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ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
13章 ごっちん!! 今日から俺がデウス様!
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誘う、オトナのセカイ!

 デウスの身体で赴いた競馬場。

 そこに居合わせたニケルが、俺に近づいてきた。


「珍しいな、デウス様って競馬に興味があるのか?」


 まさか入れ替わっているとは思うまい。純朴な紫紺の瞳が、見上げてくる。

 どう答えようか。

 折角入れ替わったんだ。ここでバレては、あまりに勿体ない。


「ま、まぁな。神として、人間の娯楽を心得ておこうと思ってな」

「勉強熱心だぞ……!」


 純粋に目を輝かせるニケル。

 なんつーか、幸せなヤツだ。


「なぁなぁデウス様、オレもついていって良いか?」


 頭頂部のアホ毛をぴょこぴょこ跳ねさせながら、ニケルが弾んだ声で聞いてきた。


「オレも人間の娯楽を学びたいんだ!」

「駄目だ駄目だ。この娯楽はオトナ向け。お前……じゃなかった、君にはまだ早い」

「ええ〜!」


 ニケルが不服そうに顔を顰めるが、お構いなし。

 俺は誰にも邪魔されず、1人で楽しみたいんだ。


 だが待てよ。

 こいつに競馬の楽しさを教えておけば、後々役に立つかもしれない。

 ザラメへの説得とかな。


 今の俺はデウスなんだし、ニケルも“俺”の言うことを素直に信じるだろう。


「仕方がない。見るだけな」

「やったぁ!!」


 バンザイして喜ぶニケル。


「そうと決まれば」


 おこちゃまの背を、俺はそっと押し――甘い言葉で囁きかけた。


「いざ征かん――堕落と退廃が織りなす、オトナの世界へ」

「おー! 何だかカッコいい響きだぞ!!」


 これぞ神の啓示。聖なる導きと言えるだろうな。

 浮足立った心地のニケルを率いて、戦地への門を潜(くぐ)った。




 ――――


「デウス様、競馬場って賑やかな所だな! お店がこんなに!!」


 ゲートの先に広がっていたのは、ニケルが大燥ぎするような娯楽の数々だった。


 フランクフルトや焼きそばといった屋台が賑わい、お土産コーナーには小さな馬のぬいぐるみが並んでいる。


 コイツからすりゃ、ちょっとしたテーマパーク気分だろうな。

 アホ毛を軽やかに弾ませ、瞳の中に星を瞬かせていた。

 俺も初めて来たときは、胸を躍らせ燥いだものだ。


「こりゃすごい……!」


 ニケルが立ち止まったのは、綿菓子の屋台だ。

 ここの店主、綿菓子作りにこだわっているらしく、競走馬の顔を再現した創作綿菓子がイチオシとなっている。

 それだけでなく、虹色の綿菓子といった可愛らしい商品もあり、ちょっとした有名店だ。


「どれ、何が良い」


 目を輝かせるニケルを一瞥し、財布をポッケから取り出す。

 この財布はデウスのものだからな。俺にとっては、痛くも痒くもない出費だ。


 するとニケル。


「いいよ、お小遣いあるし」


 と、自分のがま口財布を開く。

 ジャラジャラと小銭同士が擦れる音が響いた。

 見たところ十分足りるだろう。だがそれでは面白くない。

 というわけで、ニケルに1つ教えてやろう。

 オトナの在り方ってヤツをな。


「ニケル。このような場では年上に奢らせるのものだぞ」


 言いながら、親指と人さし指で財布の金具を閉める。

 すると、俺の挙動を不思議に思ったのだろう。ニケルがきょとんと見上げてくる。


「そうなのか?」

「そうとも」

「でもなんか悪いし……これぐらい、自分で払えるぞ」


 と、財布の金具に手をかけるニケル。


「ニケル。自分で全てを賄うことだけが、オトナになるということではない。時には相手を頼ることも必要だ……郡青年のように」

「え、えと……何でそこで郡が出て……」


 疑念を掻き消す、咳払い。

 そしてニケルを勇気づけるべく、幼い肩に手を添えた。


「ザラメやデウスに、もっと甘えても良いのではないかな?」

「でも……」

「オトナに、なりたくないかね?」

「うっ」


 俺の言葉に、ニケルは戸惑いながらも財布をポッケに仕舞った。


「……分かった。デウス様のお言葉に甘えるよ。じゃあ、この白い馬の綿菓子が欲しいな」

「おおっ、シュガーロットか!! 見る目があるな、ニケル!」

「そ……そうか?」


 顔をほんのり赤くしたニケルを横に見つつ。

 1つオトナになったニケルへの祝福として、デウスの代わりに出しておくとしよう。


 なんてことを考えているうちに、ニケルが綿菓子を受け取り。

 満面の笑みで、無垢な瞳で俺を穿ってきた。


「ありがとな! にしても、今日のデウス様はいつもと雰囲気が違うな。まるで別人みたいだ!」

「ギクッ?! そ、そそ! そんなわけ、あるまい! 私はまごうことなきデウスだ!!」

「?」


 慌てて喋るものだから、舌が空回って。

 手振りはぎこちなく、目線はあちらこちらとふらつく。


 そんな俺の挙動に、首を傾げるニケル。

 しまった、怪しまれたか。何か別のものに注意を向けねば……!


「ほ、ほらニケル! 馬を見たくないか?!」

「おおっ、見たいぞ!」


 ニケルの両肩を押さえ、方向転換。

 一瞬で華やいだニケルの顔に、俺は胸をなで下ろした。

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― 新着の感想 ―
二ケルに大人を教えてあげるデウスもとい郡くん、言ってることはかっこいいけど、その財布デウス様のじゃろ!
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