表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
13章 ごっちん!! 今日から俺がデウス様!
PR
78/79

ごっちん!! 俺とデウスの一大事!

 師走の初頭。寒気が居座るこの時期は、分厚い上着がないと肌寒い。


 見上げれば、鮮やかな青が広がっている。瑠璃の宝石を砕いて塗りたくったような色彩が、ずっと遠くに感じられた。

 細長い雲が1列に並ぶ……うね雲だったか。天上の青と相まって、澄んだ海を思わせる。

 息を吸えば、冷気が鼻の奥で染みていく。

 吐息は薄い靄となって、空気へと溶けていく。


 極寒とまではいかなくとも、普通は長居したくない気温。

 だが俺の心はあったまっていた。

 それはもう、ぽっかぽかに。銀のパーカーを脱いだって、冷えを感じないだろうよ。


「久々に相棒の出番だな」


 黒いシャベルを担ぎ、住宅街を早足で進む。

 足取りは軽く、胸が高鳴るのを感じる。


 佐藤から聞いた、埋蔵金の噂。何でも、ヤツの子孫が埋めた財宝が、佐藤家の裏山に眠っているのだとか。

 第2のキョンシーという可能性も考えたが、掘ってみなくちゃ分かんねぇ。

 アイツの実家は太い。子孫はザラメを生み出したってのもあるし、一攫千金のお宝が埋まっていてもおかしくねぇな。

 つーか、きっとある。夢と希望が俺を待ってる。


 湧き出る情動が両脚をリズミカルに跳ね上げる。

 身体に当たる風が気持ち良い。水色の髪も、楽しげに靡いている。


 早足は小走りへ。そしてついには疾走へ。

 カーブミラーに目もくれず。

 浮かれた気分のまま、俺は十字路を右に曲がって――。


「あだっ?!」

「なっ?!」


 ごっちん!!


 身体の前面……というか頭に走った鈍い衝撃。

 眼球の裏に火花が散った。




「ってぇ……」


 アスファルトに、シャベルの金属音が響く。

 ぶつかった弾みで尻もちをついたまま、ゆっくりと顔を上げる。

 目の前にいるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 あれ……俺?


 口をぽっかり開けたまま、眼前の男を凝視してしまう。

 それもそのはず。頭を押さえ、同じようにしゃがんでいる男は、俺と全く同じ姿をしていて。


 ()が手を差し出し、俺の声で喋り出す。


「すまない、怪我は無いかね?」


 そして目の前の俺を見つめ……そのまま固まっちまった。


「え、な……どうして、私が……?」

「ぇあ? ……ん、この声って……」


 思いがけず喉元を押さえる。

 俺が発したはずの声は、俺のものじゃなかった。

 咳払いをしてみても、自分の声が出てこない。

 そしてこの声、すっげぇ聞き覚えがある。


 喉元から離した手は色白で、俺の手よりも大きい。手の甲には荒れが無く、爪も全て同じ長さに揃えられていて。

 手だけ見ても、機械のように精巧で秀麗だった。


 ようやく気づく。

 今俺がいる所は、ぶつかってすっ転ぶはずの場所じゃないと。

 俺が持っていたシャベルも、()の傍にある。

 一方で俺の真横にあるのは、手提げの鞄。それと、鞄からはみ出た青い冊子。


「なんだこれ?」

「み、見ないでくれたまえ……!」


 取り上げようとする手を躱し、素早く本を回収する。

 スケジュール帳サイズのそれは、軽さの割に厚みがある。

 どれどれとページを捲った俺は、半ば無意識に顔を冊子から遠ざけた。


 本にはザラメの写真が整然と並べられている。

 怒気の籠もった笑顔で俺を燃やすザラメ、カフェで客と仲良く話すザラメ、いつか使ったメイド服をひっそり着てうっとりするザラメ、ニケルに抱きついて昼寝をするザラメ。絶対盗撮だろ。

 俺たちが前に行った旅館で、浴衣を纏ったザラメの写真もある。しかもローアングル。


「きもっ」

「きもっ?!」


 ちなみに表紙には、“My sweetheart”と印字してある。

 中身に合わない西洋風のフォントで。

 ムカつくぐらいの達筆で。

 高級感溢れる金色で。


「こいつやべぇな……」

「さっきから酷くないかね君?!」

 

 ザラメの写真集(非公式)とか、こんなの持ってるのデウスぐらいだ、ろ……。


「ちょっと待て」


 起き上がった俺は、()の隣に回り込む。

 カーブミラー越しに見えるのは、立っているデウスと、しゃがみ込んだままの俺で――。


 鏡が映す真実に、俺とデウスは見つめ合う。

 互いに()()()姿()を指差しながら。


「もしかして……」

「俺たち……」

「私たち……」


「「入れ替わってるうううううう?!?!」」



 冬の空に、俺たちの声が重なった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