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婚約者に裏切られて、知らない花婿と結婚したら、なぜか幸せです  作者: pinecone


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06話 これからのこと

——18時30分。


インターホンが鳴った。

モニターを見ると、そこに映っていたのは。

昨日、隣に座っていた“旦那様”。


(鍵でも忘れてしまったのかな?)


ここは自分の家のはずなのに。

何故インターホンを鳴らしたのだろうと考えながら、インターホンの通話ボタンを押した。


「…はい」


一瞬迷って、応答する。


「あ、咲さんですか?大地です」


聞き心地のいい落ち着いた声。


「入っても大丈夫でしょうか?」


(なんて丁寧な人)


「あ、はい…えっと、このボタンですかね?」


ぎこちなくオートロックの"解除"ボタンを押す。


「ありがとうございます」


そう聞こえた後、ぷつっと通話が切れる。



大地が家に着くまでの数分がとても長く感じる。

何となく姿見で自分を確認し、手櫛で髪を直す。

納得したところで玄関へ。


鍵が開く音。

ドアが開く。


スーツ姿の大地と目が合う。


「…あ」


大地は少し驚いた。

リビングにいると思っていたからだ。

玄関で待っていた咲。

少しソワソワしながら。

その姿が愛しく感じる。

今まで感じたことの無い感覚だった。


「あの、えっと…お帰りなさい?」


ぎこちない出迎えの言葉。


「ただいま」


と返し、大地は柔らかく笑った。



スーツから少しラフな服装に着替えた大地がリビングにやって来た。

同じ空間で立ち尽くす。


「……」

「……」


沈黙。


相手の様子を伺う2人。

やがて大地が、口を開いた。


「えっと…この近くに美味しいお寿司屋さんがあるのですが、行きますか?」


(いや、その前に話すことがあるのよね!?)


内心そう思いながらも、“美味しいお寿司屋さん”というワードに心が奪われる。


「はい、行きます…!」


急いで外出の用意を済ませる。

待たせている大地に声をかけ、2人で部屋を出た。



お寿司屋さんは徒歩10分程のところだ。


咲は大地の半歩くらい後ろを歩いていた。

その位置から、大地を観察する。

視線に気付き咲を見ると、目が合った。

大地が『ん?』という表情で、少しだけ、口角を上げる。


(…う)


思わずドキッとして目を逸らす。

でも。

見ているだけでは、何も分からないままだ。

状況を聞けるのは、彼だけ。

気持ちを整え、日中に考えていた質問をすることにした。


「あ、あの…だ…大地さん!」

「…はい」

「私たち…その…本当に結婚、したんですよね?」

「はい、そうですね。昨日、婚姻届けも提出していますから…」


(提出済みなんだ!そこまでするの?!)


動揺しながらも質問を続ける。


「ええーっと…そうなんですね。それでその…この結婚って…」


言葉を選びながら。


「“いつまで“なのでしょうか?」


ピタッと大地が止まる。


咲は。

当然、期間限定だと思っていた。


(半年か1年か…周りの人が不自然に感じない期間…かな)


次の新居や仕事の事も考えないといけない。

どれくらい猶予があるのだろうか?

そんな風に考える。


だが、大地からは意外な返事だった。


「そうですね。しいて言うなら、“ずっと“でしょうか。」

「ずっと…?」

「はい、“ずっと”です。」


大地は、まっすぐ咲を見て答えた。


「僕はそう望んでいますが……咲さんは、どうでしょうか?」


(…え?)


どうでしょうかと問われ、戸惑う。

まさか自分に選択権あるとは思っていなかった。

言葉に詰まる。

咲の困惑した表情を見て、


「…やっぱり、嫌…ですよね」


大地の表情が少し曇った。


「ち、違います!」


思わず強く否定する。


「嫌とかじゃなくて…」


むしろ…


「そうじゃなくて…大地さんが無理しているんじゃないかって思って…」

「そんなことありませんよ...咲さんが、嫌じゃなくて良かったです」


安堵する大地。

その表情を見ると、本心のようだった。


(本当の”結婚”をしたんだ…私。…でも)


けれど、疑問ばかりだ。

顔も知らない私と、どうして結婚しようと思ったのか?

しかも。

この人は、この結婚を続けるという。

聞きたい事が沢山あったけど。

”ずっと”なら、一番聞きたいことは…


「じゃ、じゃあ…連絡先を交換しませんか?」


大地が『あっ』という表情で固まる。

結婚式まで済ませたのに。

お互いの連絡先を知らないなんて。


笑いが込み上げてくる。


「はははっ…すみません、連絡先。まだ交換してなかったですねっ」


そう言ってスマホを取り出す。

あどけなく笑う大地。

それにつられて咲も笑う。

笑った顔の大地は、少し幼く見えた。


(こんな顔もするんだ…)


くすぐったい気持ちの中。

2人の“連絡先“欄に、お互いの連絡先が追加された。



昨日、出会ったばかりの2人。

心の距離が、少し近くなる。

他愛のない会話をし、お互いを知っていく。


会話は、お店から出た後も尽きなかった。



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