最愛のハニーと死に別れてしまったけど異世界転生して再会できたのでバラ色の人生♡
練習用の模擬刀を手に、真っ向から向き合っている。
模擬刀とはいえ、食らえば結構痛い。
そのためか、相手から向けられてくる真っ直ぐな眼差しは真剣そのもの。
でも、僕はそんな彼と表面上キリッとした顔で対峙しながら、
(ああああああ可愛い可愛い可愛いぃぃぃぃ〜〜〜〜!!!アルからの熱い眼差しデリシャス!ディモールトベネっ!どーせならベッドの中でこんなふうに向き合いたいなぁぁぁぁぁッッ!!!)
内心では荒ぶっていた。
だって、しょうがないじゃない!?
前世からの最愛のハニーとこんなにも熱く!激しく!交わってるんだもん!
(*あくまで剣術の訓練で)
興奮するなって方が無理だよねっ!?
僕、この国の第一王子。
名前はエドワード・デ・ラ・ウル・サウザンド。
親しい人はエドって呼んでくれるよ。
だけど実は、僕にはもう一つ名前がある。
前世での名前が。
この異世界に転生する前。18年間生きたその世界では、佐々木晃太郎という名だった。
愛しのハニーと出会ったのも前世でだ。
詳細は省くけど、そのハニーと一緒にトラックに跳ねられて18歳で死んじゃって。
…若くて死んだこと自体よりも、ハニーと死に別れちゃったことが本当にショックだった。
せっかく本懐を遂げたばかりだったってのに!
いきなり事に及んだことをたろーちゃんは激怒してたけど、なんやかんや上手いこと言い包め………もとい、きちんと口説いて、正式に恋人になるつもりでいたんだ。
なのに、その矢先に死別とか…!
転生したこの異世界で前世の自我が目覚めたのは、三歳くらいの頃だったかな?
もうね、あまりの絶望感に速攻でまた死にたくなったよね。
王家に生まれて王子様として蝶よ花よとチヤホヤ育てられて魔法や武術の才能や容姿にも恵まれて至れり尽くせりの環境だったけど。
最愛の彼がいない。
それだけで目の前が真っ暗さ。
たろーちゃんはカッコよくて可愛くて強くて純粋で真っ直ぐで、僕にとっては生きていくのに欠かせない太陽みたいな人なんだ!
太陽の昇らない世界でなんて、どうやって生きていけばいいんだよ…!
そう思って、やさぐれていた時期もありました。
しかし!
神は僕を見捨てなかった!
ううん、違うよね!
たろーちゃんが僕を見捨てなかったんだよね!
再会してすぐすっごいしかめっ面で「二度と会いたくなかった」とかって言われたけど!
大丈夫!分かってる!
たろーちゃんはちょっと意地っ張りでツンデレなところもあるからね!
本当は僕のこと想っててくれてるって、知ってるよ!
その証拠に死んで異世界転生しても巡り会えたわけだし!
こんなのもう二人の運命でしかないよ!
愛し合う二人のラブ☆ウェーブが起こした奇跡だよね!やったあ!
そんなわけで、たろーちゃんと再会できてからはバラ色の人生です。
太陽がまた昇り、世界は色を取り戻したよ!
たろーちゃん……この世界ではアルバートって名前だからアルって愛称で呼んでるけど……彼とは、ひとまず親友ポジに落ち着いた。
このへんは前世と同じだね。僕たち、幼馴染の親友だったから。
今世では身分制度があるから完全に対等ってわけにはいかないのがもどかしいけど、それすらも逆手に取ってアルとの距離をぐんぐん縮めていく所存だよ!
国王である父上におねだりして、共に学ぶ御学友ってことにしてもらった。
まずは一緒に過ごせる時間をなるべく多く確保しないとだからね!
ってゆーか、傍にいてくれないと僕がアル不足で死にそう!
アルは平たい目で「そのまま死ねばいいのに…」とかって言うけど!
もう!ツンデレの照れ屋さんなんだから!
そんなところも可愛くて大好きさ!
とゆーわけで、お城の訓練場で訓練ナウだよ。
これも御学友としての勉学の一環ってわけ。
前世でもそうだったけど、アルは体を動かすのが好きみたい。
座学ではしょっちゅう居眠りしてるけどね!
剣術の訓練となったら、こんなに真剣な目で集中して!
僕のことを熱く見詰めて!
あっ、なんか興奮のあまり鼻血が出そう…
ハァハァ!
…スパーンっ!
「一本!それまで!」
痛ぁ!?
アルの模擬刀がモロに僕の脳天に決まった。
これでも僕は王子としてかなり鍛えてる。
剣術にも自信があった。
でも、アルも同じくらい強いみたいだ。
油断してたらすぐ負けちゃった。
うーん。ちょっと悔しい…
ああ、でも、勝ち誇るアルは可愛いなぁ!
「見たか!」
って、得意げに!
