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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
13章 ごっちん!! 今日から俺がデウス様!
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リセマラ、ザラメちゃん☆ファイアワークス!

 気が済むまでデウスに擦られた後、俺はようやく拘束を解かれた。


 早くも、日が沈み始めている。

 解放された腕を高く上げて伸びをしていると、ザラメから声がかかった。

 

「郡さん、作戦会議ですっ」


 元に戻るための方法を話し合うんだと。

 俺とザラメ、デウスでちゃぶ台を囲む。


「ぶつかって入れ替わったんです。また頭をごっちんするのはどうでしょう?」

「最初にやっただろ」


 言って湯呑に口を付け、一気に飲み干す。

 俺が焼かれて項垂れていたタイミングで、既にデウスにど突かれまくっているんだよな。

 全く効果が無く、神の頑丈さに驚いたまである。


「うーん、何かヒントは……」

「当時のことを思い出してみよう、青年」

「って言ってもなぁ。曲がり角でお前とぶつかった以外は、特段何も無かっただろ。……強いて言えば、目の裏で火花が散るほどの衝撃だったぐらいか」

「火花ですか?」

「そんぐらいの勢いで衝突したってことだ」


 そこからは平行線。

 腕を組み、唸る3人。

 机に置いた菓子を摘んで糖分を補給するも、良い案は出てこない。


 そんな中、サンタのコスプレに似合う大きな袋を担いで、コスズがやってきた。

 俺の横にちょこんとしゃがみ込むと、袋を漁り始めた。


「じゃーん……」


 取り出したのは、トナカイのツノが付いたカチューシャだ。


「サンタさんと言えば、トナカイ……」


 そう言って、俺の頭にカチューシャを取り付けるコスズ。遊ぶな俺で。


「デウスにしろよ」


 トナカイの苦言に対し、小さなサンタはふるふると首を横に動かす。


「デウス様を……畜生には、できない……」

「俺は良いのか俺は?!」


 なんつー暴論。

 俺を何だと思っているんだこのガキは。

 そんな不満を意に介さず、カチューシャの角度を調節するサンタコスズ。


「似合う……可愛い……」


 頭の周りに花を浮かべ、ほくほく顔だ。

 その様子を見ていたザラメが、死んでいる目を煌めかせた。

 立ち上がって、素早く後ろに回り込む。


「トナカイなら、良い物があります!!」


 は?


 カチャッ。


 振り返るよりも速く、首に違和感を覚えた。

 纏わりつく冷たい感触に反して、首元ではチリンチリンと軽やかな音が響いた。

 デウスが鬼の形相で、ガタッと身を乗り出す。


 恐る恐る顎を引く俺に、ザラメは答える。

 まるで、クイズに対して自信満々に答えるガキみたいな朗らかさで。


「トナカイと言えば、首輪です♪」

「おお〜……」

「はぁ?! 今すぐ外せこのクソザラ……」

「代われ青年!!」

「あだぁ?!」


 ザラメにキレるよりも速く、動いたのは私怨に目を濁らせた男。

 俺の両腕を掴んで向かい合ったデウスが、大きく上半身を反らしたと思えば。

 バカみたいな勢いで頭を振り下ろし、ど突いてきやがった!


「てめっ、ど突いても意味ねぇだろーが!!」

「ふんっ!!」

「ごふっ!?」


 さっきよりも高火力の頭突きが飛んでくる。


「もう我慢の限界だ!! ザラメちゃん☆ファイアに飽き足らず、ザラメの首輪など嘆かわしい!!」


 ガン、ゴンッ!


「ザラメとペットなプレイをするのは私!! 青年に取られてなるものかぁ!!!!」

「はあああああああ?!」


 そうまで言われちゃ、俺も黙っていられない。


「俺だってこんな変態の身体まっぴら御免だ!! とっとと返せ俺の身体!!!!」

「変態の身体とは何だ! プラトニックラブなイケイケ神ボディだぞ!!」

「それを変態ボディっつーんだクソ神!!」

「何だとぉ?!」


 ガン、ゴンッ!

 男2人の突き合いに、たまらずザラメが割って入るも、


「ちょっと2人とも! もう止め……」

「うるせぇザラメは引っ込んでろ!!」


 デウスに一発お見舞いしながら、ザラメの言葉を弾き返す。


「私のフィアンセになんたる口の聞き方!! 夫として許せん!! こうなればもう1度縛ってでも、徹底的に“教育”を施してやろう!!」

「はあああやれるもんならやってみやが……」

「いい加減にしてください! ザラメちゃん☆ファイアワークス!!」

「「アギャアアアアアアアアアアア?!?!」」


 部屋一体を巻き込むザラメの打ち上げ花火。

 緑色の炎が、あちらこちらで爆ぜる。

 破裂の爆音が、身体を激しく揺さぶって。


 ――眼球の裏に火花が散った。




 一転して部屋が静寂に包まれる。

 俺とデウス、そしてザラメとコスズも、身体から煙を昇らせてぶっ倒れていた。

 うつ伏せになっていた俺は、煙の匂いに咳き込みながら顔を上げた。


「ゲホッ、ってぇ、このクソザラ……ん?」


 喉元に手を当てる。

 喉仏が震えると同時、爽やかさとは縁遠い声がする。首筋から離した手は、普段スコップを握り慣れている俺のもの。パーカーも、手首から胴体へと続くのは、いつも着ているパーカーの銀色だった。


 これは、ひょっとして……!?


 馴染みある身体に、思いがけないハッピーエンドに。込み上げる高揚感が擽ったい。

 口の端が持ち上がっているのが分かる。飛び上がりたくなっちまう。


「よっしゃあ! 元に戻って……」

「うわああデウスさんの身体になってますうう!」

「ザラメ……ぽよぽよ」

「なるほど。全員がザラメちゃん☆ファイアワークスを浴びたために入れ替わったと……流石は我がフィアンセ、実に興味深い」


 嫌な予感がする。

 さっきまでの興奮が、一瞬で引っ込んだ。

 恐る恐る振り向いた俺は、予感が的中したのだと悟った。


 不相応に敬語のデウス。

 無表情で自分の胸を揉みしだくザラメ。

 そして、堅苦しい言葉遣いでザラメをフィアンセ扱いするコスズ。




 ……俺は戻ったんだ。あとは3人で何とかしろ!


 目立たぬよう起き上がり、音を立てずに後ずさる。

 あとは回れ右からの、玄関目がけて猛ダッシュ――


「青年も、一緒だぞ☆」

「ぷぇ」


 俺の切実な願いは、俺の腕を掴むコスズの手――デウスによって砕かれた。

 コスズにあるまじき爽やかな笑みが、俺を絶望の淵へと叩き落とす。

 無慈悲にも事は進む。ザラメ――今はコスズが、早速手のひらに花火を宿した。

 そして逃げられないようにするためか。デウスの身体に入ったザラメが、俺の目の前に立ち塞がる。


「全員が元に戻るまで、リセマラです!」

「嫌だ!! 勘弁ちて!!」

「ザラメちゃん☆ファイアワークス……」


 抵抗も虚しく、大技は放たれる。

 あと何回、リセマラするんだろうか。

 

 弾けて乱舞する緑の閃光の中で。眼球の裏に火花を散らしながら、俺は心から叫ぶのだった。


「もう入れ替わりなんてコリゴリだぁああああ!!!!」






 ――――


 日が沈んだ冬の空。

 遠くの家で、季節外れの緑の花火が咲いた。


 1人のツカイマ、ニケルを競馬場に残して……


「デウス様、まだかなぁ」

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