王道バトル展開
バーチャル世界、誰もいないイベント会場に3人が現れる。同刻、彼女達のアバターが拡張された現実世界に映し出される。
「なるほど、トリトリと比べると体が重い気がする」
「多分これが原因かな?」
緑川玲奈が指し示す方には『Lv.1』と表示されたマークがある。第三世界はレベル制が用いられている。モンスターを倒すほどレベルが上がり、ステータスポイントとスキルポイントが貰える。その両方を好きに割り振ることで自分だけのキャラを作れるということだ。
「おっと、早速お出ましみたいだよ」
ステージ前方にコボルトが3体現れる。盾と剣を構えた一般的なコボルトだ。頭の上には『Lv.3』という表記がある。改めて説明するならコボルトは日常級で同レベルの剣士なら数回斬りつけるだけで倒せる。今回現れたLv.3も彼女達からしたら大差ない。前衛も後衛もなく駆け出した3人によってあっという間に倒されるのであった。
「彼女達凄いですね…魔法使いも弓使いも本来後衛職なのにあっという間に接近戦で倒しちゃいましたよ!」
「弓使いの緑川と魔法使いの雪代はどちらも高機動力が売りのプレイヤーですからね。あの程度の相手なら盾を構えてる以上、接近して魔法を当てる方が確実と考えたみたいです」
もちろん低レベルとはいえLv.1の彼女達ではただ突っ込むだけで勝てる相手ではない。にも関わらずあっさり倒せてしまうのは彼女達の技量あってこそだろう。実際、素人目では分からないほど小さな駆け引きを行い、それぞれが役割に合わせた最適解を出している。だからこそ簡単そうに見える。
「楽勝ー!」
「魔法…タメに少し癖があるわ。高レベル相手なら接近するのはもう少し工夫してからかしら」
「弓矢はリアルカウントなのね。それと箙を背中に背負うと速射がやり難いわ。」
流石と言うべきか、あの一瞬の攻防で各々の役割を理解し、そこから想定される戦闘パターンを構築している。『Lv.2』格上を倒したことで得た経験値によりレベルアップする。結果、割り当てたスキルポイントにより得たスキルでパターン構築はより多彩になる。新たに現れたコボルト『Lv.7』もレベルが上がったとは言え先程と同種ではまるで相手にならなかった。
会場も盛り上がる。それは先に挑戦した二組と比較すると正に圧倒的な速度で前座を片付けてしまった彼女達への期待の表れだ。しかし次の敵はそうはいかない。先の二組が手も足も出ずに散った相手が待ち受けている。
侍コボルト『Lv.15』そのランクは噂話級と設定されており、レベルもランクも今までとは段違いなわけだ。
「茜!気をつけて!1発でも当たれば終わりよ」
「わかってる任せて!」
剣士の空野茜が飛び出す。
「援護する!」
その横を2本の矢が追い抜き、侍コボルトの元に着弾する。相手の選択は迎撃。飛んできた二つの矢を一振りで薙ぎ払う。しかしそれは悪手だ。
薙ぎ払うことで刀の鋒は明後日の方を向き、飛び込んだ茜に隙を与える。
"パワースラッシュ"
大きく振り下ろされた剣は侍コボルトを両断するが、そのまま追撃はせず左後方へ回避する。
慌てた侍コボルトは刀を切り返し反撃するが当然空振り。そればかりか迫り来る"火球"を正面から受けてしまう。そして怯んだ隙に"パワーアロー"
先程とは打って変わって威力の高い弓矢が侍コボルトの肩に刺さる。
「凄い…」
「はい、簡単そうにやってるけど相当慣れのいるプレイングですよ」
弓矢を放つタイミング、これがズレるとただ別々の攻撃として対処されてしまう。パワースラッシュのタメ始めるタイミング、相手と適切な距離でタメ始めないと空振るかガードされていただろう。そして魔法のタイミング、先の戦いで癖を瞬時に理解したからこそ適切なタイミングで放つことができた。放つのが早ければ味方ごと燃やしていただろう。
やはりプロゲーマー…恐るべきはこれらのタイミングを測る感覚は経験から得られるものであるにも関わらずほぼ初見でこなしてしまったことだ。
その後も侍コボルトが必死に応戦するがただの一振りも刀が当たることはなく、じわじわと削り倒されてしまった。彼女達がログアウトし、ステージに上がったとき会場は今日一の歓声に包まれた。
あのー…まだ私らの番が残ってますが?
事前に根回ししてるイベントで欠員なんて出るわけもなく…。




