邪道バトル展開
そう、よくよく考えればおかしな話だ。
欠員?招待はチームに送っているはずだからそのチームメンバー全員が参加できないことなんてあるのか?ましてや国内最大手となるあのアルカナ社の新作ゲームの体験会だぞ?プロチームだってスポンサーありきのいわばビジネスだ。このビジネスチャンスを捨てるチームなんているのかな?
私の中でじわじわと込み上げてくるドッキリ説がどうしても頭から離れない。
「先輩、大丈夫ですか?」
「え、あっはい。と言うか鬼灯さんこそ大丈夫ですか?」
今にも緊張で死にそうな顔をした彼女を見て驚く。普段の明るい彼女からは想像できないほど不安そうにしているのには理由があった。
「実は私、まだモンスター倒せたことないんです」
第三世界の開発において、実はモンスターが出来上がった時点で勇者チェックが入るわけではない。作った本人だったり、各部署のゲーム経験者だったりが遊び尽くしてから勇者の出番がやってくる。
だから当然彼女も多くはないものの、プレイ自体は慣れたものだと思い込んでいた。しかしだからといって…
「安心してください。モンスターを倒したことがない事と楽しめない事は別だと思います。」
「…それに、初イベントで初討伐なんて…最高じゃあないっすか?」
「…はい!」
「全力で楽しみましょう!」
ステージでは3人のインタビューが終わりいよいよ私達の番と紹介される。誰も求めてないのかも知れない。それでも今、二人で全力で楽しむと決めたからには(俺たちは俺たちで楽しませてもらうよ!)
ステージでのインタビューを終えひと段落ついたエレメントモンスターの3人はこの後にもプレイする人達がいると知り、視聴者も体験してみようという話になった。
どうやら格好からして女性のほうが弓使いで男性の方は道化師かな?
うちらのときとは違ってコボルトは2匹しか出てこないみたいだね。お互いが気づき武器を構えて対面する…。
「さぁ、お手並み拝見だよ!」
まずは先制攻撃、放たれた弓矢はコボルトの前の地面に突き刺さる。弓使いは後衛にも関わらずそもそもの攻撃間隔が短い、その分スキル補正のない通常射的の命中率はプレイヤースキル依存になる。つまりこれだけの距離当てるには弓道なりなんなりをやっていないとほぼ不可能な設定だ。
「大丈夫!当たる方が難しい設定だ。こっちにヘイト向けて近づいてきて貰えば十分!」
「はい!」
剣を振りかぶったコボルトに対し、その道化師は…
「嘘でしょ?」
そう呟いたのは空野茜。この会場で、視聴者の中で唯一この事実に気付いたのは彼女だけだった。
「解説どーぞ?」
そんな彼女の様子に気付いた緑川玲奈が尋ねる。
「うちは最初のコボルトと戦う時にあえて何度か攻撃を受けてみたの。このゲームにパリィ的要素が含まれてるか確認するためにね」
「結果は?」
「4回中2回。そこでうちが出した結論は回避こそ最適解であること。幾らか経験を積んで初めて選択肢に上がる高等テクニックなんだって」
実際この判断は正しい。
相手の物理攻撃に合わせてタイミング良く攻撃を繰り出すとパリィという判定が適用される。パリィは相手の攻撃とこちらの攻撃を相殺するため、こちら側にダメージは還らない。更には実質スキルではないためC.Tは存在しない。そんな最強ともとれるパリィにも弱点がある。ただひたすらに出し難いのだ。
パリィと判定されるタイミングはごく僅かで、且つ役割によってここからマイナス補正が入る。
例えば判定される時間を0.5sとした時、剣士であれば0.5s×60%で0.3s、守衛であれば0.5s×100%で0.5s、暗殺者であれば0.5s×10%で0.05sとなっている。傾向としては役割の移動プラス補正に比例してパリィマイナス補正が入る。
成功率が100%でないのなら相手の攻撃をもろに食らうリスクを考えると、初見の現状では実に不可能な数値となるため、空野茜が断定した様に回避が最適解となる。しかし、しかしだ…
なんとその道化師は襲いかかる2匹のコボルトの剣撃をそれぞれパリィで弾く。
「今です!」
「流石にこの距離なら…外さない!」
"パワーアロー"が1匹のコボルトを射抜く。"マジカルエッジ"残った1匹に七色に輝いた後赤色に光った短刀がヒットする。2匹のコボルトが粒子となって消える。
その後現れた『Lv.7』コボルトも道化師がパリィでひたすら弾き続け、弓使いが遠距離で射続けることで難なく倒す。
こんなことできるのあいつしかいない…。プロゲーマー3人が道化師の正体に気付いた頃には侍コボルトが粒子となって消えていた。
いつも見ていただきありがとうございます!
もうすぐep.15を迎えるのですが、ここまで来るのめっちゃ早かった気がします。イラストとかもまだまだ描き足りないので引き続き並行して描いていこうと思います。




