そろそろアップを始めようか?3
サイモンにとっては再現できることが確認できればもうそれで用はないらしく、今ダンジョン内をうろちょろしているモンスターはどれでも倒していいという。
…仮にも生みの親が、随分と薄情なものだよね。
それにしても本当に様々な種類がいた。
この前、僕がコアを通して存在を察知した、サイクロプスやバジリスクやヒュドラなんてのの他にも、わんさか。
コカトリス、オーガ、トレント、コータスタートル、ビッグタスク、ポイズンスネーク、ケルピー、ガルーダ…
生態系も何もかも無視して、よくもまあ。
せっかくなので、倒した後の素材はきっちり回収させてもらった。
解体作業が面倒だったから、ダンジョンコアを使ってダンジョン内の法則を変えて、倒したら即素材としてドロップするようにしてね。
大量になった。
護衛の近衛兵を連れてきて良かった。悪いけど彼らには荷物持ちになってもらおう。
「なあ、肉も出てきたよな。肉は食っていかねえか?」
アルがそう言うなら、喜んで!
サイモンの住居である館には、キッチンもあったはず。
というか、あいつこのダンジョン内で普通に生活してるんだよね。研究に使ってる部屋を除けば、一般の住宅とそう変わらない機能が一通り揃っているはずだ。
キッチンくらい使わせてもらおう。キャンプもいいけど、やっぱりちゃんとしたキッチンで料理して食べた方が美味しいから。
僕たちはゲットした素材を抱えて、館へと引き返した。
正面の大扉を開ける。
すると、いきなり巨大な影が飛びかかってきて、
「おりゃっ!」
ドゴンッ!
アルのグーパンの餌食になった。
…いや、最初に入ったのがアルじゃなくて近衛兵の誰かだったら、危ないところだったぞ。
巨大な影の正体は、オルトロスだったんだ。
Aランクモンスター。
まーたサイモンが生み出したな!?
僕たちが他のモンスターを討伐して使える魔素が貯まったからって、さっそく!
アルには呆気なく倒されたけど、近衛兵じゃ咄嗟に対処できなかったに違いない。荷物持ちさせて彼らの手は塞がってるし。
青ざめて震えてる近衛兵一同。
僕は表情を険しくして、館の廊下をずんずん進んでいった。
思えば、この廊下。
研究室に続く最奥の巨大ドアまで一直線だし、やたらと幅があって広い。
なんでこんな変な間取りなんだろうと不思議だったけど、理由が分かった。研究室で生み出したモンスターを、館の中から外に出しやすくするためだ。館全体が一階二階吹き抜けで天井が高い理由も同様だろう。
…本当にもう!
「サイモン!」
研究室のドアを開け放ち、僕は尖った声で奴を呼ばわった。
果たして、サイモンはそこにいた。
床に描かれた魔法陣の前に背中側を向けて立っていたが、すぐにこっちを振り返ってきて、
「あっ、おかえりー」
なーんにも悪びれたところのない、笑顔っ!
さすがに僕もイラッとした。
「おかえりじゃないよ!どうして僕のいないところで新しいモンスターを生み出した!?君だけじゃ、Aランクモンスターには命令できなくて危ないって知ってたはずだよね!?」
「そう、それそれー!それをなんとかできないかなって、試してみたのだー」
「結果は!?」
「…研究とはトライアンドエラーの繰り返し。数多の失敗の先にいつかきっと成功が待っているのだー」
「つまり失敗だったんだろ!?」
ダメだ!
やっぱりこいつにはまともな話が通じない!
「僕たちが戻るまでほんの少し待てばいいだけだったじゃないか!館の扉を開けたとたん襲い掛かられたんだぞ!無意味に危険な目に遭わせるな!」
「えー?チミたちは強いんだからへっちゃらだったろー?」
「護衛の近衛兵たちはそうはいかないよ!」
「ほらー。だから連れて来る意味なんてあるのか?とさっき僕が聞いた通りではないかー。護衛なのにチミたちの足手まといにしかなってない」
「自分は悪くないみたいに言うな!」
「次からはチミたち二人だけでここに来ればいいではないかー」
「それはっ…!」
正直、すっごい心惹かれる…!
いくら護衛たちは存在感を消してくれてるといっても、やっぱり本当の二人きりとは違うし。
アルと二人きりで…
ダンジョンデート…
あーんなことやこーんなこともできる…
っ…いい!!!
「ダメに決まってんだろ」
あいたっ!?
アルに後ろから頭をはたかれた。
「サイモンさんも、あんまりこいつに変なこと吹き込まないでくれよな。俺が困る」
「ん〜?そうか〜?」
「あとモンスター出すところは俺も見たいから、勝手にやって欲しくない」
「おっ、そうかぁ!チミも僕の研究には興味津々ってことなのだなー!」
「うん。いろんなモンスターを見られるから、勉強になる」
「そうか、そうかー。それは悪いことをした!今度からは気をつけるのだー」
僕がはたかれたところを押さえて呻いてる横で。
アルがサイモンと話をつけてくれた。
…この話の通じないマッド相手に言い聞かせることができるなんて…!
やっぱりアルは凄いよ!
好きっ♡
それから。
僕とアルの定期ダンジョンデートはずっと続いた。
コアを通してのダンジョン管理の他に、サイモンが研究のためと称して次々に生み出していくモンスターの討伐も仕事のうちに加わったから。
倒してもすぐまた新しいモンスターが生み出されるため、この仕事には果てがない。
でも、アルと一緒なら望むところさ♡
サイモンはやたらと高ランクのモンスターばっかり出したがるから、討伐後のドロップ素材もおいしいしね。
素材は、武器防具に加工して騎士団の装備の強化に当ててもよし、そのまま売却してもよし。
実質元手ナシで国庫も潤い、父上も大喜びだ。
すべては順風満帆。
こんな日々がきっとこれからも、ずっと続いていくんだと思っていた。
………。
最近、少し気になりだしたことがある。
僕がダンジョンコアのチェックをしている間、アルがサイモンと何かやり取りしてるんだ。
ダンジョンのこととか、モンスターのこととか、冒険者ギルドのこととか。アルはサイモンからこっそり教わっているらしい。
知識欲や好奇心は悪いことじゃない。
…まあサイモンみたいにマッド化してたら話はまた別だけど、アルに限ってそれはないし。
こそこそ隠れてやる必要はないはずだ。
なのに、アルはこっそりと…
まるで僕にバレないように細心の注意を払っているようで…
以前のアルは、モンスターの名称すら碌に知らなかった。アースドラゴンのことも「ティラノみたい」なんて言ってて、きちんと覚えようともしてなかった。
でも、ここ最近はちゃんとした名称で呼ぶようになってきてる。
必要な知識だからしっかり覚えないと、って感じで。
一生懸命、必死に勉強して。
………。
アルは。
単純で真っ直ぐで分かりやすくて隠し事も下手だから。
どんなに隠そうとしても、すぐバレるんだよ。
僕には特にね。
前世からの幼馴染は伊達じゃないんだ。
ねえ、アル…
どういうつもり…?
………。
ふーん、分かった。
いいよ。
じゃあ僕も。
その日に備えておくことにするよ。
ずっと一緒だからね、アル♡