ニカッとした明るい笑顔は前世の時と変わらない。
どこまでも純粋で、真っ直ぐで。
やっぱり大好き!
SU☆KI!!!
負けてしまったことも忘れてぼうっと見惚れていると、
「今の動きはよかったな」
「あっ、先生!ありがとうございます!」
…お邪魔虫が入りやがった!
いや剣術指南役の先生なんだけどさ!?
アルを見る目つきが、なんか、こう…いやらしいんだよ!
アルは鈍いから全然気付いてないけど!
僕には分かる!
今も、剣術の型の指導をする態で、手取り足取りレクチャーしてるけど!
どう考えても不必要なボディタッチが多すぎる!
ってゆーか、僕のアルに!
触るなぁぁぁぁぁッッ!!?
「先生、私にもアドバイスをいただけませんか?」
僕、怒りを押し殺しつつ二人の間に割って入る。
…遠回しに邪魔をするだけなのは、こんな輩の薄汚い下心なんてアルに知られるのも嫌だったからだ。
剣術の腕は確かな奴なので、アルは尊敬して信頼してるみたいなんだもん。
本当はそんな価値なんてないのに!
こいつの本性を知ってしまったら、アルはきっとショックを受けるに違いない。
なので、僕は無理してニコニコしながらも額には青筋を浮かべて、アルとの間を遮るようにして先生の前に立ったんだけど、
「…王子殿下は、まずもっと集中することですな。剣を構えて邪念が多すぎます」
って、厭味ったらしくぬかしやがった!
「…一体何を考えて相手と向き合っているのやら」
おまえが言うなぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!?
指南役なのをいいことにアルにベタベタしやがって!
見るな触るなアルが穢れる!
ああ、なのに…!
「そーだぞ、エド。おまえ、さっき、なんか変なこと考えてただろ」
アルまでそんなことを!
そりゃ、アルに夢中になって勝負をおろそかにしたけど!?
こんな輩に同意しないで…!?
「そんなんじゃ、一生俺には勝てないぜ」
あっ、笑ってくれた!
呆れ気味の苦笑だったけど!全然構わないよ!
アルはやっぱり可愛い…♡
「まったくです。王子殿下はアルバート様と打ち合うのに相応しくないと言わざるを得ません」
おまえは黙れ!腐れ指南役!
だけど教えを請う生徒という立場じゃ、いくら僕が王子とはいえそこまで強くも出れない…!
くっ…!
思えば、前世からそうだったんだよ!
先輩とか後輩とか部活のコーチとか近所のお兄さんとか!
その他にも色々、もろもろ!
たろーちゃんてば、無自覚にいろんな輩を惹きつけちゃって!
僕が隠れてセコムしてなけりゃ、あっという間に餌食にされちゃってたよ!?
魅力的すぎるのも考えものだよたろーちゃん!?って何度思ったことか!
…今世でも、同じみたいだ。
またこんな碌でもない輩を惹き寄せちゃって!
転生して外見が変わっても、魅力的な中身は変わってないから、ある意味で当然だけどさぁ!?
僕が守ってあげないと…!
将来の伴侶としてっ!
キリッ!
『おまえが一番厄介な同じ穴のムジナだろ…』って脳内のイマジナリーたろーちゃんが冷たくツッコんでくるけど、気にしない!
まずはこの剣術指南役をなるべく早いうちにどうにかしないとな…!
てなことがあって、数日後。
また訓練の時間がやってきた。
所用があって少し遅れてしまい、僕は急いで訓練所へと走って向かっていた。
アルはもうとっくに来ているはずだ。
あの腐れ指南役と二人きりなんて、冗談じゃない。
嫌な予感がする…!
愛しのハニーに関する僕の勘はすごくよく当たるんだ。
これもまた愛の為せる業だよね!
って、そんなこと言ってる場合じゃない!
訓練場に辿り着いてみたら、案の定!
壁際のところで腐れ指南役がアルに覆い被さるようにして…!?
か…
壁ドンだとぉぉぉぉぉぉぉッッ!!?
僕もまだしたことないのに!
ズルい!
じゃなかった、許せるものかこんなの!
僕もアルもまだ未成年なんだぞ!
腐れ指南役、おまえ、いい年こいた大人でしかも身分も下のくせに…!
アルになんてことをぉぉぉぉぉぉッ!!!
二人のいるところまではまだ距離があったので、走ってもヘルプが間に合わないかもしれない。
だけど、僕には魔法がある!
足を猛ダッシュで動かしながら、手に集中した魔力を放って腐れ指南役に天誅を下そうとした。
でも、その時、
「俺に触んじゃねえぇぇぇぇぇッッ!!!」
「ぐぉえぶっ!!?」
ああっ!
アルが!
腐れ指南役をグーパンでぶっ飛ばして!?
