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犬も歩けば刀を握る

相変わらず混んでも空いてもない電車の中、世界(せかい)は今日も会社に向かっていた。


正式に『第三世界』のCBT(クローズドベータ)が決まり、東京で初日に行われる公開イベントの存在が発表された。イベントが近づくにつれて私の利用する駅や電車にもその告知となる広告が増えていった。


会社に着くと雰囲気がいつもと違うのを感じる。

それぞれ忙しさが増しているのは想像に容易いが、何というか…忙しさの中にも浮き足だった様な雰囲気も感じる。


実際、『第三世界』の開発チームが発足してから初のイベントなわけで、周囲の期待値は相当に高まっている。


「よう!ついにここまで来たな…」


「まだ始まってすらないですよ」


私はイベント前の最終調整で獣部に来ていた。

今回は初お披露目ということもあり、大衆受け狙いとスポンサー企業の強い意向もあって獣部が…というより犬系モンスターがイベントの主役(メイン)となる。


「犬飼さんは当日有休ですか?」


「…ん?馬鹿言え!俺たちが主役のパーティーに休めるかよ」


「え?当日何か仕事あるんです?」


「見守るのも仕事のうちってもんよ」


何か絶妙に噛み合ってないのを感じつつ、シミュレーションルームへと足を運ぶ。

(さぁ、今回は侍で行きますか…)


ゲームを起動し、現れたのはコボルト…ってあれ?

「コボルトってこんな見た目でしたっけ?」


いつものコボルトは剣と盾を構えた二足歩行のワンちゃんだ。が、今回現れたのは明らかに和風な見た目で、その手には刀が握られていた。


向けられた刀に思わずこちらも刀を構えて牽制するが…(犬なのに様になってるのおもろ過ぎるだろ)と内心動揺していた。


始めこそその見た目に拍子抜けしたものの軽々と切り伏せていく。モンスターの消失エフェクトが輝く中、刀を収める私の前にまた1匹のコボルトが現れる。


やれやれと再び刀を構える私の視線の先、そのコボルトはいなかった。


『最速最短の一閃(不可避の一振り)』


次回もう少しバトル要素続きます。

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