↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベッタベタな異世界転生をしたあいつと同じパーティーにいるハズレ転生者の俺  作者: あさひ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/64

第43話 一瞬だけ見える、壊れる前の兆し

お読みいただきありがとうございます。

第43話 一瞬だけ見える、壊れる前の兆し


 崩落が五度、六度と続く中、部隊の消耗は明らかに色を濃くしていた。負傷者がクレアのもとへ次々と運ばれ、治癒の光が絶え間なく空洞を照らしている。


「このままじゃ、押し切られる」


 ガルドが肩で息をしながら呟いた。


「イチ、何か見えないか」


 俺はグロズの動きをこれまで以上に注意深く観察していた。腕も足もほとんど動かない。だが攻撃の直前、ほんの一瞬だけ赤い光の明滅が変わる瞬間がある。


「光だ。攻撃の直前、目の光が一段暗くなる」


「暗くなる」


「一瞬だけだ。たぶん権能を発動する直前の、何かの兆候だ」


「どれくらい前だ、それ」


「コンマ数秒。見逃せば終わりの、ほんの一瞬」


 その報告に、部隊長が険しい顔をした。


「それだけの猶予で、避けきれるのか」


「分からない。だが今のところ、それしか手がかりがない」


 俺は自分の見立てに確信を持てないまま、それでも声を張った。


「光が暗くなったら、全員伏せろ! 合図は俺が出す!」


 賭けだった。だが、この状況で他に選択肢はなかった。


 グロズが再び動きを見せる。俺はその赤い光の変化だけを、瞬きもせずに見つめ続けた。


 わずかに、光が翳る。


「伏せろ!」


 叫んだ瞬間、空洞全体が震えた。今度は事前に伏せていた分、被害は最小限に抑えられた。


「効いてる。これでいける!」


 ガルドが声を上げる。だが俺はその手応えの裏で、別の違和感に気づいていた。


「待て。光の翳り方が、今少し変わった」


「変わった、とは」


「学習されてる。俺たちが避けるようになったのに合わせて、次の予兆を隠そうとしてる」


 その言葉に、フィーネが息を呑んだ。


「相手も、こちらの対応を学んでいるということですか」


「たぶんな。長期戦になるほど、こっちが不利になる」


 ガルドが大剣を握り直し、グロズの方をまっすぐに見据えた。


「なら、長引かせずに決めるしかないな」


「無茶を言うな。防御を無視する相手に、どうやって」


「防御を無視されるなら、防御しなけりゃいい」


 ガルドの目に、これまでにない光が宿っていた。


「弟のときは、逃げることしかできなかった。今度は違う。逃げずにまっすぐぶつかる」


「ガルドさん、それは」


 クレアが不安げに声を上げる。だがガルドは止まらなかった。


「イチ、次の兆しが見えたら教えてくれ。避けるためじゃない、合わせるために」


「合わせる、だと」


「あいつの権能が発動する瞬間、そこに俺の一撃をぶつける。防御じゃなく、相殺だ」


 無謀な発想だった。だが、この状況を打開する糸口が他に見当たらないことも事実だった。


「ヒカリ、フィーネ、援護を頼む。俺の合図で、ガルドが動く」


 俺の言葉に、二人が頷いた。


 グロズが再び動きを見せる。俺は赤い光の一点だけを見つめ続けた。翳りは前よりわずかに小さい。だが消えてはいなかった。


「今だ、ガルド!」


 叫んだ瞬間、ガルドが地を蹴った。大剣を振りかぶり、グロズの権能が発動する寸前の一点へ全体重を乗せて叩き込む。


 衝撃波が空洞を揺らした。岩の破片が飛び散り、視界が一瞬白く染まる。


「……効いたのか」


 誰かの声が、砂埃の向こうから聞こえた。


 視界が晴れると、グロズが片膝をついていた。巨躯の亀裂模様がこれまでよりずっと深く広がっている。


「まさか、権能そのものにぶつけてくるとは」


 グロズの声に、初めて驚きの色が混じっていた。


「お前、なんで一撃で怯んだ。防御無視の力なら、俺の一撃くらい余裕で潰せたはずだろ」


 ガルドが荒い息のまま問う。グロズはしばらく沈黙したあと、静かに答えた。


「潰す価値を見出せなかっただけだ」


「どういう意味だ」


「お前の一撃には迷いがなかった。守るための一撃と壊すための一撃は、同じ力でも質が違う」


 その言葉に、ガルドの表情が大きく揺れた。


「弟を守れなかった夜のことを、思い出しているのか」


 グロズの問いに、ガルドは目を見開いた。


「なぜ、それを」


「俺にも、かつて似た夜があった。それだけだ」


 グロズはそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。まだ戦意は失っていない。だがその赤い光には、さっきまでとは違うどこか静かな色が宿っていた。


「続きをやろう。今度は、俺も本気で応える」


 その言葉と共に、空洞に再び緊張が満ちていく。だがその緊張の質は、戦いが始まったばかりの頃とは明らかに違うものになっていた。


お読みいただきありがとうございます。続きも楽しんでいただければ嬉しいです。


ブックマーク・評価・感想をいただけると、今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。