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ベッタベタな異世界転生をしたあいつと同じパーティーにいるハズレ転生者の俺  作者: あさひ


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第44話 壊れた男が、最後に選んだ意味

お読みいただきありがとうございます。

第44話 壊れた男が、最後に選んだ意味


 グロズが再び権能を発動させたとき、その一撃はこれまでのどれよりも重かった。空洞全体が激しく震え、天井から大きな岩塊が幾つも降り注ぐ。


「散れ! でかいのが来る!」


 叫んだ瞬間、俺自身も横に跳んだ。岩の一つが俺のいた場所を正確に叩き潰す。


「イチさん!」


 ヒカリの声に、俺は無事を示すように片手を上げた。


「大丈夫だ、続けろ!」


 グロズの一撃は苛烈だったが、さっきまでとは何かが違っていた。狙いが以前より粗い。まるで全力ではなく確認するような一撃だった。


「フィーネ、グロズの権能、今の一撃で何か変化はあったか」


 俺の問いに、フィーネが即座に計算板を確認した。


「威力は上がっていますが、精度が落ちています。まるで迷いながら撃っているような」


「迷い、か」


 その言葉に、俺はさっきのグロズの台詞を思い出した。潰す価値を見出せなかった。守るための一撃と壊すための一撃は質が違う。


「ガルド、もう一回いけるか」


「もちろんだ」


 ガルドが大剣を構え直す。その目には恐れではなく、確かな覚悟だけが宿っていた。


「グロズ、聞かせてくれ。あんた、本当は何がしたいんだ」


 俺は攻撃の合間を縫って大声で問いかけた。グロズの赤い光がこちらを向く。


「今更、何を聞く」


「朽ちる場所を探してた、って言ったな。それは本当に願いか。それとも諦めか」


 その問いに、グロズはしばらく沈黙した。


「……諦めだ。かつて俺にも守りたいものがあった。だが守れなかった。それからずっと生きる理由を見失ったまま、ここまで来た」


「それで、幹部になったのか」


「魔王に拾われた。力だけを求められ、それに応えるだけの日々だった。誰も俺自身を見なかった」


 グロズの声には、深い疲労が滲んでいた。


「お前の一撃には迷いがなかったと言ったな」


 グロズが続けた。


「お前は守るために剣を振っている。俺はもう何のために振っているのかも分からなくなっていた。それに気づかせてくれたことに礼を言う」


「礼、だと」


「終わらせてくれ。それが俺の望みだ」


 その言葉に、ガルドの表情が大きく揺れた。


「殺してくれ、ってことか」


「そうだ。俺はもう朽ちる以外の道を選べない」


 ガルドは大剣を握りしめたまま、しばらく動かなかった。


「イチ、どう思う」


 ガルドの問いに、俺は少し考えてから答えた。


「あんたの選ぶことだ。ただ、俺には一つだけ言えることがある」


「なんだ」


「あんたが最後に見せた一撃は全力じゃなかった。俺たちを本気で殺す気なら、もっと精密に狙えたはずだ。守れなかった過去への償いのつもりか知らないが、最後まで誰かを壊すことに迷ってた」


 その指摘に、グロズの赤い光がわずかに揺れた。


「ガルド、お前が決めろ。今のあんたにとどめを刺す資格があるかどうかは俺には分からない」


 ガルドは深く息を吸って、グロズの前に進み出た。


「弟を守れなかった夜、俺はずっと後悔してきた。あんたも同じ後悔を抱えてたんだろ」


「かもな」


「なら、俺があんたを終わらせる。後悔ごと俺が背負う」


 ガルドが大剣を振り上げる。グロズは抵抗せず、静かに目を閉じた。


 剣が振り下ろされ、巨躯が崩れるように光の粒子となって散っていく。空洞に静寂が戻った。


「終わった、のか」


 誰かの声が響く。ガルドは大剣を杖のように支えにして、しばらくその場に立ち尽くしていた。


「お疲れ、ガルド」


 俺が肩に手を置くと、ガルドはようやく振り返った。


「お前がいなきゃ、あいつの本当の望みには気づけなかった」


「あんたが問いかけたから、あいつも本音を出したんだ。俺はただの索敵担当だ」


「またそれか」


 ガルドは苦笑しながら、大剣を鞘に収めた。


「今日、はっきり分かった。お前が見つけてくるのは勝ち筋だけじゃない。相手の中身まで見抜いてる」


「買いかぶりすぎだ」


「買いかぶりじゃない。俺は今日、それを目の前で見た」


 ガルドの声には、これまでにない確信があった。


「お前の勘、っていうのはただの偶然じゃないんだろ。フィーネが式とか言ってたのも、そういうことなんだよな」


 その問いに、俺は少し驚いた。


「気づいてたのか」


「鈍くても、これだけ一緒にいりゃさすがに気づく。何が種か細かいことは知らない。だが、お前が誰よりもちゃんと見てる人間だってことだけははっきり分かった」


 その言葉に、俺は何も返せなかった。ガルドは俺の肩を強く叩くと、いつもの豪快な笑みを見せた。


「詳しいことは、いつか話したくなったときでいい。今日はそれだけ分かれば十分だ」


 空洞の中心、グロズがいた場所には粒子の名残だけがうっすらと漂っていた。かつて誰かを守れず、力だけを求められ続けた男の最期は静かで、それでいて確かに誰かに見届けられていた。


お読みいただきありがとうございます。続きも楽しんでいただければ嬉しいです。


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