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転生してホモスパイラルから逃げられたと思ったら前世で俺の処女を奪ったクソ野郎とエンカウントしちまった件  作者: KP
第二章

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イフの世界

ifの世界


俺、アルバート・フォン・フュリューリンゲン。

サウザンド王国のすっごい片隅にある辺境領地の、地方貴族の一人息子。

当年取って18歳。

もう子供じゃない。成人だぜ!

清廉な統治をする父上の跡を継いで立派な領主になるべく、猛勉強中だ!

俺、頭はあんまり良くないけど。

腕っぷしには自信がある。

うちの領地は辺境ゆえにモンスター被害なんかも多い地域だが、俺に任せとけ!

どんな奴が出てきても、このグーパンでぶっ飛ばしてやるぜ!

書類仕事なんかは、専門職の代官とか事務員を雇えばなんとかなるし。

俺は、領民のみんなが幸せに暮らせるよう、正しい判断を心掛けてればそれでなんとかなるんじゃないかな。




…と、思ってたんだけど。




勉強を始めて、改めて気付いた。

うちの領地、めっちゃ貧しくね?

いやうちだけじゃないな。隣の領地も、そのまた隣も。

中央の王都にいる上級貴族以外、この国って全体的にめっちゃ貧しくて生活水準低いよーな…

「ついにおまえも気付いたか、アル…」

あ、父上。

俺の父上は身分こそあんまり高くない地方官僚の下級貴族だけど、俺と違ってすっごく頭が良い。

農地改革とか灌漑対策とか色々やってて、農業メインのうちの領地の収穫量は年々上がってきてる。幸い、ずっと天候に恵まれる年が続いたしな。

だからその分豊かになってなくちゃおかしいはずなのに、この現状は…

父上は疲れて面窶れした顔で、俺に説明してくれた。

この国の腐敗っぷりを。

なんでも、次期国王の王子様ってのがとんでもねー奴で、弱い層から搾取ばっかりしてるんだって。

うちの領地も、収益が上がってるのにそれ以上の税金を課せられてるせいで、一向に豊かになれない。それどころか、じりじり貧乏になっていく一方なんだとか。

また、そのやり口がいやらしくて。

完全に生活が成り立たなくなるレベルまで搾り取ったら、民衆だって黙っちゃいない。生きてくために暴動や革命が起きる。

そうならないギリギリのラインで、生かさず殺さず、搾取してるんだって…

な、なんて奴なんだ!?

そんなのが次の国王になったら、この国はどーなるんだよ!?

俺や父上や母上や、領民たちの暮らしは!?

「エドワード王太子殿下は、本来は英邁なお方だ。今はその秀でた能力を何故か民を苦しめることにばかり使っているが……いつか、目を覚ましてまともな統治をしてくださるさ…」

なんだよそれ!?

いつかって、いつだ!?

父上だってこんなに頑張ってるのに、そのクソ王子とやらが目を覚ますまでずっと報われないままなんて…

ふざけんな!

俺は絶対納得いかねー!

「…おまえなら、きっとそう言って義憤に駆られるだろうと思っていた。だから今まであえて教えなかったのだが…」

さしもの頭の悪い俺でも、自分で気付いた。

それくらい、今のこの国の状況が酷すぎるってことだ!

くっそー!

こうしちゃいられねえっ!

「あっ!?おいアル!?どこに行く!?」

王都だ!

そのクソ王子の目を覚まさせてやる!

俺のグーパン(物理)で!

「や、やめなさい!無謀すぎる!いくらおまえが強いといっても、王族は魔法だって使えるのだぞ!?」

んなもん気合でどーにかしてやる!

「第一そんなことしたら王族への反逆罪で死刑に………あ、アルーーーーーッ!!???」

行くぞ!

うおおおおおおおおおおッ!!!

俺は父上の制止の声を振り切って、田舎領地の屋敷を飛び出した。




駆け続けること、一昼夜。

辺境から王都まで。

すっごい距離はあったが、俺は体を動かすことだけは得意だからな!

もう辿り着いたぜ!

