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Q.デート? A.かもしれないです。

会場に入るなりホールとは思えないほど広大さを感じる。今日というこの日のためにホールは第三世界仕様に描き変えられ、天井にはやはり見知ったモンスターのホログラムが投影されている。一見賑やかな会場。とはいえ社員権限で先行入場をしているため人混みはない。


「先輩!今のうちにどんなブースがあるか見てみましょ!」


「良いですね。興奮して転ばないで下さいね(笑)」


そうやって揶揄っていると、会場の奥から誰かが手を振りながらこちらに向かって駆け寄ってくるのを察知する。


「おーい、お二人さーん」


どうも、と頭を下げた先には少し高揚した様子の犬飼先輩がいた。


「おはようございます。公開イベントいよいよですね!犬飼さんはお一人で来たんですか?」


「いや、獣部の先輩達と来てるぜ」


相変わらず仲良いな〜的なことを考えていると、私らを見てニヤニヤし始めた犬飼先輩がとんでもないことを言い出す。


「お前らデートか?」


ヒュン。会場全体がまるで急に静まり返った様な静寂を錯覚する。(え、とぼけるべきか?それとも希望的観測を込めて「はい」とか言っとくか?なんて答えるのが正解だ?黙秘が最良か?)もうなんか兎に角いろいろな思考が瞬間的に巡らされる。


「は、はい。」


(え!待って!?今、俺なんて言った?)

やばい、彼女の顔が見れない。めっちゃ後ろから視線を感じる。今振り返ってはいけないことだけはわかる。


「そうなんですよ、楽しみにしてたんですからね!ってか犬飼先輩、聞いてくださいよ。この人今日有休使って来てるんですよ」


「マジかよ如月!お前まじの勇者やん」


良かった。耐えた?みたいだ。その安心感から犬飼先輩の揶揄いはそこまで効かなかったけど、それはそれとして犬飼先輩が作ったモンスターは今度フルボッコにしよう。


「んじゃあんまり邪魔したら悪いし行くわ、楽しんでな〜、お二人さん」


「「お疲れ様です」」


犬飼先輩が獣部のグループと合流するのを二人で見送ったあと改めて窮地に立たされたように思考を巡らせる。(え?さっきまでの雰囲気で会話していいんか?)


「先輩、デートのつもりだったんですか?」


「くっ」


「私、仕事で来てるんだけどな〜」


よし、(こいつがモンスター作ったら真っ先にボコろう。完膚なきまでに!)来年度の目標が今決まった。


開場まであと30分。

くだらない雑談をしながら会場を一周し終える。

最後に来たのは虫部のブースだ。客層の好みに配慮したのか他ブースに比べると小さいような気がする。

しかし、実を言うと私的推し部はこの虫部なのだ。

虫というのは生物の中でもその多彩さが際立つ。生物種のうち約半数が昆虫だという話もある。それほどまでに種類が多い。更には武器となる生来の機能。鎌や毒針、鋏に糸などあまりにもゲーム向きだ。

だからと言うべきか虫部の作るモンスターと戦うのは毎回新鮮で楽しい。


「お疲れ様です。ほたるさん今日来てませんか?」


準備をしていた虫部のお姉さんに声を掛ける。この忙しい時に誰よ?と迷惑そうな表情をされるも見知った顔と分かるとはっ、とした様に表情を切り替える。


「誰かと思えば勇者くんか。ほたるちゃんがこんな人多いとこ来ると思う?」


初イベントならワンチャンと思って聞いてみたけど流石に無理でしたか。相変わらず社交的な付き合いが苦手そうな同期の心配をしてはみたが別の意味で杞憂だったようで安心した。どうせ今頃は飼っているヘラクレスでも見つめてニヤニヤしているのだろう。


「先輩って顔広いんですね…」


「部署の性質上っすね。そういえばそっちこそ箱入りなのに犬飼さんとかよく知り合ってましたね」


「あの人私の導入教育の先生やってましたから」


「そりゃご愁傷様。」


(指導側とか絶対向いてないだろあの人)

私や犬飼先輩みたいなのは完全感覚派だから人に教えるの向いてないと思う。



そうこうしていると開場のアナウンスがホールに響く。いよいよイベントが始まるみたいだ。念のため携帯に入れたスケジュール帳を確認する。


10:00 一般開場・各ブース展示

13:00 公開イベント

16:00 イベント終了

17:00 閉場


「とりあえずブースも見終わったし公開イベントまでカフェとかで時間潰しますか?」


入場する人達とすれ違いで会場を後にし、今日見た各ブースの話をしながら近くのカフェへ向かう。


さぁ、イベントはまだ始まったばかりだ!





天海蛍[あまみ ほたる]:

虫部に所属する主人公の同期。

自身の興味が無いことにとことん関心を持たないことと若干の人見知りもあり社交的な付き合いは苦手。逆に自身の"好き"にはめっぽう感情を表にだすという一面もある。

彼女は甲虫を愛している。それ故の生物的解像度が高いモンスターデザインは部署内でも多くの関心を集めている。

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