周りの人々はかく語る〜マッドでニッチなあんちくしょう編〜4
エピソード4・モンスター活用法
このダンジョンに居を構えて、どれくらいの月日が経ったろう?
ずっと研究に没頭してると、時間の感覚が分からなくなってくるんだな。
それくらいここでの研究は捗って楽しくて仕方ないってことなのだ!わっはははは!
まぁ僕は相変わらずだ。
研究成果は次々と出せたが、次々にやりたいこと、試してみたいことが出てくるから、際限がない。
生涯これ研究一筋。それで僕は本望なのだ。
しかし、若者には顕著な変化がある。
出会った当初は強くてもまだまだ身長も伸び切ってない少年だったアルバートくんと、エドワードくん。
随分と立派な青年になった。
僕の背丈をうんと追い越して、声変わりもして。
アルバートくんは精悍な顔つきの男前だし、エドワードくんは美少年がそのまま美青年になったって感じで。
え、もうすぐ18歳?
成人じゃないか。
おめでとう!
研究以外にはあまり興味を示さない僕であるが、さすがにこの二人の成長には感慨深いものがある。
大恩人だし。研究の助けになってくれたってこともあるが。
なにより、僕はこの二人のことが気に入っちゃってるのだよなぁ。
人間的に、好きだ。
チミたちは素晴らしいから、その器量に相応しい幸せを掴み取って欲しいよ。
柄にもなくそんなことを思ってた、ある日。
アルバートくんが、僕にこっそりお願いしてきた。
ダンジョン内の館に泊まり込みの日で。エドワードくんがもう寝ているだろう深夜の時間帯に。
研究室にこもっていた僕のところに、一人でやってきて言うことにゃ、
「サイモンさん、頼みがあるんだ。エドには内緒で、ワイバーンを生み出して欲しい」
いつも能天気な笑顔でいることの多い彼だったが。
この時は、やけに思い詰めた表情をしていて。
僕の印象に強く残った。
ワイバーン、か…
別に構わんが。僕だけで生み出すと命令できないから危ないぞ?
あ、いや、アルバートくんなら平気か。
「ああ、俺自身の力でどうにか手懐けてみせる。だから、頼む」
いいよー。
「…わけを聞いたりしないのか?」
正直、興味はある。
だけどチミ、聞いて欲しくはないんだろ?
だから聞かない。
僕だってそれくらいの気は回せるのだー。
「ありがとう、サイモンさん…」
なんの、なんのー。
アルバートくんがどこかホッとした様子で嬉しそうに去っていった、ほんの半刻後。
今度はエドワードくんがやってきた。
…まだ寝てなかったみたいだなー。
「アルが何か頼んでいったでしょ?おそらくだけど、モンスターを作って欲しいとかなんとか」
ノーコメント。
チミも恩人ではあるが、先に約束した恩人との仁義は通すのだー。
「隠しても無駄だよ。忘れたの?僕だってダンジョンコアに触れれば、どんなモンスターが生成されたかなんてすぐに分かる」
…ん?
そうか、そりゃそうだったなー。
僕もだが、アルバートくんもうっかりだなー。
じゃあしょーがない。
僕の口からは言えないが、コアから勝手に情報を引き出してくれ。
「当然。……ふーん。ワイバーン、ね。アルの考えが読めたよ」
本当か?
僕には何がなんだか分からなかったのだがなー。
さすがは親友同士ってことかー。
「親友兼運命の恋人だよ」
そのへんの機微は僕には本当に分からん。
「ワイバーン。僕の分も作ってもらおうか?もちろん僕ならコアを使って完全制御できるしね」
構わんけどなー。
チミたち、一体なんのために?
「……ワイバーンに騎乗して、空から逸早く国境線を越えるつもりなんだ。アルってば…」
おおっ!?
ワイバーンを…モンスターを乗り物として有効活用するとなッ!?
その発想はなかったー!
やっぱりアルバートくんのアイディアは面白いなぁ!
「…絶対に、逃さない。アル……………」
乗り心地は、どんなもんだろうな?
後で感想を教えてくれー。
それから、しばらく後。
二人の若者が、この国から姿を消した。
近しい関係者たちはみんな動揺し、嘆き、悲しんだりしたというが。
僕は、別に…
あの二人だったら、また近いうちにひょっこりダンジョンにやってきそうな気がするのだー。
だから僕は、ずっとここで研究してるぞー。
再会の日を楽しみに、な!




