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25ポンドから始めるジョージア朝成り上がり 男爵家の跡取りは金と情報で大英帝国を駆け上がる  作者: ひまえび
第三章――「土地には値段がある」

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第5話(中編1)「艦隊の胃袋」 1779年9月11日~9月15日

 9月11日。


 8隻となったヘイル船団は英国を離れた。


 グレイミア号を中心に、ファルコン号、スウィフト号、レゾリュート号、7月に拿捕した旧フランス軍艦、さらに8月に拿捕した3隻が続く。


 新しく加わった3隻は、完全に同じ状態ではない。最も損傷の少なかった20門艦はほぼ問題なく動けるようになり、もう1隻の20門艦も修理を終えていた。24門艦には多少の手直しが残っていたが、カートライトが実戦使用に問題はないと判断したため、今回の航海へ加えている。


 各艦の乗組員も混成だった。従来の4隻から経験のある者を移し、新しく雇った水夫や砲手と組ませている。拿捕した軍艦を増やすだけなら難しくないが、それを実際に戦わせるには人を揃え、経験者を配置し、同じ船団として動けるようにしなければならない。


 エドワードは全艦へ、単独で敵を追いすぎず、戦列艦を見たら距離を取り、拿捕を急ぐあまり味方の船を失わないよう命じていた。


 今回は国王から頼まれた仕事でもある。補給船を狙うために大艦隊へ近づきすぎ、8隻まとめて失えば金だけの問題では済まない。


 出航翌日の朝、エドワードはグレイミア号の甲板から周囲の7隻を見渡した。


「こうして見ると増えましたな」


 隣に立つカートライトが言った。


「先月より3隻増えたからな」


「この調子では、来月に何隻になっているのか分かりません」


「まだ9月だぞ」


「あなたの場合、月末まで何が起きるか分かりませんからな」


「今回は補給船が目的だ」


「護衛の軍艦も狙うおつもりですか?」


「勝てる相手なら取る」


「やはりそこは変わりませんな」


「さすがに66隻の戦列艦を取りに行くつもりはない」


「そこまで分別があれば十分です」


 ◇ ◇ ◇


 9月13日の午後。


 先行していたスウィフト号から、前方に複数の帆があるとの信号が上がった。


 ヘイル船団は速度を調整し、相手に不用意に近づかないまま確認を続けた。夕方までには、大型と中型を合わせて10隻ほどの輸送船や商船がまとまり、その周囲を3隻の軍艦が護衛していることが分かった。


 カートライトが望遠鏡を下ろした。


「先頭はスペイン艦でしょう。26門前後です。中央にフランスの24門級、後ろの1隻は18門ほどに見えます」


「戦列艦や別働隊の姿は確認できるか?」


「見える範囲にはありません」


 エドワードも望遠鏡を向けた。


 前回のフランス商船団より輸送船の数は多くないが、護衛は3隻とも正規の軍艦である。ただし、こちらにはすでに8隻ある。


「この相手なら戦えると思うか?」


 カートライトはしばらく相手の動きと風向きを見た。


「戦えます。ただし、正面から全部ぶつける必要はありません。敵の護衛艦は輸送船を守らなければならない。こちらは船の数に余裕があります」


「それなら逃げ道を削ろう。スウィフト号を外へ回し、レゾリュート号と旧フランス20門艦を1隻付ける」


「残る5隻は正面へ回すのですか?」


「いや。2隻は反対側へ回す。相手がどちらへ進路を変えても、こちらの船とぶつかる形にしたい」


 カートライトは海図の上で配置を確認した。


「できるだけ包むわけですな。ただ、敵の護衛艦3隻がまとまってこちらへ突っ込んできた場合は、どうしますか?」


「道を空ける」


「軍艦を逃がすのですか?」


「護衛艦だけが逃げるなら、輸送船10隻が残る。無理に軍艦を止めてこちらの船を壊す必要はない」


「護衛艦が輸送船を守るために残った場合は、どうするおつもりですか?」


「その時は軍艦も取る」


 カートライトは笑った。


「どちらを選ばれても、こちらに利益が残る形ですな」


「そういう相手だから戦うんだ」


 その日は日没まで距離を保ったまま相手を追った。夜間に無理な接近戦を仕掛ける必要はない。敵もこちらの存在には気付いているが、暗くなれば互いの位置を完全には把握できなくなる。


 エドワードは各艦へ警戒を続けさせ、夜明けまで船団を見失わないことを優先した。


 翌14日、朝の光が海面を照らしても、敵船団はまだ南東へ進んでいた。


「輸送船を捨てて逃げるつもりはないらしいな」


「護衛艦としては当然でしょう」


「それなら、こちらも始めよう」


 信号旗が上がった。


 8隻のヘイル船団は一斉に配置を変えた。3隻が右から大きく回り込み、2隻が左へ広がる。グレイミア号を含む残る3隻は正面から距離を詰めた。


 フランス・スペイン側もすぐに反応した。3隻の護衛艦が前へ出て、その後ろでは輸送船が互いに離れないよう集まり始める。


 カートライトが望遠鏡を覗いた。


「向こうも戦うつもりです。こちらから先に撃ちますか?」


「まだだ。逃げ道が狭くなっていることを先に分からせる」


 昼前には、ヘイル船団8隻が敵船団の周囲へ大きな弧を描くように位置を取った。


 海の上に完全な包囲など作れない。それでも敵がどの方向へ進路を変えても、2隻か3隻のヘイル船団が先回りできる配置にはなっている。


 先頭を進んでいたスペイン軍艦が進路を変え、グレイミア号へ向かってきた。


「こちらへ来ますぞ」


「撃つまで待て」


「かなり近づいております」


「分かっている」


 スペイン艦は距離を詰めながら砲門を開いた。甲板では砲手が動き、こちらを撃つ準備を進めている。


「先に撃たれた場合は、どうしますか?」


「撃ち返す。マストを狙え」


 数分後、スペイン艦の舷側が白煙に包まれた。


 砲声が連続して海上へ響き、グレイミア号の周囲へ水柱が立った。そのうち1発が舷側へ命中し、外板を砕いた。


 エドワードは望遠鏡を下ろした。


「始めよう」


 待っていた信号が上がり、ヘイル船団8隻が動き始めた。

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