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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
14章 お祝い、サンタなコスズとクリスマス!
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契約、サンタとトナカイ!

 雪が降りそうで降らない、しんと冷えた空気が街を包む。

 分厚い雲が太陽を遮っている、一見すると鬱屈とした空模様だが、街の雰囲気は……人の心持ちはどこか晴れやかだ。


 そしてその答えは、液晶画面の向こうにあった。

 リビングのテレビに映る景色は、赤や緑で華やかに彩られている。


「スタジオの外にあるクリスマスツリーには、こんなにも綺麗な飾りがされているんですよ〜」


 などと、女性アナウンサーが大きなツリーを見上げて楽しげに告げていた。

 コートやマフラー、手袋を纏い、白い息を昇らせるアナウンサー。外はさぞ寒いのだろうな。


 だが俺には関係ないこと。

 暖房の設定温度を1℃上げて、カーペットを敷いた床に寝っ転がる。

 ザラメが日夜健気に働いているおかげで、今年の冬はぬくぬくと過ごせそうだ。


 テレビのチャンネルを変えると、今度はおせち料理の特集が流れてくる。

 懐かしい、お婆ちゃんの味だと。

 黒豆を口に入れて、リポーターがなんとも抽象的なコメントをしていた。


「お婆ちゃんの味……ねぇ」


 久しく食ってねぇなぁ、おせちなんて。

 腕を枕代わりにし、ぼうっと眺める俺。


 今日はやることも無いからな。

 テレビを点けっぱなしに、のんびり過ごすとしよう。年末年始の醍醐味を、たっぷり堪能するのだ。

 そう、ありふれた平穏を期待していた時だった。


「郡……トナカイに、なって……」


 幼いブリキのツカイマが、そんなことを言い出したのは。




 ――――


「あ? トナカイ?」


 しゃがみ込むコスズは、この間と同じサンタの格好をしていた。

 赤いコートに帽子を身に着け、自分の胴体ほどある大きな袋を担いでいる。


「そう……明日は、クリスマス……」


 帽子をかぶり直し、コスズは続けた。


「ワタシは、サンタさん……サンタさんには……トナカイ、必要……」

「俺は前にもやっただろ。ザラメかデウスにやってもらえ」


 俺の言葉に、コスズはふるふると首を横に振る。


「ザラメ……買い物……」


 そういや言っていたな。

「明日はクリスマスパーティーですからね! 沢山買い込んじゃいますよ!!」


 と、びっしり書き込んだメモを片手に飛んでっちまった。


「確かデウスも、準備があるっつってたな」

「町内会の……イベント……」


 今晩、サンタになって子どもにお菓子を配って回るらしい。

 今時のサンタは、煙突からの不法侵入ではなく、普通にインターホンを押して来るのだ。

 アイツはザラメさえ絡まなけりゃ、紛うことなきイケメンだからな。小さなお嬢さんたちに、初恋をプレゼントすることになるだろう。

 ……というか、人間社会に馴染みすぎだろあの神。


「デウス様のサンタさん……ワタシが、なる……」

「あっそ、頑張れな」

「だから、郡……トナカイやって……」

「お断りだ」

「郡……トナカイの才能、ある……」

「どんな才能だよ?! 俺はやらねぇからな」


 コスズに背を向けた。ぷいっ。

 するとコスズ、俺の前に回り込んで身体を揺さぶってくる。


「郡ぃ……」


 ぷいっと。


「お願い……」


 ぷいっとな。


 普段ならあっさり引き下がるコスズだが、今日はなかなか強情だ。

 それでも数回繰り返すと、コスズの動きが止まる。俺の背後で、黙り込んでいる。

 やっと諦めたか。テレビのリモコンに手をかけようとした俺に、滑らかな声が振り注ぐ。


「…………奥の手」

 

 意を決したように呟いて。

 手のひらに平らな銀色の物を乗せ、俺の前に差し出してくる。


「交換条件……」

「金(かね)で釣ろうってか? その程度で俺は……」

「ただのお金じゃない……ずっと前…………ワタシが人間だった頃の、銀貨……」


 ふむ。

 顔を傾け、銀貨を覗き込んだ。

 コスズの手のひらサイズのそれは、現代社会に流通する硬貨よりも1回り大きな財。


「ワタシの、宝物……」


 確かに“お宝”だ。

 照明に眩く輝く様は、自ら価値を物語っているよう。


「お前も、俺の扱いが分かってきたじゃねーか」


 銀貨を攫って手の内で握ると、体温が伝導していった。


「交渉成立だ」


 ゆっくりと起き上がり、テレビの電源を切る。


 コスズの髪から覗く瞳は――銀貨の煌めきに負けず輝いていた。

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