周りの人々はかく語る〜マッドでニッチなあんちくしょう編〜1
やほー。
僕はしがない天才魔導士サイモン!
ダンジョン及びダンジョンモンスターの有効活用こそが我が生涯を賭した研究!
早すぎた天才は理解されぬもの…
故国トライアン王国では、周囲の理解を得られず迫害される憂き目に遭った!
んがっ!
捨てる神あれば拾う神あり!
あるいは、天才は天才を知る!ってことかな。
故国を捨て、あてもなく辿り着いた新天地で、僕はついに得難き理解者たちと出会えたのだった!
おかげでここんとこの研究が、まぁ捗る捗る!
あまりにも気分が良いので、研究成果のレポートの他にこんな備忘録をしたためようと思っちゃった次第なのだっ!
わっはははははー!
エピソード1・館の改修
ダンジョン内には僕の研究所兼住居である館を建ててある。
ここなら管理も研究も楽だし、あと万が一トライアン王国からの追手が来てもまぁまぁ安全であるからな!
一石二鳥というわけだ!
で、僕が新しくモンスターを生み出す際には魔法陣と呪文の補助が必要なので、それも館内に常時設置してある。
…本来であれば、ダンジョンコアさえ操作できれば一発でポーンと生み出せるはずなのだがなー。
僕は人為的にダンジョンマスターになった。
だから自然発生したダンジョンマスターであれば有しているだろう、潤沢な魔素を持っていない。
そのため、完全自力生産は無理っぽいのだ。
試してみたのだが、スライムやコボルトといった雑魚モンスターなら、コアだけでも生成できる。
しかしそれ以上の……おおよそCランク以上のモンスターとなってくると、僕単独の力では不可能だった。
魔法陣を使ってダンジョン内の魔素をゴソッと掻き集め、呪文によって制御して、モンスター生成に充てなくてはならん。
まぁ面倒だがしょーがない。
我が研究はダンジョン及びダンジョンモンスターの有効活用。
研究のためには、雑魚ばっかり生み出しても意味はない。強いモンスターもわんさか生み出して、活用法を検証していかないとだからな!
そうして生み出したダンジョン内を闊歩するモンスターのほとんどは、僕より強くて僕の命令を受け付けない。
屋外に魔法陣をこさえたら、あっという間にモンスターに踏み荒らされて使い物にならなくなるだろう。
大きく複雑な図形を描かなくてはならんから、その都度作り直すのは非効率だ。
とゆーわけで、魔法陣は館の中にこさえるしかなかった。
この館自体には、一般的なモンスター除けの結界を張ってあるからな。一度外に出たモンスターが館にちょっかいを出すことはまずないので安心である。
で。
この地に来て、最初のモンスターを生成して。
…一発で館が崩壊した。
いやー!うっかりうっかり!
せっかくの初生成なのでと思って、気合を入れてサイクロプスとか出しちゃったのが間違いだったなー。
あいつ、見上げるくらいでっかいだろ?
魔法陣から出現したとたん、天井も壁もぶち抜いて何もかも無茶苦茶になったわー。
一つ目の巨人に館を内側からパーンってされちゃった状態だよな。
ダンジョンマスターである僕は、ダンジョンモンスターから直接危害を加えられることはない。
だが、崩壊した館の瓦礫に埋もれていきなり死にかけた。
危うく新天地に来て即ゲームオーバーになるところだったー。死ななくてよかった!ハッハハハ!
サイクロプスは瓦礫の隙間でコケている僕のことも、自分が壊した館のことも意にも介さず、すぐにどっかに歩いていっちまった。ズシーン、ズシーン…と重量級の足音を響かせながら。
こうなることくらい最初から予想しとけって?
うむ、けだしもっともである!
だが僕はどうもひとつのことに夢中になると、他はあまり見えなくなるたちのようでなー。
実際に危ない目に遭うまで分からんかった!
一度やらかしたら、二度と繰り返したりはしないけどな!
コアを使って再構築した館の間取りは大幅に変えて、魔法陣のある研究室で生み出したモンスターが問題なく玄関から外に出ていけるように工夫したぞ!
時々行きがけに床とか壁とか壊されることはあるけど。その程度の被害はやむなしだ。
「…なあ、こっちから外に出すんじゃダメなのか?」
アルバートくんが、研究室のドアとは反対側にある壁を指さしながら言った。
ん?
