第6話(中編1)「祭りがないなら作ればいい」 1779年10月11日~10月15日
10月11日。
前日の質問を受け、管理人はハロウデン周辺の収穫祝いについて説明した。
「農場ごとにはございます。収穫を手伝った者へ食事やエールを出し、音楽を呼ぶところもございます。大きな農場なら人数も多くなります」
「村全体で祝うところもあるのか?」
「村によります」
「では、11の村をまとめて祝う行事はないのか?」
「ございません。所領全体となりますと、農場だけでも70を超えますので」
エドワードは少し考えた。
「それなら、今年からやろう」
管理人が目を瞬いた。
「ハロウデン全体の収穫祝いを、ということでしょうか?」
「ああ。農場主だけではなく、そこで働く者も、その家族も呼ぶ。村の職人や商人も、ハロウデンに住んでいるなら来ていいことにする」
「かなりの人数になります」
「正確な人数は分かるのか?」
「名簿を調べ、各村へ確認しなければなりません」
「では調べてくれ」
そこへアメリアが書斎へ入ってきた。
「ずいぶん大きな話をしているようですが、何を始めるつもりなのですか?」
「ハロウデン全体の収穫祝いだ。所領に住む者なら誰でも来られるようにしたい」
「参加人数も分からないうちに、もう決めたのですか?」
「人数を見てから考えたら、多すぎるからやめようという話になるかもしれない。だから先に決めた」
「普通は逆だと思います」
アメリアは椅子へ座り、管理人へ顔を向けた。
「主要な穀物の刈り入れは、もう終わっているのですか?」
「農場によって多少違いますが、ほぼ終わっております」
「それなら時期は悪くありませんね。ただし、所領全体を集めるなら、食事だけ用意すれば済む話ではありません」
「分かっている。だから君にも相談する」
「本当に分かっているのなら安心ですが」
アメリアは管理人と一緒に、会場から考え始めた。
「大勢を集められて、村からも来やすい場所はありますか?」
「古い本邸から少し離れた南側に広い牧草地がございます。収穫後であれば一部を使えますし、道路からも近く、各村からの道も集まっております」
「水は足りるのですか?」
「近くに井戸がございますが、大人数なら樽でも運ぶ必要があります」
「雨が降った場合は、どこへ人を入れられますか?」
「農具小屋と納屋をいくつか使えます。ただ、全員は入りません」
「それなら、食事を出す場所を中心に仮設の覆いを作りましょう。全員を屋根の下へ入れる必要はありませんが、料理やパンが雨ざらしになるのは困ります」
「承知しました」
エドワードが口を挟んだ。
「食事は牛肉、羊肉、豚肉を出そう。パンも十分に用意して、エールも樽で出す」
アメリアが夫を見た。
「会場の話をしていたのに、急に料理だけ具体的になりましたね」
「何千人も集めて、パン1切れだけでは格好がつかないだろう」
「肉だけでも困ります。野菜やチーズ、果物も必要ですし、子供向けのものも考えなければなりません」
「その辺りは任せる」
「便利な言葉ですね」
「君の方が詳しいことを僕が無理に決めるよりいい」
アメリアは少し笑った。
「それなら引き受けます」
馬車や馬を置く場所、老人や子供が休める席、料理をする場所、楽師を呼ぶかどうかまで話し合ううちに、単なる食事会では済まないことが分かってきた。
正式な名称について聞かれると、エドワードは難しい名前を付けなかった。
「ハロウデンの収穫祝いでいい」
「毎年ある行事のように聞こえますね」
「今年うまくいったら、来年もやればいい」
「来年のことは、今年が終わってから決めてください」
「君は慎重だな」
「あなたが早すぎるのです」
◇ ◇ ◇
翌12日から、所領内へ知らせが回った。
今年の収穫を終えた祝いとして、ヘイル伯爵夫妻が食事と酒を用意する。農場主だけではなく、農場で働く者とその家族、所領内の職人や店を営む者も参加してよい。競走や力比べを行い、音楽を入れ、夕方には踊りも行う予定だと伝えられた。
知らせを聞いた者の反応は、最初は半信半疑だった。
新しい伯爵は22歳で、52,000エーカーもの土地を買ったばかりである。海では敵国の船を何隻も拿捕し、国王とも親しい。その若い伯爵が、今度は所領の住民を集めて食事を振る舞うという。
何か別の目的があるのではないかと考える者もいた。地代について話があるのではないかと警戒する者までいた。
その噂を聞いたエドワードは笑った。
「祭りの日に地代を上げるほど野暮ではないぞ」
管理人は苦笑した。
「新しい領主が何を考えているのか、皆まだ分からないのでございます」
「なら、来てもらえば分かる。食べて飲んで帰ればいい」
「それが一番でしょう」
「競走にも賞を出そう。勝った者に何もないのでは寂しい」
アメリアが顔を上げた。
「賞金の額は、私にも相談してから決めてください」
「だから今話している」
「それなら、今回は先に相談したことにしておきます」
「ずいぶん偉そうだな」
「誰かが見ていないと、また5ポンドや10ポンドを簡単に出すでしょう」
エドワードは否定しなかった。
15日までには、各村からおおよその参加人数が集まり始めた。
予想していたより、はるかに多かった。
所領全体の収穫祝いを開くという思いつきは、すでに管理人や使用人だけでは片手間に扱えない仕事になっていた。




