↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベッタベタな異世界転生をしたあいつと同じパーティーにいるハズレ転生者の俺  作者: あさひ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/64

第34話 王都で、勇者は一人で立つ

お読みいただきありがとうございます。

第34話 王都で、勇者は一人で立つ


 王都からの第一報は、謁見から二日後、伝令の手によって届いた。ギルドマスターの部屋に呼ばれた俺たちは、公式記録の写しを前に並んで座った。


「討伐の功労者として、ヒカリ殿が国王陛下に謁見。勲章の授与と、次なる討伐への支援を約束された、とある」


 ギルドマスターが淡々と読み上げていく。俺はその文面を、少し離れた場所から目で追っていた。


「ヒカリさん、ちゃんと堂々としてたんですね」


 クレアが安堵したように言う。


「当たり前だろ、あいつは」


 ガルドが胸を張って答えた。


 記録の最後の一段落に、俺は思わず目を止めた。


「――功労者はヒカリ一人にあらず。魔法使い、戦士、聖職者に加え、支援を担う『イチ』なる者の観察と判断が、討伐の要であったと勇者本人より証言あり」


「イチさん、名前出てますよ」


 フィーネが淡々とその一文を指差す。


「なんでそんなこと」


「王が直接尋ねたそうです。当たり前のことを言っただけだ、とヒカリさんは答えたと、記録係の追記にあります」


 名前が公の記録に残る。これまでずっと避けてきたことが、俺の知らないところで、あいつの一言によって現実になっていた。不思議と、嫌な気分ではなかった。むしろ、何か重たいものが少しだけ軽くなったような感覚があった。


 王都からの記録に加え、数日遅れてヒカリ自身からの手紙も届いた。几帳面とは言えない字で、便箋にびっしりと書き込まれている。


「謁見が終わったあと、変な男に声をかけられました。イチさんに以前挨拶したという人でした」


 手紙の一節に、俺は目を止めた。


「イチさんは正当な評価を受けるべきだ、みたいなことを言われて、余計なお世話だと言い返してやりました。イチさんに近づくなら、まず私を通してください、と言ったら黙って帰っていきました。少し胸がすっとしました」


 その文面を読みながら、俺は何とも言えない感情に包まれた。あいつが俺の知らない場所で、俺のために戦っていたことに対する感謝と、それを一人で背負わせてしまったことに対する申し訳なさが、同時に胸を締めつけた。


「あの男、王都にも現れたのか」


「みたいですね」


 フィーネが手紙の写しに目を通しながら、表情を険しくした。


「イチさんだけでなく、ヒカリさんにも接触してきた、ということです。この街だけの相手ではないのかもしれません」


「厄介だな」


 ガルドが低く唸った。


「弟の墓参りの話はしばらく後にした方がよさそうだ。まずは、その男の動きを見極める方が先だろう」


「すみません、俺のことで」


「謝るな。お前のせいじゃない」


 ガルドの言葉に、俺は少し救われた気がした。


 手紙の最後の一文に、俺はもう一度目を通した。


「王都は綺麗な場所でしたが、やっぱり早くあの街に帰りたいです。空いた一席、そろそろ本物にしたいので」


 その一文を読んで、俺は思わず笑った。半年前なら、こんな言葉に何を感じればいいのか、うまく分からなかっただろう。今は、素直に嬉しいと思える自分がいた。


「イチさん、なに笑ってるんですか」


 クレアが不思議そうに覗き込んでくる。


「別に。ヒカリが、早く帰りたいって書いてただけだ」


「良かったですね」


 クレアの言葉に、俺は小さく頷いた。


 窓の外、王都へ続く街道の方角を見やる。手紙の中の彼女は、遠い場所でも変わらず、自分の言葉で立っていた。名前を公の場に出すことも、余計な手出しを拒むことも、全部、彼女自身の判断でやってのけていた。


 空いた一席が本物になる日は、もうそう遠くないはずだった。だが同時に、王都にまで及んだあの男の影のことを思うと、素直に喜んでばかりもいられない気がした。何かが少しずつ、俺たちの日常の輪郭に近づいてきている。その気配だけは、確かなものとして胸に残っていた。


お読みいただきありがとうございます。続きも楽しんでいただければ嬉しいです。


ブックマーク・評価・感想をいただけると、今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。