「この壁の向こうはすぐ外だろ?わざわざサイモンさんの生活スペースのある廊下の方から出してやることはないんじゃ…」
そっ…
その発想はなかったぁぁぁぁぁッ!!!
単純明快!
それだけに、至極もっともで有効なアイディアであるッ!
僕はすぐさまコアを操作し、館の間取りを大幅改修。
研究室の奥側にすぐ外に出ていける大扉……いわゆる裏口をこさえた!
ついでに、空飛ぶモンスターを生み出した時のために、天井部分も可動式にして任意で開けられるようにしたぞ!
代わりに僕の生活スペースになってる廊下側はごく一般的なサイズ感に戻した。
モンスターを通すために広く作ってたけど、僕が移動するには無駄に広すぎてやりにくかったからなー。
これでだいぶ暮らしやすくなった!
この国に流れてきてから出会ったアルバートくんは、魔法も使えないしあんまり頭もよくなさそうな少年だ。
しかし腕っぷしはピカ一だし、時としてこーいう盲点的な発想を僕に与えてくれる!
僕みたいな研究職の周りにはあんまりいないタイプだからなー。着眼点が僕と違って、新鮮で実に面白い!
僕の研究にも肯定的だしな!誠に彼との出会いは得難いことだった!
「なあ、サイモン……ちょっと」
お?
エドワードくんがこそっと手招きしてる。
この国での得難き出会いパート2の少年だ。
彼はこの国の王族……第一王子だというが、その若さ故なのか柔軟で理解力がある。
なんせ僕にここでの研究を許可してくれたし!
僕の故国の分からんちんの王様とはえらい違いだ!
それに、素晴らしい力を持った魔法使いでもある。
僕自身も研究のために魔法の腕は磨いており、これでも上級魔法くらいは使えるのだがなー。エドワードくんの才能と実力はその遥か彼方の高みにある。
王族故の突出した才覚なのか、はたまた他の要素も絡んでいるのか……興味も覚えるが。
ともあれ、彼はあらゆる意味で僕にとって大恩人だ。
彼の協力のおかげで研究も捗ったし。
アルバートくんに隠れて耳打ちしてきて怪しい感じがしたが、大抵のことは聞いてあげようと思う。
「僕とアルは定期的にこのダンジョンに来ることになった。管理と、鍛錬のためだけど、泊まり込みになることもあるだろう。その時のために、この館に僕たち用の部屋を作ってくれないか?今みたいに簡単にできるんだろ?」
なーんだ、そんなことか。
お安い御用なのだ。ダンジョンコアを操作すればチョチョイのチョイで、
「あ、相部屋でいいからね。ベッドは大きめのダブルベッドで!」
…んっ??
チミたちが仲良しさんだってのは知ってる。
だから相部屋はまぁ分かるのだが、ダブルベッド…?
ちっちゃな子供ならともかく、チミたち少年ったってもうそんなに幼くはないだろ?
ベッドくらい二個ちゃんと用意できるぞ?
「ひとつでいいんだよ。僕とアルは、婚約してるんだ」
…んんん〜???
まさかの婚前交渉???
僕、そーいうのあんまり感心しないなー。
とはいえ口出しするのも野暮だ。彼らには恩義もあることだし。
僕はエドワードくんの言う通りに、彼ら用のゴージャスな客室をこしらえてやった。
その日の夜。
「ざっけんなエド!誰が同衾なんかするかーッッ!!!」
顔を真っ赤にして激怒したアルバートくんが、エドワードくんのことを真空飛び膝蹴りで客室から叩き出していた。
…ん〜。
僕は、蹴り出された廊下で痛みに呻いてるエドワードくんに向かって、一言。
「相手の同意なしに、そーゆーことしちゃダメだよ。普通に人としてどーかと思う」
「よりによってサイモンに普通を諭されるとは思わなかった…!!!」
エドワードくんは屈辱にまみれた顔になって、ガクッと気絶した。
…アルバートくんの蹴り、キョーレツだったからなー。
まぁエドワードくんのことだからすぐに復活するであろー。
この事件の後、僕はすぐさま客室をもういっこ増設した。