僕もアルもまだ背が伸び切っていないから、大人とはどうしても身長差がある。
だからアルのパンチは下方からアッパー気味に炸裂して、腐れ指南役をほぼ真上へと跳ね飛ばしていた。
しかし、それで終わりじゃない!
怒りに瞳を燃え上がらせたアルは、さらに追撃を加えていく!
パンチ!パンチパンチ!猛ラッシュパンチ!!!
息つく暇もないくらいの連打猛攻に、腐れ指南役の体は宙に浮いたまま落ちてこない!?
パンチの衝撃でずっと空中に浮いたままだよ!?
空中で何十、何百コンボという拳を叩き込んで…!
「終わりだ!ホモ滅殺・昇天波ァァッ!!!」
トドメの一撃が決まったぁぁぁぁぁッ!!!
…何その技名!?
アルの最後のアッパーカットが腐れ指南役の顎にヒット!
奴は無様に身を仰け反らせて高く高く跳ね飛んでいき、錐揉みしながら地面へと墜落していった。
ドシャッ…!
地面に伸びた腐れ指南役、起き上がってこない!
完全に気絶してる!
す…凄いよアル!
いつの間にそんなに強くなったの!?
結局放つ機会もなく済んだので僕は魔力を霧散させて、急ぎアルの元へと駆け寄った。
「大丈夫、アル!?」
「ああ……ったく、この先生、とんでもねー奴だったぜ」
アルは少し顔を青褪めさせて引き攣っていた。
可哀想なアル!
信頼していた相手に薄汚い欲望の対象にされて、傷付いてしまったね!?
自分で自分の身を守って物理的には未遂だろうと、心に負ったダメージはゼロにはならないよね!?
なんて痛ましいんだ…!
僕が全力で抱き締めて慰めてあげるっ!!!
「いやおまえが言うなし。つーかドサマギでひっつこうとすんじゃねえ!」
ベキッ!と。
僕のほっぺに衝撃が走り、目の前にチカチカと星が飛び散った。
ああ…!
これもアルが魅力的で眩しすぎるからだね…!
僕の意識はそこで一旦フェードアウトした。
ガクッ…!
まあ気絶したのは一瞬だけで、すぐに覚醒したけど。
自分で自分に回復魔法をかけて、完全復活。
ムクッと起き上がると、アルに鋭く舌打ちされた。
「ほんっと、おまえはしぶといよな……今も昔も」
わぁい、アルに褒められた!
「褒めてねーよ」
わ、心読まれた!?
これが以心伝心…ってやつ!?
僕とアルとはもはや魂で繋がってるからそんなこともできちゃうんだね!
「ちげーし……いやもういーや。ツッコんでたらきりがねえ」
アルは溜息をついて、まだ地面に伸びてる腐れ指南役をブーツのつま先でつつく仕草をした。
「こいつ、どーしよ?絶対に俺の正当防衛だったけど、一応は王様に雇われた偉い人なんだよな?キモいから容赦なくボコっちまったけど…」
「安心して、アルはちっとも悪くなかったって僕も証言するから」
「そっか、助かる」
そもそも貴族のアルに手出ししようとした時点でギルティだ。
アルって信頼した相手には人懐っこいから、いける!とかって勘違いしたんだろうけど。
はっ!(嘲笑)
おこがましいにも程があるよ!
アルの運命は僕だけ!
愛される資格があるのも僕だけなのさ!
おまえなんかアルに見向きもされるもんか!ふふんっ!
「……何考えてんのかあえて聞かねーけど。また碌でもないこと考えてるだろ」
「えっ、やだなぁ。そんなことないよー」
「どうだか…」
「それより、さっきのアルは凄かったね!いつの間にあんなに強くなってたの?」
曲がりなりにも剣術指南役を素手で一方的にボコれるって相当だ。
いかがわしいことしようとしてた相手が油断してた分を差し引いても、並大抵の腕前じゃない。
「死活問題だからな。いざという時のために、俺はもっと強くならなけりゃいけねえんだ」
?
『いざという時』の意味がよく分からない。
でも、アルは密かに努力して頑張ってたってことだね!
凄いや!
僕も見習わなくちゃ!
今回は遅れを取ってしまったけれど、金輪際アルをあんな危険で穢らわしい目に遭わせないように、全力でセコムしないとね!
なんだか……アルの目が真っ直ぐ射抜くように油断なく僕を睨んでる気がするけどっ!
熱烈な愛を込めた眼差しだよね!
大丈夫、僕は分かってるよ!
アルの本当の気・持・ち!
「…絶対また都合のいい解釈して暴走してるんだろーけど…もう俺ツッコむのにも疲れたから放置するぞ…」
転生して奇跡的に巡り会えた今世でも、ずっと、ず〜〜〜っと!一緒にいようね!
ずっと、ずっと…
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと…
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと…
あははは、世界はバラ色だなぁ!
「怖い」
二度と離れないし離さないよ、アル♡




