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婚約者に裏切られて、知らない花婿と結婚したら、なぜか幸せです  作者: pinecone


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5/12

05話 新居

——翌朝


「ん…」


カーテンの隙間から日が差す。

目が覚めると知らない天井。


(…ここ、どこだろう?)


ゆっくり体を起こす。

窓の外を見ると、都内を一望できる景色が広がっていた。

まるで記憶喪失にでもなったかのような感覚である。

ふと、左手の薬指を見る。


(…夢ではなさそう)


恐る恐る扉を開ける。

リビングには誰もいなかった。

その代わり。

テーブルの上に、一枚のメモと鍵が置かれている。


——咲さん


おはようございます。

昨日はお疲れさま。

どうしても今日は休暇が取れず、申し訳ありません。

仕事に行ってきます。


キッチンに軽く食べられるものを用意しています。

よろしければどうぞ。


家のものは、どうぞご自由にお使いください。


荷物は、玄関右のお部屋にまとめています。

お部屋の解約も済んでありますので、ご安心ください。


本日は18時30分頃に帰宅予定です。

もしよろしければ、一緒に食事でもいかがでしょうか。


——鈴木大地



丁寧なメモ。

だけど。

目覚めたばかりのせいなのか、処理が追いつかない。


(部屋の解約って…私の…よね?)


分からないことだらけ。

連絡先が、どこかに書かれてないかと裏返してみる。

(ない…か。)

仕方がないと、メモを置く。

主の帰宅まで待つしかなかった。


ふと、ソファーに目をやると、背もたれに毛布がかけられている。


(あ…)


大地のベッドを占領してしまったことに気づく。

少し申し訳ない気持ちになった。


何気なく、ソファーに座ってみる。

ちょうどいい感じの、深く沈み込む感覚。

とても心地が良かった。


暫くボーッと過ごしたあと。

ルーム見学をする。


間取りは3LDK。

全体が白とグレーで統一されていた。

咲が寝ていた部屋には、大きいデスクとPC。

あと、本棚がある。

家で仕事をすることがあるようだ。

窓際には、大きいエバーフレッシュが印象的だ。

整頓されたリビングはモデルルームのようだった。


「…御曹司?」


思わず独り言を話してしまう。

あれこれ考えながら、部屋の一通り見学を終えた頃。

時計は、11時を過ぎようとしていた。


(…お腹すいたな)


咲はメモに書かれていたことを思い出し、キッチンへ向かった。


冷蔵庫を開けると、何種類かの惣菜が保存容器に綺麗に並んでいる。

大地の手作りのようだ。

咲の目がキラキラと輝く。

(わぁ、美味しそう!)

その中から、うーんと悩んで2つ選んだ。

ツナと水菜を和えた惣菜とペンネアラビアータ。

それと、まるいパン。

コーヒーを淹れ、セッティングが終わった。


咲は食べることが大好きだ。。

ビュッフェ形式でテンションが上がる。

お皿に並べた料理はとても美味しそう。

“いただきます”と手を合わせ、さっそく一口。


(んん、美味しい!“大地さん“の手作りだろうか…?)


早々に惣菜を食べ終えてしまい。

冷蔵庫に自然と目が行く。


(ニンジンのも食べちゃおうかな…“どうぞ”って書いていたし)


鼻歌を歌いながら冷蔵庫へ。


(あ、こっちも美味しそう!)


と、ローストビーフの存在に気づき、手を伸ばす。

そんなことを繰り返し、気が付けば全種類制覇していた。


ふと、色んな事があった1か月を思い出す。

昨日の大地の横顔がよぎる。

素敵な人だなと思った。


「料理も上手なんて、ポイント高すぎ…」


咲は完全に胃袋をつかまれしまった。

突然現れた”御曹司”(仮)にときめく。


だけど。

渦中にいる自身に何の説明もないことに、もやもやする。

事前に言ってくれれば、大地に迷惑をかけることも無かった。

彼の人生を巻き込んでまで、することだったんだろうか。

咲は、巻き込んでしまったことに、申し訳なさを感じた。


『いつまで続くか分からないこの状況』

でも。

終わりは、すぐに来るだろう。

走り出しそうな気持と不安な気持ちが入り混じる。

今なら、まだ間に合いそうだ。

まだ…。


咲は複雑な思いとともに、最後のコーヒーを飲み干した。



食後。

自分の荷物があると言う、玄関右横の部屋へ。

部屋を開けると、段ボールが数個あり、家具は配置されていた。

種類ごとに名前が書かれてあり、一目瞭然だ。

そのおかげで、着替えや化粧品も、すぐに見つかった。


シャワーを借り、身支度を整える。


いくつか荷解きをし、置き場所を決めた。

今晩から自分のベッドで寝られるように、セッティングも。


時々。

太一との思い出の品も出てきた。


淡々と、ごみ袋に入れる。


あれから…

何度もメッセージや着信があった。

太一の母親からも。

酷い時には、マンションまで来ることもあったが、絶対に会わないようにした。

話すことはもうない。

太一は話がしたいようだけど…

あまりのしつこさに、咲は弁護士を立て、実家に避難した。


咲の決意が伝わったのか。

それから連絡がパタリとなくなった。

事が落ち着いたら、マンションに戻って片づけるつもりだったが…。


(往復する手間がはぶけたな)


そう思い、軽快に残りのモノも、ごみ袋に入れる。

ぎゅっと縛り、部屋の片隅に置く。

A4用紙に大きく

『ゴミ』

と書き、貼り付けておいた。


片付けが終わり、再びリビングへ。


出かける気にもなれず、ソファーに座る。

今度は、紅茶を淹れて。

一口飲んで、スマホを開く。

たくさんの通知。

届いているのは、

『おめでとう』

それと。

2人の共通の友人からの、

『大丈夫?』

のメッセージ。


(…説明、しなきゃ…だけど)


自分自身も何が起きているか把握できない状況。

ひとまず『大丈夫』だと、短く返信をした。


両親に連絡したが、

『結婚おめでとう!あとは大地君に聞きなさい』

と。

相変わらず、何も教えてはくれない。

”やれやれ”と呆れる。


仕方なく、大地の帰宅を待つことにした。


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