王都っていったら華々しいイメージがあった。

でも実際に見てみると、なんか煤けて淀んだ雰囲気だな…?

城下町の道を行く住民たちの表情にも、活気というか生気がない。

なんかあったのか?

…え?

特に何もないけど生活が苦しい?

王族や上級貴族ばっかり贅沢三昧しているせいで、重税を課せられる国民にしわ寄せが来てるんだって?

国の中心である王都でも、平民階級はこんな有り様なのか…

ますます許しちゃおけねーな!

いざっ!

王城に、殴り込みだぁぁぁぁぁッッ!!!




城にはもちろん兵士や騎士がたくさんいたが、俺にとっちゃものの数ではなかった。

それに、どいつもあんまりやる気なさそうだった。

形ばっかり剣を構えて向かってくるフリをしつつ、俺がちょっと睨みを利かせるとスゴスゴと引っ込んでった。

…そりゃそーだよな。

腐敗しきってる王族のために体を張って戦おうなんて気持ちにゃ、なれねーよな。

唯一、騎士団長って人だけガチで向かってきたが、俺の方が強かったし。

何合か剣を交えて、俺の目的がクソ王子をグーパンで殴ることだと知ったら、引いてくれた。

「無茶苦茶で無謀な若者だが……今のあの方には、貴様のような真っ直ぐな男の諫言が必要であろう…」

なんだかうちの父上と似たような疲れ切った目をしていて、騎士団長さんの気苦労が偲ばれた。

きっと、この人、忠臣なんだろうな。

まだこんな人が王城に残ってるのに、クソ王子って奴は本当になにしてやがんだか…!

俺は鼻息も荒く、玉座の間へと足を踏み入れた。




オラァっ!ここかクソ王子!!

大扉をドバーンと蹴り開けて、俺、参上!

そいつは、玉座に気だるげに腰掛けていた。

死んだ魚のよーな濁った目をしてやがる。

金髪碧眼のめっちゃ美形なのに、目が死んでるせいで台無しだ。

こいつモテねーな。俺は思った。

他に人の姿はない。

取り巻きの貴族連中とかはいるかと思ってたんだが、予想外っつーか拍子抜けだ。

まあ邪魔がないのは好都合か。

俺はまっしぐらにクソ王子に迫り、まずは一撃おみまいしてやろうとした。

とりあえずはグーパンだ。

文句を言うのはその後で!

ってことでそいつの胸ぐらを掴み上げて、もう一方の手で拳を振り上げたんだが、

「………たろーちゃ…?」

えっ?

俺はついギクッと動きを止めた。

聞き間違えか…?

まさかな…?

って思ったけど、まさかだった!

死んだ魚のよーだったクソ王子の瞳が急激に輝きを増して、俺の顔に釘付けに!?

その瞳の色には覚えがある!

正直、二度と思い出したくもない黒歴史だったが…!




実は俺、異世界転生者なんだ。

この世界に生まれる前は、別の世界で生きていた。

その世界ではずっと一緒だった幼馴染の親友がいて…

人生の最後で、裏切られた。

18歳の成人になったばかりの俺の…

じゅ、純潔を奪うって形で…

うううっ(号泣)




転生して人生リセットされて、もうすっかり忘却の彼方だったっつーに。

あのクソ幼馴染。

同じ世界に転生してやがったぁぁぁぁッ!?

しかもクソ王子としてだ!?

くっそ、マジざけんなよおまえ!?

前世でも、今世でも!

どんだけ俺を苦しめりゃ気が済むんだ!?

「たろーちゃん……本当にたろーちゃんだ!?嘘じゃないよね、幻とかじゃないよね!?ねえたろーちゃん!!」

うっせー!!!

いつまでも前世の名前で気安く呼んでんじゃねぇぇぇッ!!!

今の俺はアルバート・フォン・フュリューリンゲン!

クソ王子のおまえのせいで苦しみに喘いでる無辜の民のひとりだよ!

「う、ううううううっ……あ”いだがだっぁぁぁぁぁぁあ!!!だろーぢゃんんんんんっ!!!」

ギャー!?

