハグされてたしな。
こいつにひっつかれるの、そんなに違和感ないんだよ。
今回は俺の方から言い出したことだし。
俺は開き直って、エドの背中をポンポンとしてやった。
ついでに、片手で頭もわしゃわしゃ撫でてやる。
「っ………♡♡♡」
あー、こいつの髪、サラサラだな。
手触りいいや。
密着したところから伝わってくる鼓動の音も、心地いいなー。
…とか適当なことをボンヤリ考えながら、ハグを続けることしばし。
ブッ
いきなり変な音がした。
驚いてエドの様子を見ると、目をハートマークにしてのぼせてて……鼻血噴いてるー!?
「し、幸せ死するぅ…♡」
そのままガクッと気絶しやがった。
って、オイ!?
しょーがないので、意識を失ったエドをベッドに寝かせてやって、鼻血も拭き取ってやったけど、それでもまだ目を覚まさねえ。
これ、もう朝までこのままなんじゃ…?
………。
俺は思った。
こいつ、やたらとモーションかけてくるけど。
実は口ほどにもなくね?
案外、エドとの二人旅も危険はないのかもしれない。
気絶したまま睡眠モードに移ったのかスヨスヨと幸せそうな寝息を立て始めたエドに、そっと布団を掛けてやりながら、そんなふうに安心する俺だった。
却下されたバディ名
たろーちゃんが前世で見ていたアニメと、たろーちゃんの親戚の女の子が見ていたアニメから




