周りの人々はかく語る〜マッドでニッチなあんちくしょう編〜2
エピソード2・薬草園
ダンジョンで生成できるのは、なにもモンスターばかりではない。
この空間そのもの。
大地や、そこに生える植物の類も、コアを操作すれば自由自在だ。
もちろん規模に見合った魔素が必要となるがな。
そこで、館のモンスター除けの結界が及ぶ範囲に、薬草園を作ってみた。
ポーションの素材となる薬草は、貴重だ。特殊な環境下でしか育たず、栽培も難しいとされる。
んがっ!
ダンジョン内なら、その難しい環境面での条件も簡単にクリアできるのだー!
どころか、魔素とデータさえあれば十分に育った薬草をいきなりポンッと生やすことすら可能。
しがない天才魔導士たる僕は、もちろん一通りの薬草データを持っているぞ!
こんなこともあろうかと故国にいた時に王宮書庫とか冒険者ギルドに忍び込んで、無断でデータ提供してもらったのだっ!
…違法行為?
いいや、これは必要悪だ!
偉大な研究を完成させるためには、仕方のないことだったのだ!
とにかく薬草園は作ってすぐに軌道に乗った。
ダンジョンを活用するという僕の研究成果が、これでまたひとつ増えたというわけだな!
わっはははは!
「なあ、どんな植物も生やせるのか?」
おっ?
アルバートくんがまた?
彼のアイディアはいつも奇抜で面白いからなー。
僕もつい耳を傾けちゃうぞっ。
「この世界……じゃなかった、この国にはない果物とかも、作れるのかな?」
…んんっ??
なんか少々引っかかる物言いだったが…
肯定である。
データさえあれば再現できちゃうだろう。
霊薬の類でもない普通の植物なら、そんなに魔素も消費しないだろうしな。
「じゃあ俺やエドが知ってる果物、作れないかな…?」
「アル、なにか食べたいものあるの?」
「梨が食いたい!」
「ああ……たろーちゃん、好きだったもんね」
「それにミカンとかビワとか桃とかキウイとか!リンゴもあんな酸っぱいのじゃなくて蜜のたっぷり詰まった甘いやつが欲しい!」
僕も聞いたことのない固有名詞がたくさん出てきた。
文脈から、果物の名称だと思われる。
僕も興味を覚えないでもないが…
でもなぁ。
僕は渋い顔で言った。
さっき説明した通り、データがなければ再現不可能だ。
僕は、僕の知らん果物なんて生み出せないぞ?
「エドがコアを操作しても無理か?」
…おおっ!?
その発想はなかったな!
試してみた。
できた。
エドワードくんの秀でた能力あってのことだろう。彼は卓越した魔法の腕を持っている上、理解力があって非常に飲み込みが早い。僕の教えたコアの操作方法をすぐ実践してくれた。
梨って果物……あるのにナシとは、これ如何に?
不思議な名称はともかく、低めの木に生る果実だったのだな。
ダンジョン内なので十分成長した状態で生み出して、すぐ収穫することができた。
僕も食してみたが、確かにこれは美味いなぁ!
甘くてジューシーで!
シャクシャクとした食感も小気味いい!
アルバートくんはにっこにこで皮を剥いた一個まるごと齧りついてる。
それを横でエドワードくんが、やっぱりにっこにこで見守っていた。
「アルが喜んでくれて嬉しいよ!」
「なあ、この勢いで果物だけじゃなくて香辛料とかも作れないかな?」
「何か欲しいものあるの?」
「いや、ほら……カレー食いたくならねぇ?」
「ああー……確かにね」
二人はまた僕の知らない固有名詞を出していた。
クミン?コリアンダー?ターメリック?
まぁ何でも好きに自由に作ってもらおう。
僕は、僕の研究成果を活かしてダンジョンを活用してもらえれば、それでいいのだからな!
後日、エドワードくんがカレーなる新作料理を完成させた。
ダンジョンで生み出した多種多様な香辛料をふんだんに使って。
組み合わせや量の調整が難しかったらしく、さしものエドワードくんも四苦八苦していたが。
その甲斐あって、完成品は絶品だった。
僕もご相伴に与ったが、これまためちゃ美味いのなんの!
一連の流れで生み出した果物や香辛料は、自分たちで消費する以外に、流通させて利益を得るのだそうな。
僕を受け入れてくれたこの国に貢献できるなら、僕も本望であるっ!




