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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
13章 ごっちん!! 今日から俺がデウス様!
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痛感、因果は応えて報いると

「デウス様〜……」

「な゙っ?!」

「ほえ?」


 青年としての私を真っ直ぐ瞳に収め。

 コスズはぎゅっと、背中に両腕を回して抱きしめる。自らの主だと確信して、青年の上着に頬を擦るツカイマ。

 私は誤魔化すように、甘えるコスズの頭を無造作に撫で回した。


「な゙、なな何を言っているコスズ!! ああ分かった、さてはお腹が空いているんだな!」

「……」


 汗の滲む手で、今度は帽子を深く被せ直す。


「食いしん坊なヤツだ全く、良い子にしていないとサンタは来な、い……」


 何故手が止まる。

 胸の奥で、心の端で。私が悲鳴を上げているのが分かったからだ。

 ……痛むのは、人間の身体だからか。それとも私が、このセカイに降り立った瑕疵ゆえか。


 コスズを見つめ返し、溜息を落とす。


「……良い子じゃないのは、私の方だ」


 青年よ。私は君にはなれない。


「コスズ、ザラメ。私は郡 遠弥でない」

「え?」


 目を点にするザラメ。

 コスズは黙って聞いている。


「今の私はデウス。訳あって青年と入れ替わってしまったのだ」


 そう告げると、


「入れ……替わったぁ?!」


 ザラメが声を裏返し、あわあわとまごつく。

 至極真っ当な反応だ。

 そんなザラメを前に、深く頭を下げた。


「騙してすまない」


 青年よ。私は君にはなれない。

 フィアンセに嘘をつくなど、到底できないのだ。


「デウスさん……」


 見限ってくれて構わん。

 私は君を裏切ったのだ。相応の報いを受けよう。

 顔が見えぬほど上半身を傾けた私に、ザラメは「頭を上げてください」と促して、一言。


「まだ混乱してますが……さっき手の甲にキスしたのが気持ち悪かったので、嘘の精算がてら燃やして良いですか?」

「ご褒美っ!!」

「正真正銘、デウス様……」


 呟くコスズの頭を撫でていると。

 ザラメが片手を掲げて言う。


「ん、ちょっと待ってください。郡さんの身体でデウスさんってことは、デウスさんの身体には郡さんが入っているってことですか?」

「そうとも」

「放っておいて良いんですか?! だって郡さんですよ!! 『デウスの身体で一攫千金だぜひゃっほう!!』とか言って神の力を濫用したりして!」

「まさか。いくら青年でもそこまでは……」


 シュォワアアアア!!


 刹那、何かが放たれるような不可思議な音。

 神としては、激しく覚えのあるものだった。


「おお〜……」


 窓から見えるのは、空から降りる光の柱だった。

 無数の白い星屑を束ねたそれが、雲をかき分ける。

 水色の空は、光を起点にしてラピスラズリの夜に変貌していた。

 まるでこのセカイで照らす、スポットライトだ。


「デウスの身体で一攫千金だぜひゃっほう!!」


 なんて有頂天な声が、頭に響く。


「……ザラメ。力を貸してくれないか」

「はいっ!」

「青年を締める」


 大きく一方踏み出す私に。

 コスズとザラメが互いに顔を寄せていた。2人揃って、目を輝かせて。


「デウス様、迫力いっぱい……」

「神様みたいですぅ!」

「神様なのだが?!」





 ――――


「これが神の幸運か!!」


 観戦席の最後列。

 グラウンドを一望できる絶好の場所に、俺は佇んでいた。


 圧倒的な光の帯が、俺の身体に降り注ぐ。

 身体に金色や金色の星々が纏わりついて、少しばかり擽ったい。

 身体が軽い。迸る全能感に脳みそが支配される。


 身体が光に包まれたかと思うと、瞬く間に弾け、前に見た神々しい格好になっていた。

 舞台幕を思わせる黒い装束。

 肩を纏う白い布に煌めく、銀色の飾り。

 衣装の裏地は瑠璃色で、彩った空の色と同じだ。

 光が弾けた余波で靡く裾の先――黄金の装飾が擦れ合い、シャラシャラと音を立てる。


 改めて、まさに神って感じだ。


 胸の奥から高揚感が溢れ。

 身体の芯から熱が消えていく。


【どうだい? デウス・エクス・マキナの力は――人の願いの結晶は】


 同じく光の内側で、リィンシーが問いかける。

 真っ白なローブが光を反射し、これまたキラキラと輝いていた。


「最っ高だ! これなら三連単……いや、億万長者も夢じゃねぇな!!」

【そりゃそうさ。願いを叶えることが、“彼”に与えられた本来の能力なんだから】

「“再起”じゃねぇのか? まぁいいや、何だろうが有効活用するまでよ!」


 周囲には暗示をかけてある。

 だからこの光の柱、瑠璃の空に俺の姿も、人間には認識されない。

 つまり周りの目を気にせず、神の力を使えるっつーことだヒャッハー!!


【にしても、君の魂はこの身体によく馴染んでいるね。因子が近いのかな】

「因子?」

【こっちの話】

「ふぅん、何でも良いや。このまま神として、狙いの馬にパワーを注入してやる! なぁリィンシー、できるよな?!」


 言うとリィンシー。腕を組み、歯切れ悪く返す。


【出来なくは無いけどさぁ、これ以上は後が……】

「お前だけが頼りなんだ!!」

【ボ、ボクだけが? ホントにぃ〜?】


 訝しむも、ニヤつきを隠せないリィンシー。

 あと一押しだな。


「ああ! お前にしか頼めない!!」

【も〜しょーがないなぁ】


 軽やかな声を合図にして、俺の手に杖が握られる。

 金色の持ち手の先には、アンティークな時計盤が埋め込まれていた。

 杖の表面に光沢が走り、瑠璃の目が映る。

 長針と短針の埋め込まれた円盤部分をなぞると、文字盤が浮かび上がった。


「流石リィンシー! 有り難く使わせてもらうぜ」


 神の力を身に受け、次に見定めるのは、スタートを待つ馬たちだ。


 さぁ、時は満ちた。


「神の力よ、俺の推し馬に力を!!」

「ザラメちゃん☆ファイア!!」

「ちょわっ!?」


 突如降り注ぐ緑の炎に、慌てて飛び退く。


「っ?!」


 跳んだ一瞬で、身体に重みが戻ってきた。

 そのまま体勢を崩した俺は、尻餅をついちまう。

 光の束は霧散して……


「はっ?! 戻ってる?!」


 黒い装束は元の服になっている。

 杖も無くなっているじゃねぇか!


「おい! どうなってるんだよ!!」


 リィンシーからの答えは無い。それどころか、いつの間にか姿を消していやがる。


 代わりに鼓膜を震わせたのは、穏やかすぎて逆に恐ろしい、女の声。


「こーおーりーさーん?」

「……っ?!」


 俺の前に聳える、2人の影。

 見上げたそいつらは、まさに般若の形相だ。


「ザラメに……デウ、ス……」


 絞り出した声は、か細く震えていた。

 冷や汗が滝のように流れていく。

 尻餅のまま後ずさろうとするも、柵がそれすら妨げる。


「袋の鼠だな」


 振りかかる俺(・)の声は、自分のものとは思えないほど冷酷で、ぞわりと全身が粟立つ。


「これには……その……」

「お仕置きの時間です」

「覚悟はできているな?」

「ぁ……まっ……」


 リィンシーがいないからか、神の力は使えない。

 詰め寄る2人に、俺は為す術なく……


「イギャアアアアアアアアアアア!!!!」

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