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楽しいお仕事

「うちの勇者さまでも朝は弱いってか?」


 タイムカードを押してオフィスに向かう途中、そんな軽口を叩いてきたのは会社の2年先輩である犬飼さんだ。2年といえど向こうは大学出なわけで、歳自体は結構離れてると思う。


「いやいや、勘弁してくださいよ〜」


突然の声かけに無難なことしか言えなかったが、決して苦手なわけではない。むしろ後輩をよく気にかける良い先輩だと思う。


 「実は今作ってる子がめっちゃビジュ良くてな。モーション入れたらチェックしといてくれ」


 私の働く アルカナ社は、国内外問わず圧倒的シェア率を誇るゲーム会社だ。そんな大手企業であるが故に私以外の社員はほとんどが有名大学卒なわけで、皆優秀なのだ。

 そして今、アルカナ社が最も力を入れて開発しているゲーム『第三世界』は ARとVR二つの要素を併せ持つRPGで、配信者(ハンター)はVR機器を用いて各地のランドマークにいるモンスターと戦う体験ができる。一方、視聴者(スペクテイター)はAR機器を用いて現実世界の各ランドマークでその戦いを観戦できるという仕様だ。


 犬飼司(いぬかいつかさ)は『第三世界』開発の獣部に所属している。この会社の珍しい所は、一般的に製作工程で分ける部署をモンスターの分類で分けている。なんでも、その方がよりリアルな生態のモンスターを作れるらしいが、人材豊富なアルカナ社だからこその戦略なのだろう。


 「良いですけど、クラスは何ですか?」

 「伝説級(レジェンドクラス)だったかな?」

 「うわー、残業確定ですわ」


 そんな嫌そうにした私に無言で頑張れと言わんばかりにエナドリを手渡した先輩を見送りながらため息をついた。



説明多い回ですがこれでもだいぶ削りました。説明を自然に差し込んでくる小説家ってやっぱすごいんだなって。

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