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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
13章 ごっちん!! 今日から俺がデウス様!
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接近、彼の身体で楽園へ!

 澄んだ冬の空が、私の心を映し出していた。

 鼻歌と靴音が、アパートの通路にリズムを刻む。


「むふふふ♡ 青年の身体なら、ザラメも拒絶しまい♪」


 いつもはザラメに素っ気ない態度を取られるが、彼女なりの照れ隠しなのだろう。

 そんなザラメも愛おしいが、やはり振り向いてほしい!!


「セカイの果てまで添い遂げてください」


 と言われたいのだ!!


 足は止めないまま、パーカーの襟元を正す。

 相手が青年であれば、ザラメは安心する。

 非常に悔しいが、青年といる時のザラメは何時にも増して楽しげなのだ。

 ……記憶になくても、覚えているのだろうな。


 であれば私は、青年を利用する。

 彼を演じ、自然とザラメとの距離を縮めるのだ。


 胸の高鳴りには、どうしてか懐かしさを覚える。

 青年の胸元に手を当て、ぽつりと。


「……羨ましいな、君は」


 口にした言葉は、すぐにかき消した。

 センチメンタルになっている暇は無い。

 ザラメとのハッピーエンドが間近にあるのだ!


「待っていたまえ、私のプリンセス♡」


 弾む心のまま、私はアパートの扉を開けた。



 ――――


「おかえりなさい、郡さんっ」

「ぐはっ!?」


 ザラメが、出迎えてくれただと?!

 溌剌としながらも慈愛を内包した微笑みに、自然と顔が綻んでしまう。

 いけない、鼻血を抑えねば。

 

 愛しのザラメが駆け寄ってくる。

 私の元へ真っ直ぐに。なるほど、ここは楽園なのだな!


「聞いてくださいっ! 喫茶こやけのクリスマスなんですけど、ザラメ、とびっきりのアイデアを……」

「ザラメ」

「はい?」


 振り向いてきょとんと首を傾げるザラメ。

 そんなザラメの前で、私は片膝をついた。

 優しく手を取り、そっと口づけを。


「結婚しよう」

「は、え……は?」

「しまっ……!」


 ザラメを前にして感情が昂ぶってしまった。


「えと……郡さん? 大丈夫ですか?」


 ザラメが覗き込み、探るように尋ねる。


「ひょっとして、朝のザラメちゃん☆ファイアが効きすぎちゃったんでしょうか」


 朝のザラメちゃん☆ファイア?! 

 何それ羨ましいっ!! ……では無く!

 不味い。ここでザラメを困惑させては、入れ替わった意味が無い。


 慌てて立ち上がり、出そうとしていた指輪をポケットの奥に押し込んだ。


「いやその……カフェのクリスマスってのは、具体的にどんなものを考えているの……いるんだ?」

「よくぞ聞いてくれました!!」


 弾むような声で答えたかと思えば、ザラメが腕を伸ばしてくる。

 ああ〜ザラメに手を引かれてるぅ♡

 ちょっぴり乱雑なのも唆るなぁ。青年の身だから、ザラメも気を遣うことなく……


「クリスマスと言えばサンタさん! ということで……」


 リビングまでやってきたザラメは、足を止め。

 何か企むような笑み(結婚したい)を浮かべる。

 そのまま閉め切ったカーテンの――不自然に盛り上がった場所に、目配せをして。

 手のひらを上にし、指先をカーテンに向けると元気良く告げた。


「出てきてください、コスズちゃん!!」

「メリークリスマス……」


 カーテンを広げて現れたのは、サンタの姿をしたコスズだった。


 真っ赤な帽子に、同じく赤のコートを纏い、瑠璃色の靴下を模したポーチを提げている。

 ブリキの白い肌や髪を赤の衣装が引き立て、華やかに仕上がっていた。

 帽子に付いたヒイラギのアクセサリーも、コスズによく似合う。


「良い子に……プレゼント……」


 柔らかな冬の日差しに包まれて。

 つま先を軸にくるりと回って見せる様は、さながら雪の妖精。

 ズレた帽子を被り直す姿も、微笑ましい。


「郡も、見て見て……」


 私の元へ、とてとてと歩み寄るコスズ。

 靴下の形をしたポーチから何かを取り出し、私に差し出す。

 袖からはみ出た小さな手には、マシュマロの袋が握られていた。


「お菓子……プレゼント……」

「ふふ。ありがとう、コスズ」


 菓子を受け取った私が、帽子の上から頭を撫でると。

 ほわほわと嬉しそうに花を浮かべていたコスズが、不思議そうに私を見上げた。


「完璧ですコスズちゃん!」

「そうだな、実に……すっげぇ可愛いぜ!」

「お菓子をあげたくなっちゃいますぅ」

「わた……俺もそう思うぞ!」

「……」


 ザラメと意気投合する私を、コスズは尚じっと見つめる。


「いやぁ嬉しいです。郡さんにも好評なら、お客さんも喜んでくれること間違いなしです! もっとこうした方が良いとかってあります?」

「ふーむ、帽子のサイズが少し大きいので、調節してみたらどうだ?」

「ほうほうっ。ありがとうございます、郡さん!」


 ――“郡さん”。


 ザラメがその名を口にする度、胸を針で突かれたような気分になる。

 私がこのセカイに降り立ってからずっと――私の中で駆け巡っていた激情が、呆気なく押し留められてしまった。


 彼の名が耳朶を打つ度、私がもはや“彼”では無いと思い知らされる。

 私の内にある“愛”は、私(・)の(・)も(・)の(・)で(・)は(・)な(・)い(・)のだと――残酷な事実を突きつけた。


「どうしました? 郡さん。あっ、さてはザラメのサンタ姿も見てみたいんですねっ♪」


 無意識に、縋るように胸に手を当てた。しかし私が感じるのは、淡白で規則的な拍動だけだ。


 ザラメは、こんなにも眩しいのに――


「……」

 

 不意に、きゅっと手を握る感触があった。


「コスズ?」


 見下ろすと、コスズと目が合った。

 帽子がまたズレたのに、整える素振りも見せず。

 真っ白な髪から垣間見えるエメラルドグリーンの瞳が、静かに男を捉え。

 小さな口を開き、彼女にとって――そして私にとって、最も馴染みのある名前を唱えるのだった。


「……デウス様〜……」

「な゙っ?!」

「ほえ?」


 いつもと同じ甘えた声だというのに、心臓が早鐘を打っていた。

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