耳元で泣き喚くなうっせー!

あとひっつくな!鼻水ついちゃうだろ!?

とにかく……離せぇぇぇぇぇぇッ!!?




「だって気付いたらこんな世界に生まれ変わっててたろーちゃんは傍にいないしもう絶望するしかなかったんだよ!圧政を敷いて全国民から負の感情を掻き集めてそれを元に瘴気溜まりを作って魔王化してこの世界を滅ぼしちゃえって考えたってしょうがなくない!?たろーちゃんのいない世界なんてなくなっちゃえばいいんだ!世界諸共僕も滅びて転生ガチャをやり直して今度こそたろーちゃんのいる世界に生まれ変わろうって……ああっでもたろーちゃんもこの世界に生きていたんだねなんて素晴らしいんだ今日は記念日だよ!思えば前世で18歳で死んで、今世で18歳で再会できたなんてやっぱり僕たちは真っ赤な糸のディスティニーで結ばれていたってことだよねやったあ!ああああたろーちゃんたろーちゃん好き好き大好き本当に逢いたかったぁぁぁぁぁ!!!」




………。

とんでもねー長文の戯言を真正面から浴びせられて。

俺は意識が遠のきかけた。

が、気絶してる場合じゃねーって!

ブルブルッと頭を振って。

とりあえず、俺から言えることはひとつ。

まずは一発殴らせろ!

話はそれからだっつってんだよ!!!

「あいたぁっ!?……えへへ、たろーちゃんに怒られちゃった…♡」

ああああああもう!?

かなり強めにぶん殴ってやったのに、嬉しそうにニコニコしてやがる!

まともな話が通じねー!?

大体おまえ、なんでこんな酷い奴になっちまったんだ!?

前世じゃ……俺に最後にした仕打ちはともかく、人当たりのいい優しい奴だったじゃねーか!

「だから今説明したじゃないか。たろーちゃんがいなくて絶望的だったから…」

俺っ!?

おまえ、俺がいないとそんなダメな奴なの!?

「ダメに決まってるよ!僕はたろーちゃんがいないと生きていけないし世界ごと滅びたくなる!」

お、おまえって奴はー!?

くっそ、しょうがねえ。

また一緒にいてやるから、しゃんとしろ!

「本当!?たろーちゃん!」

まずはおまえが無茶苦茶にしたこの国を立て直せ!

いいな!

「うん分かった!ありがとうたろーちゃん!」

だから俺はもうその名前じゃねーっての…

っとに、しょーがねえな…






***






目が覚めた。

ベッドからむくっと身を起こす。

なんかやけにマットレスが固いし、掛け布団もゴワゴワしてるなー…と思って、意識が完全に覚醒した。

ここ、昨日までいた屋敷じゃなかった。

貴族の身分を捨てて国から出奔して、最初に泊まった一般の宿屋だった。

貴族屋敷のベッドよりも寝心地が悪いのはしょーがない。

窓の外は明るくなってきてるが、まだ太陽が昇り始めたばっかって感じだ。

ちょっと早く起きすぎたな…

ふと気配を感じて視線を横に向けると、もうひとつのベッドの上でエドが起き上がっていた。

なんだか不思議そうな顔をしてる。

…たぶん、今の俺も似たような顔してるんだろうな。

すっげー変な夢を見た。

変な上に、悲惨な夢だった。

エドが自棄になって国とか世界とかを滅ぼそうとしてる夢…

つーか魔王になろうとしてた?

夢とはいえ、とんでもねー。

あれが現実じゃなくてよかった。

「おはようアル。ねえ、僕すっごい変な夢を見たよ…」

マジか。

おまえもかよ。

お互いに確認してみると、どうも同じ内容の夢だったらしいと判明。

どうしてそんなことが…?

「僕とアルとは夢の中でも繋がってるってことだよねっ♡」

あー、ハイハイ。

エドの戯言にはいちいちツッコんでたらきりがないので右から左に聞き流してスルーして。

実際、不可解ではあった。

同時に二人で同じ夢を見るなんて、普通じゃない。

それに、やけにリアリティのある夢だった。

まるでもうひとつの現実……もしかしたらああなってたかもしれない、っていう可能性の世界っつーか。

俺がもし、12歳じゃなくて18歳までエドと会わないままだったら、ああなっていた…?

「うーん、それはありえるかも」

オイっ!?

「王家の禁書庫に保管されてる古い文献に、あった気がするんだよね。魔王になるための禁呪とか」

なんでそんなヤベーもん保管してんだ、あの国!?

マジで危ないところだったわけか…!?

個人的にはこいつと再会したくなんてなかったが、早めに出会ってたおかげで事なきを得ていたんだな。

…俺ばっか損してるようで、釈然としないが。

あんな悲惨な世界になってなくて、本当によかった。

あの夢の中でよかったことって、俺の母上がまだ生きてたことくらいじゃねーか。

現実には俺が生まれてすぐ亡くなったっていう、母上…

綺麗な人だったな。

もしかしたら、あんな夢を見たのはコイツのせいかも。

俺は昨夜見つけた手紙をもう一度広げてみた。

荷物の中に紛れ込んでたんだ。

父上から俺への、手紙。

出奔する準備はこっそりやってたつもりだったのに、父上にはバレバレだったらしい。




『我が息子、アルバートへ。


 おまえがこれを見つけて読む頃には、もうどことも知れぬ旅の空の下なのだろうな。

 色々と言いたいことはある。

 おまえもだろう。

 お互い、もっと話し合っていればよかったのかもな。

 だが、こうなってしまったからには、今更だ。

 私はもう四の五の言わん。

 おまえの好きに生きなさい。

 ああ、それと。せっかく広い世界に飛び出すのだ。

 もし近くを通りかかることがあれば、おまえの母の墓に参ってくれまいか。

 王都から遠すぎるため、私はなかなか行けないのでな。

 あれは眠りにつく最期まで、おまえのことを気にかけていた。

 立派に成長した今の姿を見せてやって欲しい。

 どうか、元気で。


 ps:疲れたり困ったりしたら遠慮するな、いつでも帰ってきなさい。


 psのps:困ることがなくてもたまには帰ってきておくれ。』




父上…

なんだかんだいって、俺のこと可愛がってくれてたんだよな…

無断でエドとの婚約を決めたり。勝手をされて腹を立てたこともあったけど。

出ていく俺を見逃して、結局はこうして自由にしてくれた。

………。

ちぇ。

しょーがねえな。

父上の頼み通りに、近いうちに母上のお墓参りするか。

「お義母様のお墓って?」

ああ、うん。

俺が赤ん坊の頃はまだ父上、地方官僚だったから。

その頃住んでた辺境の町にあるんだ。

国境沿いだから、ここからならそんなに遠くなかったはずだ。

「そっか……お義母様、きっと喜んでくださるよ」

うん。

………。

って、それはいーけど。

さっきからなんか、言い方変じゃね?

お義母様、ってなんだよ!?

俺の母上なんだけど!?

「アルの母上なら僕にとってもお義母様だよ!」

バカやろう!?

いいか、勘違いするなよ!

旅の同行はしょーがないから許したけど、俺は断じてそーゆー意味でおまえを受け入れちゃいないからな!

せいぜいが冒険者パーティの仲間!

それ以上にはならねーぞ!

「うんうん、分かってる分かってる!」

…本当だろうな!?

「アルは優しいからそのうち絆されて僕にすべてを許してくれるよ!僕はそれまでじっと我慢して待ってるから…!!」

あ、アホかー!?

やっぱりこいつ、全然分かってねー!?

くっそ、同行を許したのは軽率だったか…!?

今からでもどっかで巻いて置き去りにするべきか…!

「に・が・さ・な・い・よ♡」

だからこえーんだよ、おまえ!?




ああっ、天国の母上!

俺がホモスパイラルから逃げられるよう、どうか見守っててくださいっ…!!!


魔王が爆誕する寸前だった畏怖の世界

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